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栄光へのパラダイムシフト  作者: tanazi1000
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始動への転換期 ACT.6

 ピョン、ピャン。という特徴的な銃声と共に、銃口から活性化したエーテルが炸裂したことによる緑色の発光炎(マズルフラッシュ)が上がる。

 |雷砲(ライホウ)での発砲システムは、旧来の無煙火薬を利用した銃火器と殆ど変わらず、[[rb:固形化したエーテル> 弾丸]]を斥力形質に性質変化したエーテルの力により撃ちだす。

 その為、射撃時に反動が少しながら発生し、ステラの肩に当てたストックからはその振動が伝わって体に響く。

 20発(ワンカートリッジ)撃ちつくすと、ステラは薬室(チャンバー)部位付近にあるカートリッジ収納室を露出させるため、雷砲(ライホウ)機関部(レシーバー)上部を開ける。

 開けた収納室からは活性化して青白い光を放つエーテルが漏れ出して来ていた。

(オゾンの臭い、何時嗅いでもなれないな・・・・・・)

エーテルの活性化によるエネルギー放出によって空気中の酸素が化学反応を起こし、オゾンが生成されるため、エーテルを利用した後は辺りにオゾンの臭いが漂う。

 ステラは、空になったカートリッジをつまみ出すとトランサーを作動させてエーテル化。

エーテルドラムに()()を収納すると同時に、新品のカートリッジを呼び出す。

 雷砲(ライホウ)を呼び出したときと同様に、腰に備え付けたエーテルドラムから光の帯がステラの腕を這い、手の中でカートリッジが形を成す。

 新品のカートリッジをステラは収納室へ押し込むと、すぐさま握りこぶしで上部を叩いて閉める。

 スマートリンクによってステラの視界に表示された火器内の残弾数が回復したをの確認後、彼女は再びストックを肩につけ、サイトを覗いて目標を照準する。

 アメンボの如く胴体から突き出た、先の尖った四本の脚部、逆三角形型の頭部に尖った口器が特徴的な昆虫のような姿をした生命体。

 脅威度D及びC(ザコ)ランクに分類される【インテグレート】、識別名はホッパー。

 名前の如く四本の脚を器用に使って、自身の体よりも高く飛び上がり、鋭く尖った足先で飛び掛ってくる攻撃を得意としている。

 【インテグレート】といえばまず誰しもがこいつを上げる程に、ありとあらゆる所で目撃されている。

 ステラはそのホッパーの頭部に照準を合わせ、引き金を引く。

 青緑色の発光炎(マズルフラッシュ)と共に甲高く、そして特徴的な発砲音が鳴り響き、それと同時に発射された弾丸がホッパーへと飛翔するが、本体ではなく背後の地面に当たり黄色い光を放つ。

