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162話 エンディングへの道筋。

「急がないと、急がないと! シラヌイ!」


 壁を切断し、シラヌイまでの最短距離を突っ走る。彼女と、フェイスの前に小柄な気配が現れた。間違いなく、奴がプロフェッサー・コープだ!

 くそ、シラヌイに指一本でも触れてみろ! お前を、どんな手を使ってでも殺してやる!


「というより、リージョンの能力で行けばいいじゃないのよぉ」

「いや、面目ないんだが……この空間内の移動が出来なくてな。やはり万全な対策を施しているようだ」

「……お前の能力は我らの中でも最も強力だからな。だが感情を操る力なら使えるだろう、それでディックを落ち着かせられないか?」

「そうねぇ、ちょっと頭に血が上りすぎてるから、クールダウンさせないとぉ」

「……何度もやってるけど無理なんだ……あいつ、俺の力跳ね除けちゃってる……」

『肝心なところで役に立たん青鬼だな』


 後ろでなんだかごちゃごちゃやってるけど、そんなの気にしていられない。

 もう僕の頭の中はシラヌイの無事しか考えられなくなっている、彼女の身に何かあったら、僕は……!

 ……僕が監獄に囚われている間、シラヌイも同じ気持ちだったんだろうな。こんな思いを彼女にまたさせるわけにはいかない!


『主よ、いいか?』

「ハヌマーン?」


 今まで黙っていたハヌマーンが急に話しかけてきた。

 ハヌマーンは基本無口だ。そんな相棒が急に話しかけてきたという事は、


「魔導具の気配を感じたのか?」

『うむ。しかし、ただの魔導具ではない。……なぜここにあるのか、理解に苦しむ魔導具だ』

「勿体ぶらないでくれ、なんだ?」

『……エンディミオンだ。エンディミオンが、この空間の中にいる』


 瞬間、僕の足は止まった。


「エンディミオン? なんで、なんでエンディミオンが!?」

「なんだ、どうしたんだ?」

「ハヌマーンが、エンディミオンの気配を感じ取ったんだ」


 四天王達に動揺が走った。エンディミオンはフェイスの手から離れ、今はもう彼を所有者とは見なしていない。

 なら、今エンディミオンは誰を所有者としているのか。答えはたった一人しかいない。プロフェッサー・コープだ!

 もしコープがエンディミオンに選ばれているなら、厄介だ……不死の力で力ずくでは対処できなくなっている。


『不安になる必要はない。我の力を用いれば戦える、特に覚醒の力を使えば、不死の力も貫けよう』

「そうか、確かに今の僕らなら、エンディミオンとは戦える、けど……」


 問題はコープが、どうやってエンディミオンを使うつもりでいるのかだ。

 エンディミオンの持つ力はすさまじい物だ、悪用しようと思えば、いくらでも使えてしまう。

 もし万が一、コープがフェイス以上にエンディミオンを悪用しようとしていたら、大変なことになる。


「ハヌマーン、出てきてくれ。到着したらすぐに戦う」

『承知』


 アンチ魔導具を装備し、僕は深呼吸した。


「……落ち着いたか?」

「少しだけ。相変わらず、シラヌイが危ない事に変わりはない」

「うむ……エンディミオンか、まさかかような場所で、再度まみえる事になるとはな」

「何が目的なのかしらぁ。ハヌマーンちゃんみたいに言葉を出すわけじゃないから、意図が全然つかめないのよねぇ」

「確かにな。だが僥倖だぞディック、ここでエンディミオンを破壊できれば、完全に人間との戦いを終わらせることができる」

「ああ、思わぬボーナスステージだ」


 ここでエンディミオンを倒し切れば、僕達は勿論、フェイスもエンディミオンの呪縛から救い出す事が出来る。

 プロフェッサー・コープ、お前が何をたくらんでいるのか分からない。でも、お前には何もさせない。何としてでも聖剣ごと倒し、全部の野望を終わらせてやる。


  ◇◇◇

〈アプサラス視点〉


 あたしはやっと、ディックに追いつこうとしていた。

 刀を一心不乱に振り回し、壁を切り開いて突き進んでいたディックだけど、急に足を止めた。それで、ハヌマーンと話している声が聞こえて、大変な事が起こってるって分かった。


「エンディミオンが、コープに……大変だ、大変だよワイル!」

「わ、わかったから落ち着いてくれ……揺らすな揺らすな!」


 動揺のあまり、ワイルを激しく揺さぶっちゃった。

 コープとエンディミオンが合わさるなんて、最悪だよ。コープがあんな危険な魔導具を持っていたら、絶対ろくな事が起こらない。

 コープの事は、あたしがよく分かってる……監獄で受けた地獄は、今でも忘れられない。

 それに、フェイスが……フェイスが危ない!


「コープは凄く酷い奴なの、フェイスが、フェイスが絶対危ないよ! 急いで助けに行かないと!」

「だから、落ち着けって。お前が飛び出していっても、足手まといになるだけだろ?」

「でも……でも……ワイルはどうするつもりなの?」

「……いったん、合流はなしにする。コープはあいつらに任せて、俺は別方面から行動しようと思う」


 ワイルは難しい顔でそう言った。多分、何か考えがあるんだと思う。

 でも、あたしは、ディック達について行きたい。

 だって、そしたらフェイスに会えるはずだから。あたしだって、剣を使えるようになったんだ。

 冒険者なら、戦わないと。コープに会うのは恐いけど、フェイスが居なくなる方が恐いもん。


「ワイル、ごめん。あたし……ディックの所に行く!」

「ちょ、待てってば! おい!」


 ワイルを振り切って、あたしはフェイスを迎えに行った。

 そしたら、前に男の人が出てくる。恐くて足が止まったけど、咄嗟に剣を抜いた。


「ええい!」


 フェイスが教えてくれた剣技で、足を傷つける。確か、足を狙えば、とりあえず動きを止められるんだよね。

 脛に切り傷が出来て、男の人が倒れた。あたしは剣を握って、走り出した。

 ショートソードを握っていると、フェイスが守ってくれているような気がする。フェイスが一生懸命、作ってくれた剣だもの。あたしをきっと、連れて行ってくれる。

 待っててね、フェイス! あたしが、絶対助けてあげるから!


「おいおい……どんだけあいつ、フェイスが好きなんだよ。……よほど変わったみたいだな、あいつ」

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