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第13話「新たな力の目覚め」

お待たせしました。第13話目になります。中々更新できず申し訳ありません。

第13話「新たな力の目覚め」


『貴様は誰だ?』


 俺が目を開けると、目の前には巨大な白銀の姿があった。しかし、ただの白銀じゃなかった。体の全体から冷気があふれ出して、一瞬でも触れれば凍ってしまいそうなほどだった。

 それに俺が立っている場所も、それなりに広い空間ではあったが全面が氷に覆われていた。


「狼!」


 俺は咄嗟に構えてしまう。


 いつも通り呪いとも思える言葉を呟いたつもりだと思っていた。そして、いつも通り女神が出てくると思っていたのだ。なのに俺の目の前には狼がいた。しかも巨大な。人なんて簡単に飲み込んでしまうであろうぐらいに巨大な狼が。


『もう一度聞く。貴様は誰だ?』


「俺は桐川優人」


『キリガワユウト。そうか、貴様が女神――ウルズに選ばれた人間か。そして、我が力を授かった人間。にも関わらず、その力の1パーセントも引き出せていない』


 狼は前腕を振り上げると、そのまま振り下ろしてくる。俺はそれを後ろに大きく飛んで避けると、剣を狼に向けた。


「いきなり何しやがる!」


『おおっと手が滑ってな。そう言えばまだ名乗っていなかったな。我が名はマーナガルム。貴様のパートナーだ』


「俺のパートナー? どういうことだ?」


『頭の回転がちと鈍いようだな。先ほど貴様は蛇に変わった剣を見なかったのか?』 


「っ⁉ それって今戦ってるあいつの剣のことだよな?」


『あれは、その剣本来の力を解放しただけに過ぎない。つまり、その剣を作る上で特別なモンスターの素材を使って作れば、その力を引き出せるということ。それは貴様も然り。にも、関わらずあの情けない戦いは何だ?』


「何だと言われても、そんな話初めて知ったぞ」


『戦っている時にそれが通用すると思うな。それに、貴様がノコノコとやっていたせいで、また一人奴のモンスターにやられたな。確か銀髪の少女だったか』

 

 マーナガルムの言葉に、俺は一瞬言葉を失ってしまう。


「おい狼! 速く俺をここから出してくれ! アリスの所に行かないと!」


 俺の言葉に、マーナガルムが薄く笑った。


『今のままであいつらに勝てると思っているのか? 今のまま戻ったとしてもそのまま喰われるのがオチだな』


「じゃあ、どうしろって言うんだ! アリスをこのまま見殺しにするぐらいなら、少しでも抵抗できるなら、抵抗するしかないだろうが!」


 俺の叫びにマーナガルムはグルルルと呻ると、前足を上げるとそのまま俺に向かって振り下ろしてくる。


 俺は手に持っていた剣で、そのいきなりの攻撃を防いでみせるが、重すぎたため片膝を着いてしまう。


 いきなり何なんだ! この狼は⁉


『弱い、弱い、弱すぎる! 脆弱な人間だ。この力で誰かを護ろうなど、実に片腹痛いと言わずにはいれないな。キリガワユウト。選べ。我と契約して真の力を得るか、このまま戻って犬死にするかを。しかし、我と契約することはすなわち、人間であることを半分捨てるということ。それでも良ければ我と契約せよ』


 半分人間であることを捨てる? それがどういう意味なのかは俺には分からなかった。


 俺は目の前にいる狼のことをまじまじと見つめてしまう。この狼は何を言っているのだろうと。しかし、俺には力が必要だった。アリスを護れる力が。


「ああ、その契約乗ってやる! アリスを護れるのなら、俺は何だってやってやる!」


 俺の言葉にマーナガルムは、歯を剥き出してぎしぎしとやっていた。その行動を見ていて、俺にはマーナガルムが笑っているように思えた。


『契約はなされた。我はキリガワユウトと契約を成立する』


 我と貴様は二つで一つ。


***********************


「喰らい尽くせ! 蛇腹剣(スネーク・ソード)!」


 俺が元の場所に戻ると、目の前にはすでに俺を喰い殺そうとする蛇が目前まで迫っていた。


「お前に用はねぇ!」

 

 俺はそれを受け、後ろに流しながら避けるとそのままそれを無視して、リザードロードキングに向かって全力で駆け出した。


「だから、こいつの能力を忘れたのかよ!」

 

 ナルザは怒りをぶつけるかのように、その剣の軌道を変えて俺を喰い殺そうと迫ってくる。


「我、女神の加護の元において汝の力を解き放つ! 凍り付かせろ! マーナガルム!」


 剣から漏れだした冷気で一匹の狼が出来上がり、周りを凍り付かせながら迫りくる蛇腹剣に向かって駆けて行く。


「ハッ! 噛み砕け!」


 ナルザは余裕と言った表情で、正面からその氷の狼と衝突していくがその表情はすぐに曇ることになった。なぜなら、その剣は噛み砕くどころか一瞬で凍り付いてしまったのだから。


「なっ⁉」


「マーナガルム!」


 その氷の狼は俺の声に応えるかのように、そこから跳躍するとそのままリザードロードキングに襲いかかった。


 マーナガルムが噛みつくと、リザードロードキングたちまち凍って行ってしまう。俺は凍り付いたリザードロードキングを砕くと、ナルザの方に向き直った。


「さてと、後はあんたたぜ! 暗黒騎士!」


 俺と氷の狼は同時に駈け出す。身体能力もさらに強化されたようで、マーナガルムのスピードにも難なく着いていけるようになっていた。


「舐めんじゃねぇよ! 終わらせる者(ターミネート)!」


 俺とナルザは正面からぶつかり合うが、まともに剣を振えないナルザは一気に押し込まれた。


「これで終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 俺が剣を押し込み、マーナガルムが横から飛びつき勝負は決するかと思われたが、それは叶わなかった。


 いきなりマーナガルムが砕かれ、俺は何者かに蹴り飛ばされた。咄嗟のことに困惑したが、何とか受け身を取って着地すると、俺がいた場所にはガータル隊長が立っていた。


「ガータル隊長⁉」


 ガータル隊長が何故?


