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テーブルに並べられた料理を見て、坪内さんは言う。
「夕飯作ってくれたのか?」
「暇だったんですよ。坪内さん全然帰ってこないから。」
私はぶっきらぼうに言うと、お味噌汁を温め直すために鍋に火を点ける。
今日のメニューはブリの照焼にほうれん草のお浸し、それからわかめと豆腐のお味噌汁。
品数は少ないけれど、その分丁寧に作った。
お肉かお魚か迷ったけど、今日はスーパーでブリが特売で、1切100円だったんだ。
「秋山って料理上手だな。」
「そんなことないですよ、普通です。一宿一飯の恩義です。」
褒められたのに、意地っ張りな私は可愛げのない返事をする。
「なんだそれ。泊まった分だけ料理してくれるのか?」
「そりゃまあ、それくらいしか返せるものがないですからね。」
宿泊代は受け取ってもらえないんだから、私ができることと言ったらそれくらいだ。
あとは掃除とかかな?
「じゃあ毎日頼む。」
「はあ?ダメです。今日だって泊まる予定ではないんです。」
毎日とか何を言い出すんだ。
そんなことになったら、本当に一緒に住んでしまうじゃないか。
「いいじゃん。」
「よくないですよ。今日は坪内さんが無理やり鍵渡すから来ただけです。」
そう言って、私は頬を膨らませた。