 ステラは手を休めることなく引き金を引き続ける。

 発砲時の反動(リコイル)によって銃身がブレ、何発かの弾丸がホッパーの体を掠めるだけ掠め、地面へと当たり無残に砕け散る。

「チッ」

カサカサと虫の如く右へ左へと小刻みに体を移動させる【ホッパー】に弾が当たらない苛立ちが舌打ちという形で出てしまう。

「ソイヤッ!」

ステラが向いている方向とは別の所からカルの裂帛が聞こえる。

「ちょこまかちょこまかとッ!」

自身のエイミング力の無さと、ひょこひょこと此方を挑発している化のように動く敵の動きに中半怒り心頭状態となってしまったステラ。

ほぼ自棄になりながらトリガーを連続で引き続け、無駄弾を量産していく―――

「もらったぁ!」

そこへ敵しか見ていない猪武者が突撃してくればどうなるか―――答えは単純である。

「イデッ! イデッ! ちょ、ま!ステラ、当たってる!止めてくれ」

射線上へ躍り出たカルの胴体に2、3発かのライホウの弾が被弾してしまう。

視界左上に表示されたカルのシールドゲージが3分の1ほど削れる。

「射撃手の前に出たら、そりゃ後ろ弾喰らうわよ!」

射線上に割り込んできた闖入者へ怒鳴ると同時に、ステラは敵へと視線を投げ掛け状況を把握する事に勤める。

わざわざ味方の攻撃に被弾しながらも、カルは複数いたインテグレートの大半を蹴散らしていた。

1カートリッジ撃ちきって数匹片付けるのが精一杯のステラにしてみれば舌を巻かざるを得ない。

言動に難はあるがやはり腐っても近接構成、継戦能力の差と゛壁゛としての役割をステラは感じさせられた。

「そんなことより! まだ来るよ、3時の方向タイプ【フラッド】ッ!」

「分かってる!」

エーテルと振動を関知して敵の大きさや居場所を割り出してくれる高性能トラッカーレーダーに大量に表示された赤い斑点から判断してステラは警告を出す。

フラッド型インテグレート、全長約20cmの小さな虫型で主に体当たりと自爆による攻撃方法をとる事で有名な雑兵とも呼ぶべき形態。

「雑魚がわらわらと! 大量に居るの気持ち悪いんだよッ!」

悪態を付いてカルがフラッド郡を蹴散らそうと躍り出る。

「ちょ、ちょっと待って!」

所持品からプラズマクラスター爆弾を呼び出そうとしていたステラの静止を気にも止めず、カルは敵陣へと突っ込んでいく。

(まあ、こうなるだろうとは思ってたけどさ・・・・・・)

どちらにせよ元々カルを突っ込ませる戦法であったため特に問題はない、開幕クラスター爆弾で数を減らす予定が無くなっただけで―――

「カルッ! 出来るだけ私から離れない距離で戦って!」

即座に作戦を変更、戦場では思った通りにことが運ぶなど珍しいことをステラはVRの大規模対戦ゲームと実習でいやというほど学んでいた。

「了解!」

「あんまりがっついて突っ込まないでッ、援護が届かなくなる!」

「注文の多い司令だなぁ!―――ッ」

軽口を叩きながらもハルバードを振り回してフラッドを蹴散らしていくカル。

そんな彼に無数のフラッド達が特攻して行き、蹴散らされていく。

ステラはライホウを一度側にあった岩に立て掛けると、右手と左手に別々の得物を呼び出す。

右手に呼び出すはAMD(アマダ)社製 のプラズマフルオートライフル【Type:12】、左手には八甲(やこう)重工業製指向性エネルギー照射器【DEI-50】。

(おっもッ!)

横着して2本同時に呼び出したは良かったのだが、【DEI-50】の重量及び体積が非常に大きいということをステラは失念していた。

だが、流石に二丁ナガモノ持ってドンパチは出来ない(というかやるつもりは毛頭ない)ので左手の得物を地面へと転がす。

ゴドンと大きな音を立てながら【DEI-50】を足元に転がり落とし、ステラは片膝を地面について右手に持った【Type:12】を構える。

フラッドタイプは目前の敵を侵食出来るまで集団で突っ込む、という習性を利用して囮兼壁役として近接が前に出て蹴散らしその援護を射撃や法撃で賄うという戦略が往々にして取られる。

主にカルの背面から襲撃しようとするフラッドを分解性質の青いエーテルによって形成されたプラズマ弾でちびちびと潰していく。

中世時代に攻城武装として作られたランスにも似た円錐状の本体に内蔵された剥き出しのジェネレーターが高速回転しながら、セルに貯蓄してあるエーテルを高エネルギー状態であるプラズマへ変えチャンバーへと送り出し、銃口から次々とプラズマ弾が飛び出していく。

先程のライホウでの射撃と違い、面制圧なだけあって目標から外れる弾は少なく狙って射つと言う神経を使う行動をしないため気持ち楽だとステラは感じた。

しかしそれもつかの間、とある問題が発生する。

AMD(アマダ)社製の銃火器ほぼすべてに存在するある欠点、それが援護射撃を一時中断させたのだった。

「いっつっ!?」

急に感じた熱と痛みでステラは反射的に【Type:12】を握っていた左手を離してしまう。

縦に持った【Type:12】の機関部からは陽炎と煙、そして活性状態にあるエーテルが漏れ出していた。

オーバーヒート、それがAMD社製の射撃武器の欠点である。

元々の排熱速度は早く、熱量限界に注意を配っていればそこまで問題はないのだが何らかの原因で一線を越えてしまうと内部機構の保護と緊急排熱、この二つのシステムのお陰で完全に排熱出来るまで動作を受けつけなくなる。

