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174話 王都突入作戦

〈エンディミオン視点〉


 テラスで優雅に空を眺めていたら、景観を汚す異物が現れた。

 五隻の船だ。あれは海賊船ハバネロと、その兄弟船ジョロキアだな。

 思ったより行動が速いな、あの魔王、やはりやり手だ。この俺をどこまでも楽しませてくれる。


『しかしいいのか? そんな速くカードを切ったら、明日以降大変なことになるぞ?』


 すでに進撃準備は終わっている、明日より魔王領へ一斉攻撃を仕掛けるつもりだ。

 だと言うのに、魔王四天王は勿論、海賊のドレカーと世界樹の巫女姉妹、果ては英雄ディックまでつぎ込んでいる。魔王軍の持つ総力を挙げて、この王都へ攻め込んできたか。


『大駒が無くなれば、魔王領の戦力は魔王ただ一人になる。それを覚悟で、この俺に挑んできたか』


 その気概やよし、だが果たして通用するかな。

 お前達との暇つぶしを終わらせるのは少し早いが、ここでフィナーレを迎えてやろう。


『命を懸けてかかってこい、このエンディミオン、逃げも隠れもしないからな』


  ◇◇◇

〈ディック視点〉


「カタパルト確認! 同時に術士隊も見えてきたよキャプテン!」

「このまま突っ込めば狙い撃ちなんだな!」


 ガランとマサラが状況を伝えてくれる。艦橋から敵戦力を見ていた僕は、その規模に圧倒された。

 王都一面に投石機が配置され、さらには弩弓隊、術士隊と遠距離攻撃に特化した部隊まで都市全体に揃っている。武器を持つ人々の姿には、老人や子供まで含まれていた。

 エンディミオンの力で人間全員の潜在能力を、限界まで引き出されているんだろう。全人類をそのまま兵器化してしまうなんて、なんて思考をしているんだ。


「全船散開! 結界を前面に張り、弾幕に備えろ!」

『らーじゃ!』


 ドレカーの指揮で船が散っていく。間髪入れずに地上から濃密な弾幕が展開され、結界越しにも衝撃が伝わってきた。

 なんて無茶な攻撃だ、下手すれば自分達の居城まで壊しかねないぞ。


「よっぽど俺達に入られたくないようだな?」

『いや違う、エンディミオンにとってこれは、遊びだ。貴族がキツネ狩りをするのと同じ感覚で攻撃しているだけだ』

「これで遊びぃ? 冗談じゃないわよぉ!」


 メイライトが悲鳴を上げた。それだけ苛烈な攻撃で、ハバネロが全く近づけない。


「想定内だ、案ずる事はない。この宇宙一冊子のいい男、イン・ドレカーに隙はない!」

『ドレカー! ここからは手はず通り動くぞ!』


 通信機越しにケイの声が聞こえた。彼は二番艦で指揮を取っている。


「上空はケイ君と私が連携して陽動する、地上は任せたぞ、エルフの諸君!」

「任せてくれ! 魔王四天王、ディック、エンディミオンは頼む!」

「今回俺はわき役に回ってやるさ、精々派手に暴れてくれよ!」


 ラズリとワイルが転移で地上に移動した。エルフ軍も魔王軍共々、続々と降下していく。


「ラピス君、地上の兵達の状況を逐一伝えてくれたまえ」

「はーい私にお任せ! ラズリが居れば、王都で活動する人達の様子くらいは把握できるよ!」


 地上で轟音がして、ファランクスが次々に壊されていく。ラズリを筆頭に、兵達が王都で暴れまわっているんだ。

 ワイルもあちこちを飛び回って、兵糧を破壊し、内側から戦力を削いでいる。地上はあの二人に任せておけば大丈夫だ。


「今の所優勢だよ、そんなわけだから、ディックさん」

「突入するなら今だ。リージョンの力なら、王宮へ突入できるだろう?」

「無論です、全員覚悟はいいな」


 僕らは頷いた。

 外でドレカー達が陽動している間に、僕達が王宮へ突入し、エンディミオンを叩く。これが僕らの最後の作戦だ。

 相手の支度が整っていない今だからこそ、シンプルな作戦で行くのが効果的だ。


「全員、無事に戻ってこい。いいな?」

「勿論。じゃあ、行こう!」

『応!』


 リージョンの能力で王宮へのゲートが開く。テラスへ舞い降りた僕達に、人間軍の兵達が襲ってきた。

 ソユーズの能力で鉄の壁を作り、同時にメイライトが時を止めて進撃を防ぐ。リージョンに感情をいじられて同士討ちを始め、王宮内が混乱に満ち始めた。


「……この数は、手に余るな。我らが散って、内部を鎮圧すべきだろう」

「ああ、ディック! シラヌイ! 聞いていたな!」

「分かった、王宮内は任せた!」

「私達が先行して、エンディミオンを叩く! 死ぬんじゃないわよあんた達!」

「貴方達も、死んじゃ嫌よ。無事で戻ってきてね!」


 言われなくても、そのつもりだ。

 背後を四天王に任せ、僕とシラヌイは進んだ。エンディミオンはこの奥に、必ず居る。


『主よ、終焉が見えてきたな』

「ハヌマーン……ああ、来い」


 ハヌマーンが出てきて、手足に装備される。シルフィもシラヌイの肩に止まった。


『観測者として見届けさせてもらうぞ、我が主よ。貴様たちが如何なる結末を迎えるかをな』

「そんなの、決まってるじゃない。全部が丸く収まる、ハッピーエンド。それしかないわ」

「その通りだ。母さんと約束したんだものな、晴れ着姿を見せるって」

「ええ。エンディミオンなんかにその約束を壊されてなるもんですか。だから」

「ああ、この長く、空虚な暇つぶしを、僕達の手で終わらせるんだ!」


 それが、お前との約束だものな。フェイス!

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