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天使と悪魔に花束を添えて  作者: v私立桜咲学園文芸部
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第十話 多大なる幸福

幸せ過ぎる状況で寝てしまうのは勿体ない。

 ご飯も食べ終わってお風呂も借りて色々と寝る用意もさせてもらった。あとは寝るだけなのに、布団が無いことに気付いた。もしかしてこれは、自分で用意しろ馬鹿野郎的なことなのかな? 先輩に限ってそんなことは絶対にない。じゃあどういうことだろう? 部屋にあるのは大きなダブルベッド一つだけ。別の部屋にあるのかな?


「何してるの?」


 色々と考えてるうちに後ろから声をかけてきた天使先輩。私のことを不思議そうに見つめている。


「私はどこで寝れば良いんですか?」


「そこ」


 大きなダブルベッドを指さす天使先輩。もしかしたら、これが来客用で天使先輩たちは他のベッドで寝るのかも知れない。それなら納得だ。


「先輩たちはどこで寝るんですか?」


「そこ」


「ん?????」


 同じくダブルベッドを指さす先輩。ちょっと何言ってるかよく分かんなかったけど、その結果どうなったかって言うと、


「………」


 天使先輩と芽亜先輩に挟まれる形で寝ることになりました。なんか抱きしめられてるし。それも二人に抱きしめられてるから圧が二倍だし。何より二人が近すぎて寝れないし。なんだこれ。ご褒美じゃん。

 うわ、天使先輩って真っ暗なところだと薄っすら光るんだ。電気を消してるのに豆電球くらい明るいのは天使先輩が薄っすら輝いてるからなんだ。この人本当に天使なんだ。

 仰向けに寝た状態だと首しか動かないから寝がえりが打てない。だって二人からホールドされてるんだもん。なんか、天使先輩は薄っすら輝いてるのに対して芽亜先輩の方は光をシャットアウトしてる。めっちゃ暗い。恐怖を感じるって言うかどこまでも飲み込まれそうというか。やっぱり悪魔なんだなぁ。こういう自然な状態で起こる現象は妙に信憑性が高い。

 ていうか本当に寝れない。誰だって好きな人とめちゃくちゃ顔の整った天使に挟まれると寝れない。それで寝れるのは鈍感な奴だけだ。私はそんなに鈍感じゃないし、むしろそういうのは人一倍気にするタイプなのに。この状況は私にとってご褒美でもあり、戒め的な物でもある。これじゃまるで私が煩悩だらけみたいじゃん。確かにそうだから否定はしないけど。


「んぅ……」


 寝言が可愛すぎる。本当に悪魔なのかな?


「えへへ………」


 何を見て笑ってるんだこの天使は。


「…………」


 これはどうしたものかな? 携帯も使えないから楓に連絡することも出来ないし、どうしようかな?


「いや、連絡出来るよ」


「っ!?」


 気のせいだ。きっと疲れ過ぎてるせいで幻聴が聞こえて来たんだ。


「出来るって。幻聴じゃないって」


 頭の中だけに響く声。なんか健康とかに影響を及ぼしそうな感じがする。


「分かんないけど多分大丈夫でしょ。多分」


 曖昧過ぎるよ。人の体を何だと思ってるんだ。


「抱き枕」


 見えてるの!? 今の状況見えてるの!? 凄いね超能力者って。


「私は何でも出来るからね」


 確かにね。だって超能力者だもんね。何でも出来ちゃうのも無理ないよね。ていうか私が連絡取りたいってよく分かったね。


「予知夢的なあれ」


 もう何でもありじゃん。ん? 予知夢ってことはわざわざ起きてくれたの?


「うん。春香が困ってたから」


 ありがと! 現在進行形で助かってるよ! 本当に頼りになるね!


「何でも言ってよ。性別を変えることもアイドルのプロデューサーをすることもタイムスリップも出来るから!」


 随分と具体的だね。それよりも、今の状況が幸せ過ぎて死にそうなんだけどどうしよう? これ今死んでも良いような気がする。


「本当に?」


 ねぇ、なんか光の玉が目の前に浮いてるんだけど。私死んでも良いとは言ったけど死にたいなんて一言も言ってないからね? なんかジワジワ近づいて来てるんだけど? この玉熱いんだけど?


「冗談だよ」


 冗談で済むレベルのやつじゃなかったよね? あれ当たってたらどうなってたの?


「イメージ送るから待って」


 頭の中に流れてきた映像があまりにもグロテスクで、もし何かのはずみでこの玉に触ったたらって思うと冷や汗が止まらなかった。どうなったとか詳しく説明すると年齢制限がかかりそうな勢いだ。


「なんか幸せそうだね」


 今めちゃくちゃ幸せだよ。言葉じゃ到底言い表せないほど幸せ。


「月奈……元気にしてるのかな?」


月奈ちゃんと知り合いだったの?


「中学の頃に仲良かったんだけど、色々あって。春香は月奈のこと知ってるの?」


 うん、何回か話したことあるよ。明日一緒に月奈ちゃんの所に行ってみる?


「なんか気まずいって言うか、会いにくいって言うか……」


 私が一緒に行ってあげるから大丈夫だよ! 約束ね、明日絶対一緒に行こうね! おやすみっ!


「強引だなぁ。まぁいいや」


 楓には色々助けられてるし、たまには私も何か恩返しがしたい。そうじゃなきゃ楓から貰ってばっかりになるから。中学の頃に楓と月奈ちゃんに何があったのかは分からないけど、それでも、私が何か役に立てるなら手伝うしかないよね。

 それはそれとして。今こんなに幸せな状況なのに寝てしまうのは勿体ない気がする。もう少しだけこの状況を堪能していたい。


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