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翌日、朝一で内線電話が掛かってきた。

秋山さんと同期だという、業務部門の天野奈穂子さんという人からだった。

秋山さんに内緒で話したいことがあるらしい。


面談室で初めて顔を会わせた彼女は、落ち着いている様子だけれど怒りに満ちているように見えて、俺はちょっと息を飲んだ。

はたして彼女の口から何が語られるのか。


秋山さんの退職願は受理しないでほしい。

彼女は、同期の彼氏に、あろうことか社内で浮気されてその現場を見たという。

やつらに制裁をしてくれ、という親友としてのお願いだった。


あー、それは辞めたくもなるよなぁというのが俺の率直な感想だ。

正直、恋愛のあれこれは苦手だ。

だけど俺も秋山さんのことは買っている。

こんなことで可愛い部下をみすみす辞めさせるものか。


俺は課長という立場を最大限に駆使して、天野さんの願い通り制裁を加えてやった。

と言っても、制裁を加えたのは相手側の課長だ。

妙に熱血漢のあるやつで、俺がいい感じに告げ口をすると怒り狂ってすぐに行動を起こした。

俺は起爆剤にすぎない。


天野さんにはものすごくお礼を言われた。

親友のために親友の上司である俺に相談しに来たことは、とても勇気がいることだと思う。

それほど、秋山さんは愛されているんだなと思った。

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