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第15話「解放進化」

第15話目になりますね。この回も楽しんで頂ければと思っております。

     第15話「解放進化」


 ゴーレムから放たれた数百に迫るレーザービームが、容赦なく俺に迫って来る。そんな中で、俺は力ある言葉を紡ぐ。この状況を打破し、アリスを護れる言葉を。


解放(リベラシオン・)進化!」(エヴォリュシオン)


 俺の言葉に力は応え、俺の周りを青白い光包み込んだ。そして、それと同時にレーザービームは、俺を焼き殺そうと殺到し、ものすごい爆発が起きるが次の瞬間、驚くべきが起こる。


 今まさに俺を殺そうとした死の光線が、全て明後日の方向に弾き飛ばされたのだ。しかもそれだけでは終わらず、弾き飛ばしたレーザーの何十本かはそのままゴーレムに当たり土くれに戻している。


「なっ!」


 土煙が止んだ頃、無傷で立っている俺の姿を見てナルザ・バライズは驚きの声を上げた。


 そう俺は無傷だった。あの数百に及ぶレーザービームを受けてなお無傷だったのだ。その理由は、俺のことを盾が覆い防いだのだ。


 複数の盾の同時展開。俺は今まで一つの盾しか具現化することは出来なかった。しかし、リミッターが外れたことにより複数の同時展開が可能となったのだ。


「くそが! とっととくたばりやがれ!」


 ナルザはもう一度、ゴーレムにレーザービームを放たさせるが、結果はさっきと同じだった。俺が盾で弾き返して、また数十体のゴーレムが土に帰っただけだった。


「何度やっても無駄だ」


「黙れ! 死にぞこないが! 今度こそお前は何も出来ずに死ぬんだよ!」


 ナルザはそう捲し立てると、ゴーレムに指示を飛ばした。そうすると、ゴーレムはまるで集団行動よろしく前進してくる。それはまるで近づいて来た者を容赦なく踏み殺すと言っているように。


「マーナガルム!」


 俺の言葉に応え、氷の狼は具現化する。しかし、その大きさは先ほどの比ではなかった。先ほどの大きさを例えるなら柴犬ぐらいの大きさだったのに対して、今具現化させた大きさは、俺がマーナガルム本体と会った時の大きさと同等ぐらいの大きさだった。


「凍り付くせ! マーナガルム!」


 マーナガルムは咆哮を上げると、ゴーレムに向かい駆けて行く。マーナガルムが触れたところは、問答無用に凍り付きアイスリングを作ってるかのように、地面が氷で覆われていく。


 俺もそんなマーナガルムを追って駆け出す。マーナガルムは近いゴーレムから次から次へと、凍り付かせ氷塊へとゴーレムを変えていく。


 俺も地面に剣を突きたてると、力を解放する。


解放!」(リベラシオン)


 以前と比べものにならないぐらいの莫大な冷気が剣から溢れ、俺を踏み殺そうとしているゴーレムを氷塊に変えてしまう。さらには、その場の近くにいた数十体のゴーレムまでもを巻き込んでいる。


 これならいける!


 俺はそう確信した。あの時、女神が写した映像を見た時はこの数をどうやって相手すれば良いのかって思っていたが、案外何とかなるもんだ。


 マーナガルムも次から次へと、ゴーレムを駆逐していっている。ゴーレムの数が半数まで一気に減った。


「ふざけるな! スネーク・バインド!」


 蛇腹剣を振り回し、その蛇腹剣が俺を拘束しようと襲ってくる。


守護者!」(ガルディアン)


