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私と坪内さんは電車通勤だ。

行きも帰りも結構な人で溢れている。

電車にぎゅうぎゅう押し込まれる中、背の高い坪内さんはさりげなく私を庇うように立ってくれる。

そんな優しさもちゃんと気付いていたよ。

電車が揺れるたび、坪内さんの胸元に顔がぶつかりそうになる。

このたくましい胸の中に素直に飛び込みたいなと、ぼんやりしながら思った。


近くにいる大学生の集団から、あの人かっこいいという声が聞こえてくる。

視線の先を辿ると、坪内さんだ。

坪内さんもう30歳だし、大学生からしたらおじさんの域なんだろうに、社内でも社外でもキャーキャー言われるんだなあ。

やっぱりイケメンなんだと実感してしまうよ。

そんな人の隣が私で大丈夫?

見劣りしちゃうよ。


電車に揺られながらぼんやり横顔を眺めていたら、その視線に気付いて坪内さんがこちらを向く。


「天野さんと仲いいんだな。」

「えっ、はい、同期で一番仲いいんです。」

「うん、秋山を知り尽くしてる感半端ない。」

「そうですね、そうかもしれないです。」


奈穂子は私より、私のことをわかってる気がする。

本当にもう、お世話になりっぱなしで頭が上がらない。


「ライバル決定だ。」

「へっ?何のライバル?」


意味がわからず首を傾げると、頭をぽんぽんと撫でられた。

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