その時間、1.5秒。

たった1.5秒、されど1.5秒。

コンマ数秒の判断や行動が生きるか死ぬかに影響する戦闘の世界では非常に痛い。

「チッ」

舌打ちと共に【Type:12】を地べたへと落とすと、【DEI-50】を拾い上げて肩に担ぐ。

筐体に付属してる小型ディスプレイが展開し、ステラ右目に情報を表示する。

チラッと視界左に表示されたカルのシールド及びヘルスゲージを確認後、フラッド郡のなかで奮闘を続ける彼を【DEI-50】のディスプレイで捕捉。

ロックオンカーソルが狭まり完全にカルをロックしたことを確認後、ステラは引き金を引いた。

正方形の出力端子から青白い活性化した[rb:だけ> ・・]]のエーテルを射出、尾を引きながら飛んでいく。

ほぼ直方体のこの機械は破壊や対象を損傷させる目的のものではない。

本来の対象は人ではなく、宙域戦闘機等のビークルが展開中のハザードシールドが破損しそうになった際に耐久値を回復させるためのエーテル照射装置であるが、ハザードシールドが展開されているならば動体物でない建物だろうが生物である人であろうが効果がある。

もっとも開発元の八甲重工業は人に対しての使用は推奨していないのだが―――

そんなことも気にせずにステラが発射したエーテル塊がカルに着弾し、彼のハザードシールドを回復させたことをスマートリンクで表示された情報で確認後、排熱が完了した【Type:12】を拾い上げると同時に【DEI-50】を地面へ落とすと再び援護射撃へと移る。

(今度はバーストしないよう注意しなきゃ・・・・・・)

熱量限界に注意しながら適度にトリガーから指を離しカルのシールドが危険域に入れば【DEI-50】で援護。

途中注意はしていたが何度かオーバーヒートしたものの、ライホウを使ったりして緊急排熱中の隙を埋め、なんとかフラッド郡を壊滅させることにステラとカルは完了した。

「あー、やったぞ!クソッタレ!」

肩で息を付きながらぐったりと樹にもたれ掛かったカルが悪態をつく。

「カル、お疲れ様~」

そんな彼に労いの声をかけながらステラは追加で呼び出した得物達をエーテルドライブへと片付けていく。

その労いの言葉に対してなのか、今からそっちにいくという意思表示なのかカルはステラへと手を振っていた。

距離が離れているためはっきりと表情は見てとれなかったが、ステラはカルのジェスチャーに対してサムズアップで返し、カルの元へと行こうとして眉をひそめた。

カルの正面付近に妙な揺らぎが見えた。

まるで蜃気楼のように揺らめくそれ、だが現在の気温は蜃気楼が発生するほど高いわけではない。

妙だ、ステラはそう思いその蜃気楼を注視する。

(何だろう? 何が―――)

疑問に思ったその直後、蜃気楼の中に見えた灰色のように見える影が見えステラの背筋に緊張が走った。

「カルッ! その場から離れてッ、ホッパーが―――」

ステラがカルに警告を発した直後、蜃気楼が揺るぎ中からホッパー型インテグレートが姿を現す。

「なッ!? クッ!」

急に何もないところから出てきたホッパーに一瞬驚くも、カルは飛びつかれるのをなんとか避ける。

ただ、咄嗟の事であったため主武器であるハルバードは樹に立て掛けたままだった。

(まずい!)

丸腰のカルを見てステラは焦りを覚える。

使っている武器が何かの影響で使えなくなった際のバックアップとして補助用の武装を傭兵達は基本所持しているが、体勢を崩したカルは恐らくバックアップを抜くことは難しい。

そして雑魚とは言えど機動力に優れたホッパー型が敵である、シールド全損ですめば幸いだが最悪の事態は―――

(考えるのは後回し、まずは)

ステラは頭のなかに浮かんだ最悪のシナリオを振り払うと、ライホウのストックを肩に当て今にもカルへ襲いかかろうとするホッパーへ照準を合わせる。

(カルを助けるッ!)

