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九 七日目  違和感の理由  金曜日

 金曜日。今日はネネとデートの日だ。

 が実はバイトがある。飲食店の方のバイトだ。首になるかも知れない所だ。

 どうしよう。


 というか、明日もある、明日はどっちもある。ふぅ.......昨日のリスティーとのキスのこともある。

 今日も今日とてリスティーは俺より速く起きてまずいが温かい料理を作ってくれていた。


 「ソラ。美味しい?」

 「まずい」

 「意地悪!!」

 「うん。ごめん」


 もう、この一週間で慣れたやり取りだが俺のリスティーに対する接仕方も変わった。もう別に嫌われようとは思っていない。それ以上になろうとも.......


 昨日のデートの事は話してない。一緒に帰って、一緒にご飯を食べて一緒に寝ようとするリスティーを追い出して寝ただけだ。


 勢いでデートになってしまったけどリスティーの気持ちはよくわからない。

 ネネや姫野さんはストレートに言ってくれたから分かるけれど.......


 でも普通.......ストレートに好きだなんて言えないか。

 俺なんか、姫野さんに絶対言えなかっただろうし。


 そう、姫野さんの発言通り彼氏発言が嘘だとしたらあの仲と良さそうなイケメンは何なんだ?

 俺.......姫野さんに遊ばれてるのか? モヤモヤする。リスティーの気持ちも分からない。姫野さんの真意も分からない。けれど好きになった気持ちは変えられない。


 初めてあった姫野さんに今まで誰にも心を動かした事が無かった俺が一目惚れしたあの瞬間は忘れられない。もう変えられない。

 好きになった気持ちだけは変えられない。


 そんな状態で姫野さんのからの告白とネネのストレートな気持ち.......


 「ソラ? 大丈夫?」

 「うん.......今日のバイトどうしようかな? ネネには悪いけど行かないと駄目だよな」

 「行かないで良い!!」

 「どっちに? ネネとのデート? それともバイト?」


 探りを入れるように聞いてみる。

 バイトにいってほしくないのか、ネネとのデートに反対しているのか?

 結局。リスティーの気持ちはどっちなんだよ。好きなの? 好きじゃないの? 


 「ソラのアンポンタン!! ワタシもう行く!」

 「結局.......それかよ」


 食器を乱暴に流しに置いてリスティーが登校する。一緒に行こうと思ってたのに.......

 もうどすれば良いんだよ。


 ネネと姫野さんの謎の会話も引っ掛かる。何かを忘れているらしいとの姫野さんの言葉は突拍子も無いけれど、でも時折フラッシュバックするあの光景が.......


 「ソラ」

 「ん? 一緒に行くの?」

 

 玄関で足を止めてリスティーが俺を呼ぶ。

 それは少し悲しそうな顔をしていた。


 「リスティーはソラの邪魔?」


 それをリスティーがどんな意味で使ったのかは分からない。

 けど、リスティーは今まで各所をたらい回しにされてきた、邪魔だからという一点で。


 「最初は邪魔だと思ったから追いだそうとしてたんだけど。今はリスティーのまずい飯も慣れてーー」

 「ほら! ソラだって何も言ってくれない!」

 「は? どういう意味だよ」

 「何も大事なこと言ってくれない! だからリスティーも言わない! ソラの馬鹿ぁ!!」


 結局。リスティーは怒鳴り散らして一人で登校して行った?

 だから一緒に行きたかったのに.......って言うかなんだよアイツ! 人の事をバカバカ言いやがって!!

