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167話 もう一人の仲間

 刀とエンディミオンが火花を散らし、龍王の兄弟剣が重い轟音を立てた。

 一撃一撃を受ける度に腕が痺れる、フェイスの肉体を持ったコープは、その膂力までもコピーしている。いや、あいつより強いかもしれない。

 ただ体を複製しただけじゃない、全体的な能力を強化した上で体を作っているんだ。


『主よ、怯む必要はない。我らならば、エンディミオンを倒せる』

『分かっているよ、お前を疑った事なんて一度もない』


 ハヌマーンとも長い付き合いになっているんだ、僕だってお前を信じている。

 だから勝てる。いくら強くたって、所詮相手は偽物だ。

 本物のフェイスはもっと強かった、もっと怖かった。こんな、ただ狂っているだけの男なんかよりも、はるかに強い男だ!


『おおおおっ!』


 双剣の一撃でコープを弾き飛ばし、胸にオベリスクを突き立てる。コープは血を吐くも、苦しむどころかゲラゲラと笑い出した。


『あはははははは! 痛い、痛い……けどサイコーだあ! なんて、なんて気持ちいい痛みぃぃぃぃぃ! ディック、いいよ、いいよぉ! 君サイコーだよぉ! もっと、もっと僕を痛めつけて、苦しめてくれ! そうすればするほど、僕はもっともっと気持ちよくなりゅからぁぁぁぁぁっ!』


 くそ、本当になんなんだこいつは。傷つければ傷つけるほど、威圧感も、攻撃の激しさも増していく。恐ろしいほどの被虐趣味の持ち主だ、ある意味無敵じゃないか。


「いいなぁ、夫の僕。あんなに痛めつけてくれるなんてさぁ。僕もあんな風に斬られたいなぁ、絶対気持ちいいもんねぇ」

「よそ見している場合かしら?」


 シラヌイの炎魔法がコープに直撃、したかと思った。

 コープは水魔法で壁を張り、彼女の攻撃を相殺している。続けざま、メイライトのホムンクルスが周囲から剣と弓を持ってとびかかるも、今度は雷魔法で薙ぎ払われる。


「うーん、いいねぇイザヨイ! 君剣士だろぉ、なのにこんなに魔法の才能があるなんて思わなかったよぉ。凄まじい魔力量だ!」

「だから、私は義母さんじゃない! 魔王四天王、シラヌイよっ!」


 シラヌイは炎から幻術に切り替えた。コープの周囲に無数の彼女の分身が現れ、コープはワクワクした顔で幻を見渡した。


「唸れ、我が右腕よ!」


 シラヌイの壁に隠れながら、ソユーズがビームを放つ。コープは初撃を防ぐも、シラヌイの幻影に仕込んだ鉄板にビームを反射させ、全方位から攻撃を繰り出した。


「うわぁお! これじゃ動けないなぁ!」

「当たり前だ、俺がトドメを刺すためにな」


 ソユーズに翻弄されるコープに、リージョンが肉薄した。

 首に手を当てるなり、直にゲートを開いて首を引きちぎる。防御不能の攻撃だ、いくらシラヌイの体をコピーしても、首を取られればおしまいだ。

 ……見ていて気分のいい光景ではないけどね。


『あっははは! 妻の僕がやられちゃったなぁ、許さないぞーあはははっ!』

『随分軽いな、コープ。片割れが死んだのなら、もっと悲しめよ!』


 僕もとっととこいつを駆除する! メイライトの時止めでコープを止め、刀で両断し、イラつくにやけ面を粉砕した。

 覚醒した状態なら、エンディミオンの不死の力も貫通できる。フェイスのコピーをしたコープでも耐えきれず、絶命した。

 ……なんだろう、こんなにあっさりと倒してしまうなんて。なんだか、違和感がある。

 そして気づいた、いつの間にか、エンディミオンが消えている事に。


「ディック? どうして変身を解かないの?」

『いや……! シラヌイ!』


 咄嗟に彼女の前へ飛び、オベリスクを盾にする。直後、魔法陣からコープが覚醒した姿で飛び出してきた。


「あははは! こっちの僕も居るよぉ!」

「いやん!?」


 メイライトが咄嗟に時止めで、飛んできた火球を防いだ。

 シラヌイのコープもいつの間にか戻ってきている、元通りの陣形となり、僕は歯噛みした。


『クローンによる、疑似的な不死身か』

『その通りさ! 実は実験もしていてねぇ、体を着替えてから覚醒を使うと時間がリセットされるんだ。つまりぃ、自殺すれば無限にこの力を使い続ける事が出来るのさ!』


 それは、少し不味い事になったかもしれない……。

 リージョンの力を借りてコープに肉薄し、ラズリの剛腕を借りて、コープの上半身を吹き飛ばす。コピーシラヌイも、本物のシラヌイが炎魔法で吹き飛ばした。

 それでも、無限に蘇ってくる。倒しても倒しても、コープを倒しきれない。


『あはははは! 無駄だよ無駄無駄ぁ! 君達には勝ち目なんか、最初からないんだよぉ!』

『くっ……!』


 覚醒していられる時間が、刻一刻と削られていく。けど、今は耐えるしかない。

 大丈夫、必ず、耐えていれば必ず勝てる。ここには居ないけど、僕にはもう一人、仲間が居るから。


「もう一人の僕、あと少しで僕を広める雨を降らせることが出来るよ!」

『あっはははは! そうだね僕、それさえできれば、僕達の完全勝利だ!』


 コープが嬉々として声を上げる。無限に蘇るコープが壁になり、雨を降らせる術を止めようがない。


「さぁ、世界中を僕にして、真の世界平和を実現させよう!」

『そうだね僕! そしたら君達も僕になろうよ! そうしたら皆でハッピー! 最高の毎日を送れるよぉ! あはははは!』

『そんな幸せは、願い下げだな』


 僕は僕としてシラヌイと幸せになりたいんだ、そんな、自分勝手な幸せを押し付けられるなんて……まっぴらごめんだよ。

 ……そうだろう、フェイス。


『それに、やりたければやってみろ。もうお前の計画は、破綻している』

「ちょ、何言ってるのディック!?」


 シラヌイ達が慌てだす。それを見てコープはにやりとし、


「あら? そうなのぉ? じゃあ遠慮なくやっちゃおうか僕!」

『では、イッツショーターイム!』


 僕達を敗北させる雨を降らせた。

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