 複数の盾が俺を包み込み、襲い来る蛇腹剣を防いでいく。

 俺は盾を解除すると、地面を蹴って一気にナルザとの間合いを詰めて、全力の上段から剣を斬り下ろした。


 ナルザは素早く蛇腹剣を元の形態に戻すと、俺の攻撃をガードするが勢いまでは殺せなかったようで、二本のラインを引きながら後ろに後退した。


 俺は隙を与えないように連撃をかけるが、ナルザも俺の攻撃についてくる。しばらくの間、お互いの剣がぶつかり合う剣戟音が響いていた。


 埒が明かないと思った俺は、攻撃パターンを変えるために回し蹴りを放つが、ナルザはそれを大きく後ろに飛んで躱すと、蛇腹剣を振って来る。


 蛇腹剣の剣先が蛇に変わり、俺を喰い殺そうと大口を開けて迫って来る。


 俺はそれを剣で受け流すと、距離を詰めるために地を蹴った。


「だから、そんなんじゃ防げねぇぞ!」


 ナルザは剣を巧みに操ると、蛇腹剣は宙で折り返し背中の方から喰い殺さんと飛んでくる。

 俺は盾を具現化させそれを防いでみせる。


「これでどうだ!」


 俺は剣を横薙ぎに払うが、再び元に戻した蛇腹剣で防がれてしまう。


 金属同士がぶつかる音が響き渡る。


 そこからまた剣戟が始まっていく。上下左右から連続して剣を打ち込んでいくが、全て器用に防がれてしまう。


「スネーク・ポイズン!」


 至近距離で蛇腹剣が蛇に変わり、その牙には紫色の粘液が付着していた。すぐさまそれが毒だと気が付いた俺は、距離を取ろうと大きく後ろに飛ぶが、俺を殺そうと毒の牙が迫って来る。


「解放!」


 力を解き放ち、迫り来た剣を凍らせた。周囲に気を回すと、ゴーレムの数がどんどん減って行っている。

 マーナガルムが次から次へと駆逐していってくれているおかげか。だからこそ、俺はこいつと一騎打ち出来てるわけで。


「ふざけんな!」


 ナルザは剣を投げ捨てると、殴りかかろうと駆けてくる。


 ナルザの右ストレートが俺に向かって放たれるが、俺はそれを防ぐとカウンター気味に腹にパンチを決め込んだ。


「ぐっ……」


「お前はアリスのことを死の淵に追いやった。だから、俺はお前を許すわけにはいなかい」


 そうだ。こいつはアリスを殺そうとした。そして、さらにはアリスに自分の欲望をぶつけようとした。決して許されることではない。俺はこいつを許すことは出来ない。


「暗黒騎士だか何だが知らないが、俺はお前を殺して、次の世界に行く」


 俺は冷ややかにナルザを見下ろすと、剣を逆手に持って力を解放する。冷気が溢れだし、その冷気はナルザを凍り付くさんとナルザのことを包んでいく。


 牙を折られた者は立ち上がるのには時間がかかる。まさに、ナルザはそう言った状態だった。


 後はゴーレムだけか。


 俺はそう思ってナルザの前から立ち去ろうとした。が、その次の瞬間、凍り付いたナルザの足元に魔法陣が展開される。そして、凍り付いたナルザの心臓に蛇腹剣が突き立てられた。


「っ⁉」


 何が起こってるんだ?


 俺は驚きで言葉を失ってしまう。しかし、その驚きを簡単に超えることが俺の目の前では起こり始めていた。


 ナルザの中に蛇腹剣が入って行き、さらにはナルザの体が膨張して膨れ上がったと思っていたら、その皮膚の下からは爬虫類特有の鱗が露わになってくる。


 そして、一瞬のうちにナルザは一匹の大蛇に変わっていた。


「大蛇……だと……?」


 本当に何がどうなってんだ?


 俺が驚きで固まっていると、大蛇は長い舌をシュルシュルとすると、いきなり長い尻尾で薙ぎ殺そうとしてくる。


 俺は咄嗟に上に飛んでそれを避けるが、それは罠で宙にいた俺を大蛇の頭突きが襲う。


 ガードは間に合わずそのまま地面に叩きつけられてしまう。肺から空気が抜け気が一瞬遠くなるが、何とか意識を繋ぎ留め頭が退いた瞬間、今度こそ後ろに大きく飛んで距離を取った。


 が、それでも大蛇には攻撃方法があったらしく、今度は毒の塊をこちらに飛ばしてくる。


「くそっ!」


 何とかそれを避けるが、毒の塊が落ちた地面はその毒によって溶け始めていた。自分が当たったと考えるだけで背筋が凍ってくる。


 遠近でどちらにも攻撃の手段がある大蛇。厄介なことこの上ないと思ってしまうが、倒すしかないことは変えようのない事実である。


 こうなったら速攻をかけるしなないか。


 俺はそう決めると、大蛇の死角になる部分までかけその太い胴体を斬りつけるが、ご立派な鱗のおかげで弾かれてしまう。


 だよな! だったら、


「解放!」


 凍り付かせたらどうなるんだろうな!