 俺の頭には疑問しか浮かばないが、そんな俺の疑問に答えずにナルザの方に向き直っていた。


「無様な姿だな、ナルザ。そんな奴はオレの団にはいらねぇ」


 ガータルは目の前に手を出すと、そこから炎が爆ぜ炎剣が創り出された。


「焼き斬れ、レ―ヴァテイン」


 ガータルはその剣で抵抗するナルザを容赦なく斬り殺した。


「なっ!」


 俺は驚きで声を上げてしまう。奴が殺されたことにではなく、ガータルの姿を見て俺はその声を上げていた。


 なぜなら、ガータルのその姿はあまりにも変わっていたのだから。いつものあの歴戦の戦士と言った面影は一切なく、筋骨隆々だった体も痩せすぎなんじゃないかと思えるぐらいには細身の人物に変わっていたからだ。


「ガータル隊長?」


 俺が呆然とその名を呟くと、その男はゆっくりと振り返った。そして、俺を見て刺青の入った顔で嗤う。


「さすがに、あのバカ女神が選んだだけはあるか。一筋縄じゃいかねぇよな」


 男はレ―ヴァテインと呼ばれる大剣を構え直すと、一気に距離を詰めて俺に向かってその大剣を振り下ろしてくる。


 俺は咄嗟に後ろに飛んでそれを避け、そのガータルだった男と対峙する。


「お前は誰なんだ?」


 男は俺の質問には答えず、不敵に嗤うとレ―ヴァテインを振り上げて呟く。


「焼き尽くせ、レ―ヴァテイン!」


 呟きと同時に振り下ろされたレ―ヴァテインから、灼熱の炎が俺に向かって放たれてくる。


「凍り付かせろよ! マーナガルム!」


 再び出現した氷の狼は雄たけびを上げると、その炎に突っ込んでいく。真っ正面から炎と氷が激突する。二つの間で急激な温度の変化があったために、ものすごい量の蒸気が発生し辺りは霧に包まれてしまう。


「くっ……」


 霧の色は濃く、数メートル先も見渡せそうになかった。だからこそ、俺は感覚を研ぎ澄ませた。必ずあの男はこの中を突っ切って来るそんな気がしたからだ。そして、現にあの男は俺の様子と違わず堂々と正面から現れ、俺に向けて刃を振り下ろしてくる。

 俺はそれを盾を出現させて防いでみせる。

 金属同士がぶつかる音が辺り一帯に響いた。


「お前は一体誰なんだ?」


 俺は同じ質問を繰り返した。目の前にいる男がガータルではないことは確信的ではあるのだが、そう考えると本当のガータルは一体どこに?


「そういや、お前はオレが創り上げた部隊の一人を殺しかけてたっけ? くくく、あはははは! おもしれぇ! おもしれぇよ! お前! こんなに神のオレが気持ちを高ぶらせたのはお前が初めてだったよ!」


 男はそう言うと、心底おかしそうに笑っている。


「良いね、良いね。最高に面白くなってきた! グングニル!」


 男はそう叫ぶと、左手に金色の槍を出現させていた。


「神――ロキの名においてお前はこの世界で屠ってやるよ!」


 男――ロキは有言実行するかのように、左手に現れた槍を俺に向けて全力投球してきた。


 俺はそれを出現させていた盾で防いでみせた……はずだった。しかし、その槍は盾を通り抜けたかのように、盾を無視して俺の体を貫いていた。


「えっ?」


 そして、その槍は何にもなかったかのようにロキの手の中に戻って行った。


「ぷはははは! この槍は俺が特注で創り上げた代物だぜ。そんなもんで防げるほどのものじゃないぜ!」


 急激に意識が遠のく中、俺は必死に奴に向けて手を伸ばした。あいつが纏っているオーラは何かがやばく、ここで倒しておかないと後悔すると全細胞が告げていた。しかし、それと同時に全細胞がヤバイとも告げていた。あいつには関わってはいけないと。だけど、だけど、俺は必死に手を伸ばした。あいつを止めるために。だけど、俺の意識はそこで途切れてしまったのだ。


***********************


 ロキはそんな優人の姿を冷めた瞳で見ていた。


 この人間が何故、己が作り上げた最強騎士の一人をここまで圧倒したかのかが分からなかったのだ。

 実際、今戦って見て分かったことは、この少年は未熟で弱者だ。それなのにも拘わらず、ナルザを圧倒するだけの力を見せた。それは何故か? 考えても分かりそうにはなかった。しかし、一つ言えることと言えば、目の前に意識を失い倒れている少年が無性に腹が立つということだった。こうして、視界に入っていることですら不愉快で仕方がなかった。


「ナルザ」


 ロキは部下の名を呼んだ。

 呼ばれたナルザはすぐさま起き上がると、ロキの元に赴き膝を着く。そうロキはナルザを斬り殺してなどいなかったのだ。ロキが斬り殺したのは、ナルザに化けさせた兵士隊の死体だったのだ。


神々の黄昏(ラグナロク)を起こす。そして、この世界を滅ぼすぞ」


 ロキはそう宣言すると、高らかに嗤ったのだった。



 

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