生き恥!!
諸君!大発見だ!
俺はかばんの中から、エロ本を発見したぞ!
ん?
なんで諸君はそんな沈んだ顔をしているんだ。
え、前の話がシリアス過ぎた?
そんな時こそエロ本だ。性欲はすべてを解決するぞ。
ほら、一冊好きなのを貸そう。
俺は手を伸ばし、ベッドの周りを囲むように設置されている
カーテンを引いた。
これで周りからは見えない。完全にプライベートな空間だ。
これは「妖怪の呪いでエッチになった妹に襲われる」話だぞ。
妖怪の呪いが原因だから、どっかの俺の妹と違って精神は健全だな。
特に見てほしいのがこれ。ヒロインが興奮して頬が赤くなって――
俺が話をし始めた瞬間、シャッとカーテンが開く音がする。
音の方を振り向くと――京香がいた。
「お兄ちゃん、ただいま。ってあれ、エロ本でお楽しみ中か~」
「あっ」
妹もののエロ本を持ったまま固まる俺と、
口元に薄く笑みを浮かべる京香の姿は対照的だった。
京香が、俺のベッドの周りを囲むように設置されている
カーテンを再び引く。
これで周りからは見えない。完全にプライベートな空間だ。
……非常にまずい事に。
「そうだよね。入院してたらなかなかそういう事する機会ないもんね」
「や、やめろ!俺のズボンを脱がそうとするな!」
「いいじゃん、今私すごいむしゃくしゃしてるから。
ちょっとくらいサービスしてよ~。周り空きベッドで人いないし。」
「嫌だよそんな危ないサービス!」
「え、だってお兄ちゃんの持ってる本、妹ものでしょ?
私をそういう目で見てくれてるんじゃないの?」
「現実と妄想の区別くらい付くわ!」
「いいじゃん、私と一緒にエッチな妄想を現実にしようよ」
「いーやーでーす!」
俺は男の誇りをかけて、ズボンを引っ張ってくる京香に立ち向かった。
何としても、このズボンだけは死守せねば!
というか、ここ病院で俺病人なんだけど!?ほんとどうなってんだ!?
しばらくそんな不毛な引っ張り合いが続いた後、
京香はやっと手を放した。
「やっと、諦めたか」
そんな期待をこめた俺の言葉に、京香は残酷に首を振った。
そして、ニタァと笑い、手をわきわきと空中で動かす。
「それならズボンの上からしてあげる!」
そういって、京香は無慈悲に俺の下半身に手を伸ばした。
「いやああああ!!おムコにいけなくなる!やめてええ!!」
俺は絶叫した。しかし、誰も来なかった。
……このまま俺の童貞は京香によって奪われるのだ。
俺は覚悟して目をつぶる。
その時だった。カーテンが開いたのは。
「あなたたち何してんのよ」
「れ、玲菜!」
これぞ神の助け。童貞神からの遣い。
感謝。圧倒的、感謝……ッ!
「だから何してんのって」
玲菜がこちらに何度もそう聞いてくる。
無理もない。
だって今の状況、ベッドにいる俺の上に京香が身を乗り出し、
這い寄ってる状況だからな。
「え、えっと、お兄ちゃん左足の具合が悪いって言ってたので
具合を見てあげようかと」
嘘だっ!断固として抗議する!
俺のその意思を顔から判断したのか、玲菜はいぶかしんだ。
「なんで具合を見るのにこんなに乗り出す必要があるの?」
「け、献身的総合サポートです!」
「具体的には?」
「え、えっと、その」
いいぞ、もっと言ってくれ。
俺の言葉じゃ何言っても「かわいいなあ~」で終わっちゃうんだ。
やっぱりここは玲菜じゃないと。
「まあ、いいわ。私は冬樹のお見舞いに来ただけだし、
あなたと冬樹の関係を詮索するのは野暮ね。
冬樹、無事で何よりよ」
「お、おう」
あれ。いきなり引き下がったぞ。らしくない。
俺が首をかしげていると、玲菜は俺に一瞬興味無さそうな視線を向けた後、
京香に向き直って「ところで」と切り出した。
「あなた」
「はいっ!」
「私、冬樹とは幼馴染で同じ大学なのだけれど。私とお茶する気はない?
あなたの知らないお茶目でかわいい冬樹の事、たくさん話せるわよ」
「え?そんなおに……兄が!?」
ん?
なんか雲行きが怪しいな?
まさか……俺をダシに、京香を釣ろうとしている?
「いきます!聞かせてください!」
「ふふ、女同士でしか話せないこともあるものね」
……俺は確信した。
こいつ、京香と親密になろうとしてんな!?
んで、きっとあわよくばお持ち帰りまで狙ってる!
ちくしょー、俺をダシに使いやがって!
きっと見舞いに来たのも、一度京香の顔を見て気に入ったからだろう。
くそ、女ならなんでもいいのか。ケモノめ。
「京香!騙されるな!」
「え?何で?」
「そいつはお前を食おうとしてるんだ!」
「食おうだなんて、物騒ね。
私はただ、親友の妹さんとも仲良くなりたいだけよ」
「詭弁だ!詭弁!」
「本当にそれだけなのに、悲しいわね」
しおらしい演技しやがって。
お前俺の前でそんな顔した事ないだろ。
俺がそう憤るのもよそに、京香は玲菜に話しかけてしまう。
「あの、お名前なんでしたっけ」
「植村玲菜よ。よろしくね」
玲菜のその時の微笑みは、俺には悪魔の笑いに見えた――
玲菜のおかげでコメディー回にはなったと思いたい作者です。
自信はありません。次回は梨奈との本格的な話ですのでお楽しみ下さい!
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