 大蛇を凍り付かせるために、俺は最大限の力を解放する。ぴきぴきと大蛇の胴体に氷が走っていく。しかし、それは大蛇を凍り付かすには至らなかった。何故なら、大蛇は異変に気が付いた瞬間、地面に潜り込んでしまったのだ。


 俺は大蛇が穿った穴に凍らすために、冷気を流し込むが大蛇の方が動きは速かった。


 瞬く間に俺の下まで移動していた大蛇は、俺を飲み込まんとして大口を開けながら、地面から飛び出てきたのだ。


 俺は咄嗟に盾を具現化させてそれを防いだ。間一髪とはこのことだろう。


 それからも大蛇はその巨大な体から考えられないぐらいの俊敏な動きで、俺を攻め立ててくる。俺は完全に大蛇のペースに持ってかれて反撃できないでいた。


 そして、さらには今まで攻撃をしてこなかったゴーレムまでもが、隙を伺いながら大蛇と連携を取って攻撃をしてくる始末である。


 まずい! まずい! まずい!


 マーナガルムの様子を見てみると、完全にゴーレムに取り囲まれてレーザービームの総攻撃をもらっていた。


 マーナガルムの方も限界に近付いていた。このままじゃまずい!


 その瞬間に隙が生まれた。この状況を覆してしまうほどの決定的な隙が。


 大蛇は俺の動きが鈍くなったのを見逃さず、頭突きを入れてくる。俺はいきなりの攻撃に耐えられず、後方にぶっ飛ばされて壁に激突して止まった。

 意識が朦朧とするが、そんなこと言っている場合ではなかった。今度はゴーレムのレーザービームが俺を焼き殺そうとしていた。飛んで逃げようとするが、膝が折れて地面に倒れてしまう。

 今までの戦いでの疲労やダメージがここで出たのだ。動かなきゃいけないと思うものの、体が言うことを聞いてくれそうにはなかった。


 そんな俺に容赦なくレーザービームが迫っていた。


「守護者!」


 盾を展開させてそのレーザービームを防ごうとしたが、盾とレーザービームが当たった瞬間、盾が砕け散ってしまう。力が弱まっていたため、レーザービームの衝撃に盾が耐えられなかったのだ。


 レーザービームが俺に迫っていた。避けなきゃいけないって言うのは頭の中では分かっていた。分かっていたが、体は動こうとはしなかった。


 俺は死ぬのか? アリスを残して? そんなこと絶対にしてはならない! 


 しかし、体は動かない。レーザービームは既に目前まで迫っていた。


 アリスごめん。君だけは生きて。


 俺はそう願いながら目を閉じた。アリスには幸せになってほしい。


 俺は最後にアリスの笑顔を思い浮かべながら、来る瞬間を待った。そして、来るだろうと思った時、この戦場には似合わない声が俺の名を呼んだ。


「ユート!」


「アリス……?」


 俺が呟いた瞬間、俺の体は温かく柔らかいものに包まれた。


「ユート、まだ動けますよね」


 アリスの問いかけに俺は頷くしかなかった。だって、このままではアリスまで、レーザービームに巻き込まれることになる。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」


 俺は雄たけびを上げると、立ち上がり再び盾を出現させた。今度は撃ち破られずにはじき返した。


「アリス! どうして来たんだ!」


 俺はついアリスに怒鳴ってしまう。だって、彼女を危険な目に合わせたくなくてヴァルに言ってアリスを見てもらっていたのに。


「それはこっちのセリフです! ユートだって黙って出て行ってしまったくせに!」


 それを言われるとぐうの音も出ないが、今はそんなことを言っている場合ではなかった。


「とにかく、ユートへのお説教は後です。あれを倒さなければ」


 アリスはそう言いながら腰のポーチを探ると青色の液体が入ったモノを俺の口元に持ってくる。


「ユートはこれを飲んでください」


 アリスに言われるまま、俺はそれを一息で飲み干した。


「これでもう少しは動けるはずです。さっさとあんな奴らを片付けしまい、私たちの家に帰りましょう」


 アリスの笑顔に俺は力強く頷くのだった。



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