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138話 人形の魔女を倒せ!

 監獄を飲み込むほどに巨大化した魔女が、僕達を捉えた。

 咆哮を上げ、無数に増殖した腕を伸ばし、失った物を取り返そうとうごめいている。人形の牢獄に囚われた魂が、救いを求めて悲鳴を上げていた。

 アプサラスの複製された魂は、あの魔女の体に閉じ込められているんだ。彼女をあの中から解放しない限り、この脱獄は成功と言えない。


『主の体力からして、この形態は一分が限界だ。勝負を急ぐといい』

『分かった。フェイス!』

『煌力モードか、上等!』


 覚醒に加え、煌力を上乗せする。どうせ短時間しか持たないのなら、ここで全力を使い尽くしてやる。一撃に、僕達の全てを込めてやる!

 フェイスと共に、魔女へ突き進む。魔女は咆哮を上げ、僕達に迫ってきた。


『うっがぁぁぁあああああっ!』


 魔女から大量の監視人形が産み出され、壁となって押し寄せてくる。強欲の力を応用して生み出していたんだな。

 一体一体からビームが放たれ、僕らの行く手を阻む。くそ、邪魔だ!


『魔王軍兵士達よ、ディックをガードせよ!』

「足場はこの宇宙一の男、イン・ドレカーが作って差し上げよう!」


 魔王の号令と共にドレカーが魑魅魍魎を召喚し、兵達の足場を作り出す。兵士達が人形たちの相手をして、僕らのサポートをしてくれる。


「さぁ行け青年! 君達の道は私達が切り開こう!」


 ありがたい、これで消耗を限りなく抑えられる。


『邪魔だ 邪魔だ! 色欲の右足 『見惚れろ』!』


 魔女が足を振り上げる。あれを受けたら皆洗脳されてしまうぞ。


「安心しろディック! 魔王四天王が対処しよう!」


 リージョンが叫んだ。と同時にソユーズの光線が右足を撃ち抜き、バランスを崩したところで、リージョンのゲートが断ち切った。

 右足がなくなって、魔女が倒れた。メイライトが右足の時間を奪ったから、強欲の力で再生できなくなっている。


「我らが力をなめるなよ!」

「頑張ってディックちゃん!」

『おのれぇぇぇぇっ! 嫉妬の左手 『悶えろ』!』

『ざんねーん。その手は使わせないよぉ』


 魔女が嫉妬の力を使おうとしたら、魔王が印を結んだ。

 すると魔女の左手が灰色になり、だらりと垂れ下がる。神経を抜き取られたように動かなくなった。


『うふふ。ワシはね、封印術が得意なのさ。魔女の左手の力を封じさせてもらったよん』

『私が 私が 閉じ込められただと! 魔王ぉぉぉぉぉ!』

『恨み節で嘆かれても困るんだよね、何しろ君は大事な大事なディッ君を奪ったんだ』


 魔王は聞いた事が無いほど、怒気をはらんで呟いた。


『この魔王、容赦はしない。きついお仕置きを覚悟しろ』


 魔王が腕を突き出すなり、見えない力が発動して、魔女が弾き飛ばされた。

 凄い、魔女を軽々と蹂躙している。しかもあれで、まだまだ本気を出していないときた。

 心強いバックアップを止めようと、魔女が左足を上げる。怠惰の力か。


『怠惰の左足 『這いつくばれ』!』


 あれを受けたら全員動けなくなる! だけど、


「うおおおおおっ!」


 いつの間にかもぐりこんでいたラズリが、アッパーで左足を叩きあげた。

 そこへ樹木の根っこが生え、縛り上げる。ラピスとワードが同時に樹木を操る魔法を使い、左足を抑え込んでいた。


「同じ手を二度もくらうものか!」

「行ってディック! 魔女は私達が抑えるから!」

「まっすぐ前を進んでください!」

『ぐあああっ! 暴食の右手 『貪れ』!』


 魔女が右手を突き出す。黒い即死のオーラが飛び出して、行く手を阻んでくるけど、


『ウィンディア人達! 俺に続け!』


 ケイを筆頭に、ウィンディア人が煌力モードでオーラにぶつかり、次々に破壊していった。


『今度は俺達がお前を助ける番だ! 負けるんじゃないぞ! 勝って終わらせるんだ!』


 沢山の人達が、僕を助けてくれる。強大な魔女の力を、全員で抑え込んでいた。


『傲慢の眼 『ひれ伏せ』!』


 魔女の目が見開かれる。傲慢の力を使われるわけにはいかない!


『ばっはっは! 貴様のような弱き者が傲慢になるとは、笑止千万!』


 発動直前、ディアボロスの火球が顔面に突き刺さる。強引に目を壊して、傲慢を防いだんだ。

 けど不味いぞ、ダメージが蓄積している。このままじゃ憤怒の力で逆転される。


『憤怒の咆哮 『虫けらが』ぁっ!?』


 魔女が口を開いた刹那、顎が外れ、落ちていく。あれは、部品を外されたのか?


「ひゅう! 危機一髪とはこのことか?」


 いつのまにか、魔女の肩にワイルが乗っている。顎の部品を盗んで外したんだ。


「監獄に囚われてた他の奴らも、この怪盗が奪ってやったぜ!」

『これで貴様らの障害はなくなった! さぁ、終わらせてやるがいい!』


 最高のサポートだ、一撃を叩き込むのに、集中できる!


「ディック、私達の全力を叩き込むわよ!」

『ああ!』


 シラヌイが杖を突き出し、全力の炎を叩き込む。全身が燃え盛り、のけぞった魔女へ、僕とフェイスが剣を向けた。


『下らねぇ茶番は、ここまでだよアプサラス!』

『君をその人形の牢獄から、解放してやる!』


 僕の刀とフェイスの剣が、人形の魔女を真っ二つに切りさいた。

 同時に強欲の力が消えうせ、魔女の体が縮んでいく。僕らは急いで人形を回収し、同時に変身が解けてしまった。


『おっとぉ!』

「ディック、危ない!」


 ディアボロスがフェイスを、シラヌイが僕をそれぞれ回収してくれる。僕らの手には、残骸と化した人形の魔女が握られていた。


『たす けて だれ か あ たし た ち を       』

「ああ、今すぐ助けるよ、アプサラス」

「だがちょっとだけ、休ませろ。こっちはもう、くたくただ」


 あの一撃に全部の力を出したから、もう空っぽだ。

 僕とフェイスは小さく笑うと、仲良く意識を手放した。

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