 複数の発光炎(マズルフラッシュ)の瞬きと共に発射された無数の弾丸がホッパーの頭部の一部を削り取って背後の地面に当たり、黄色い光を放つ。

そんな中狙い通り頭部や胴体下部にある赤いコアへと弾丸が数発、まぐれかはたまた実力か、確かに着弾したのをステラは見た。

 ギィッと急所を文字通り狙い撃ちされたホッパーは苦悶の声をあげ体勢を崩すと、そのまま地面に崩れ落ちる。

 やった、と心の中で歓声を上げ頬をゆるませながらも、ステラは崩れ落ちたホッパーをサイト越しに凝視する。

 崩れ落ちてから数秒後、黒い甲殻に覆われたその姿がまるで風に崩される砂山の如く、赤黒い細かな粒子となって虚空へ散っていった。

 完全にホッパーがその場から消滅するまでをステラは見届けた後、長銃を構えるのを止め大きく息を吐いた。

「はぁっ!はぁっ! ックソッ! ステラ、助かった・・・・・・」

 ステラは雷砲(ライホウ)> ライホウを右肩に担ぐと、胸を張る。

「感謝してよね」

「ハハハッ、今度飯でも奢るさ」

「ちょっと安いんじゃない?」

腰に左手を当てて頬を膨らますステラ。

だが直ぐに安堵からか笑いが込み上げて来た。

「―――なに笑ってんだよ」

「カルこそ・・・・・・鏡見てから言いなさい」

批難してくるカル、ただ表情は困惑といった負の感情ではなく安堵や達成感といった喜びに近い。

やがて根負けしたのかカルもつられて笑い出す。

若い男女の笑い声が森林に響き渡り、梢を揺らした。

気が済むまで両人共々笑い続け、一息ついているところでカルが口を開く。

「にしてもステラ、よく出てくるのが分かったな」

ビッと親指で背後、先程ホッパーが出てきた空間を指し示すカル。

「あー、なんというか見えたの」

「見えた? 俺には全く見えなかったぞ」

「大分前にも話したけど私、たまに人には見えないものが見えるの」

「聞いたよ、霊感みたいなものだろ」

よっと、という掛け声と共に勢いよくカルが立ち上がって木に立て掛けていたハルバードを背中へと納めた。

とその時ステラの耳にコール音が響く、別行動中のヌタルだ。

「もしもし、こちらステラ。ヌタル、こっちは終わった。そっちはどう?」

 ステラが話しかけて数秒後、ザザッという音と共に通信回線が開いたという情報がステラの視界に映る。

『こちらヌタル。そちらと同じく今終わったところだ』

「OK、ルナは? 」

『はいはーい、ステラ。大丈夫だよ』

 ステラの問いに対して何故か、ヌタルはいいごもり、少しの間沈黙が二人の間にわだかまる

『今から12――いや違う、あーと・・・・・・10か。大体10分前に一度二人に連絡したのだが・・・・・・』

「応答がなかった・・・・・・?」

『・・・・・・そうだ』

 うーんとステラは唸り声を上げる。

 スマートリンクシステムによる付近の仲間のバイタルメーター表示限界範囲は、およそ100mとされている。

 それ以上離れると、システムログに表示を消しましたと書き込まれメーターが消える。

 実際ステラの視界にはヌタルのメーターのみが表示されており、ルナとカルが自身から100m以上離れた時点で二人のメーターは消えてしまっていた。

 ただ、現在のバイタル状況が不明なだけであって、二人の現在座標についてはマーカーが表示しており、どこに居るのかは大体見当が付いていた。

「通信状況が悪いとか? さっきだってそっちに掛けようとしたけど、音声乱れてたし」

『――先刻の通信はお前だったのか・・・・・・』

 ステラは先程のインテグレート郡を殲滅する前に一度ヌタルに連絡を送っていた。

 内容はごくごく簡単なもので、反応はあるのに姿が見えないそして動体探知に引っかからないからそっちに居ないかと聞こうとしたのだが、インテグレートとの戦闘によって活性化した辺りを漂うチェレンコフ放射を放つエーテルが発する荷電粒子の影響か、通信が乱れていたのだった。

「そうだよ。内容は、もう終わったから話すほどの物でもないし。それより――」

 ステラは言葉を切ると、腰に備え付けたポーチから携帯端末を取り出し、空中にホログラムを投影、周囲の地図を呼び出す。

 地図上に光る3つの緑色のマーカーと多数の黄色のマーカー。

 緑色のマーカーはカル、ルナ、ヌタル、ステラのチームメイトだ。それ以外のありとあらゆるところに散らばっている黄色いマーカーは同じ船に乗ってきた別のチームを表している。

 ステラは端末を操作して、自身が居る現在地から最も離れた緑のマーカーへの道筋をナビゲートするよう設定をする。

「このルートで拠点へ帰還する、途中に設定したポイントで一旦合流で行くよ」

『了解した同胞(ガルム)よ』

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