表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

177/179

177話 ディックが培ってきた物

『絆だぁ? 雑魚が大勢揃ったところで、この俺に勝てるとでも思っているのか。忘れたわけじゃないだろう、この剣の能力を』

「ああ、不死の力だろう。そんなのは百も承知さ」


 覚醒してから、分かった事がある。ハヌマーンの持つ心を繋げる力が強化されているんだ。

 それは、お前に対し最も効果のある力だ。


「断言する、お前はもう僕達に手も足も出ない。たった一人だけの、空っぽなだけの力で僕達に勝つ事なんて、不可能だ!」

『ははははは! だったら見せてみろ、その絆の力とやらをな!』


 エンディミオンの姿が消えた。変身によって能力が急上昇し、途方もない速さになっている。


『忘れちゃいないかい? 今君の前に居るのは王将、魔王様だって事に』


 魔王がエンディミオンに結界術を使った。途端、エンディミオンが飴色の壁に封じられ、身動きが取れなくなる。


『魔王軍最大級の戦力を前に雑魚呼ばわりとは、よく言えたものだねぇ。しっかりとそのツケを払ってもらおうか』

『はっ! この程度の結界で俺を封じ込めると思うなよ? 俺にはコピー能力がある、すぐに耐性を身に着けて貴様を……貴様を……?』


 エンディミオンは結界から抜け出せない。目の前で魔王の能力を見たにも関わらずだ。

 当然だろう、今、お前のコピー能力は何の役にも立たない。この場に居る全員が、僕と繋がっているから。


「今が好機だ、畳みかけるぞ!」

「吠えろ、我が右腕!」


 ドレカーとソユーズが動いた。無数の魑魅魍魎が結界内に召喚され、エンディミオンの体を食い散らかす。同時にソユーズの強烈な光線が結界ごとエンディミオンを撃ち抜き、大爆発を起こした。


『がはっ! なんだと……俺の耐性を、貫通した!?』


 不死の力でどうにか抜け出したようだが、無駄だ。お前に逃げ道などない!


「私とリージョンが居るのよぉ? 時間と空間を操る二大巨頭に」

「回避など愚の骨頂だ!」


 メイライトの時止めで足を止め、リージョンがゲートで接近し、ボディブローを叩き込む。止めた時もろとも打ち砕き、エンディミオンの体が粉砕された。

 不死の力で再生しても、魔王軍の兵士達が一斉攻撃を仕掛ける。一つ一つの攻撃は弱くても、確実にエンディミオンを削っていた。


『なぜ、俺の耐性が意味をなさない!?』

『我が力を忘れたか、エンディミオンよ。我が力は、アンチ魔導具の力と心を繋げる力。それが覚醒によって強化された今、主と絆を結んだ者達に我が力を分け与える事が出来るのだ』


 シラヌイに分け与えている物よりは弱いけれども、お前の耐性を貫通できる程度の力が皆に宿っている。お前に攻撃を当てる事が出来るんだ。


『だが、俺の攻撃も通じる、まだ戦える! その程度でいきがるな!』

「そうだな、攻撃をする事が出来ればな!」

『ディック、行くよ!』


 母さんと一緒に、エンディミオンへ立ち向かった。

 母さんから教わった剣技で縦横無尽に切り刻み、反撃を許さない。僕達の剣は神速の刃だ、お前如きに見切れるはずがない。僕達二人が壁になって、攻撃の隙など与えるものか!


『成長したねディック、もうすっかり私を超えた剣士になったじゃないか』

「……ありがとう、今までで、一番嬉しい褒め言葉だよ」


 初めて母さんと一緒に戦えた。それが何よりも嬉しくて、こんな状況なのに笑ってしまう。

 それにお前も、同じ気持ちなんだろう。なぁ、フェイス!


「俺に続け、アプサラス!」

「うん!」


 フェイスがエンディミオンと鍔迫り合い、聖剣と龍王剣に灼光がともる。彼が盾になっている間に、アプサラスが背後に回って斬りつけた。

 エンディミオンが怯んだ隙にアプサラスを連れバックステップし、フェイスと僕は並んだ。


「……いいもんだな、横に愛する者が居る感覚は」

「だろう? それに今の君なら、僕も一緒に居て悪くないよ」

「そうか……もっと早く、気づきたかったぜ」

『何を、余裕かましてんだ貴様らぁ! この俺が、このエンディミオンが! この程度の雑魚の集まりにぃ!』

「その雑魚に押されているのは誰かしら、エンディミオン!」


 シラヌイが炎の渦にエンディミオンを閉じ込め、真上から特大の炎を叩き込む。息つく間もなく炎を浴びせ、トドメと言わんばかりに火炎魔人で殴り飛ばした。


「たった一人、虚無しか持たないあんたに、私達が負けるわけない! 徹底的に押され続けている、あんたの現状がその証拠よ!」

『ぐっ、サキュバス如きが何をぬかすか!』

「ただのサキュバスじゃない、私は……ディックの嫁よ!」


 シラヌイは堂々と胸を張り、エンディミオンへ火球をあびせ怯ませた。


『今だ、ウィンディア人突撃!』


 ケイを先頭にウィンディア人が集団で襲い掛かる。煌力モードで翻弄され、エンディミオンを押しまくった。


『俺達ウィンディア人が造った諸悪の根源、祖先が作った汚名をここで注がせてもらう!』

『勝手に俺を作っておいて、よくもまぁそんな事を言えるものだな!』

『ああ、だからこそ、その責任を取るんだ!』

「微力ながら私達も手を貸します!」

「ここまで長い付き合いになったんだ、その重荷、俺達も背負わせてもらうぞ!」


 ウィンディア人の隙間を抜けて、ワイルがエンディミオンの顔に布を叩きつけ、視界を奪う。布を取り払う一瞬の隙にラズリが拳を振り上げ、顔面を殴り飛ばした。


「逃がさない! 縛っちゃえ!」


 ラピスの魔法でエンディミオンが木の根に縛られ、身動きが取れなくなる。そこを、


『ばっはっは! 本来ならタイマンを張りたいところだが、今日の所は我慢してやろう!』

『トドメは任せたぞ、お前達!』


 ディアボロスが火球を放ち、奴の四肢を焼き払う。再生しようとするエンディミオンにシルフィが幻術を仕掛け、動きを止めた。


『主よ、決着の時だ!』

「了解! 母さん、フェイス……シラヌイ!」

『任せておいて!』

「ああ……終わらせるぞディック!」

「これが物語のピリオドよ!」


 僕らは走った。

 母さんがエンディミオンを切りさいた直後、シラヌイは魔力を凝縮させたファイアボールを撃ちこむ。そして……。

『おおおおおおおおおっ!』


 僕とフェイスの刃がエンディミオンを十字に断ち切り、虚無の聖剣に、終止符を打ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