 

 「俺だって色々溜まってるの我慢してるんだぞ! 可愛い女子高生と一緒に暮らす男子高生の身にも慣れよ! 襲うぞ!」

 「あら? なら私を襲って良いわよ? ダーリン」

 「ネネ!?」


 ひょこっと突然現れたネネに驚きつつ.......いやそこまででは無いか。

 どうしてとかも愚問だな。ネネは分かりやすくて良い。


 「好きだから来てくれたんだよね?」

 「そうよ。それに今日は私の番だわ、聖は来ないわよ」

 「やっぱり、ネネは分かりやすくて.......」


 時計をみてちょうどまだ速い時間なので、


 「ねえ。ネネ。本当に良いの?」

 「良いわよ? 今からしたいのかしら? 朝からはつらいわよ?」

 「だから! 溜まってるんだよ! 童貞高校生舐めんな! クソ!」


 むしゃくしゃしてやったなんて言葉はあるけれど今がそういう気分なんだと思う。

 リスティーの気持ちも姫野さんの気持ちも分からない。そこに分かりやすいネネが居る。魔がさした.......


 だから俺は一方的に怒鳴ってそれで乱暴にネネを連れ込み鍵をかけて押し倒した。

 もう冷静では無かった。


 「ちょっと.......待ってダーリン」

 「今更待たないよ! もう我慢できない!!」

 

 ネネの服を破くようにピーした。こうして欲しかったんだろ!! そう言ったもんな!

 しても良いんだろ!? なあ?


 それくらいしか考えなかった。だからネネの静止も頭には入らない。

 ただ欲望を、ネネを今抱きたい!

 それだけだった。


 そこでネネがぽろぽろ涙を流した事で一気に気持ちが冷めていく。

 あれ? 何してんだ?

 ネネを泣かせて.......チクリといやもっと鈍くそして重い痛みが心に突き刺さった。


 けれど痛いのは俺じゃない。よく見るとネネの身体に引っかき傷があってそこからピーしている.......俺がやったんだ.......


 「ご! ごめん!」


 急いでネネから降りて謝罪する。ああ終わったと思いながら救急箱を取り出して血を拭き取り消毒液で消毒しそれから.......


 「ダーリン.......違うのよ! 泣かないで。ダーリンは悪く無いわ!」

 

 泣いていた。ピーしたのは俺なのに泣きたいのはネネなのに俺が泣いていた。

 そんな俺をネネが抱きしめて。


 「違うのよ! 嫌じゃ無いのよ? ほんとよ? 泣かないで。ダーリン」

 「ごめん.......ネネ。俺.......最低だよ。ネネの優しさに付け込んで襲おうとして.......泣いて.......ごめん」

 「ダーリン.......」


 暫く泣く俺をネネが慰めてくれて、落ち着いた俺にネネは言った。


 「流石に私も気分じゃ無くなったわ。ダーリン、少し話をしましょう」

 「うん.......ごめん」

 「それは良いのよ。さっきのはお互い気がはやったただの事故よ。もう学校は間に合いそうに無いわね。制服も破れてしまったし.......そうね。私の家に替えを取りに行きましょう」

 「うん.......ごめん」


 ネネは、ため息をついてタンスを漁り「ダーリンの服だわ!」とか言いながら勝手に服を選んで来てぶかぶかなのに嬉しそうにしてから「ダーリンの匂いだわ」とか言い出した。あれ何時洗ったっけ?


 「あ.......。臭かった?」

 「ふふん。とっても大好きな匂いだわ」

 「あんなに酷いことしたのに.......まだそんなことネネは言うの?」

 

 本当に結構酷いこをしたのにケロッとしているネネにそういうと。ネネは当たり前みたいな表情で。


 「ダーリンは酷いことなんてしてないわよ。私がしても良いっていったのよ? それを止めたのは私じゃない。酷いのは私よ.......」

 「っえ? .......ん? そうか? いやいや! 俺だろ!?」



 一瞬ネネの言う通りな気もしたがこういうときは男が悪い様な気がする。

 というか、状況がどうであれ誘ったのがどうであれ付き合っても無い人を襲おうとした俺は俺を許せない。


 「ふふん。やっぱりダーリンは優しいわね」

 「どこが!?」

 「私を襲ったことを反省しているのでしょ? 普通はそんなことすぐ忘れるわ、しかもダーリンはまだ結局何もしてないのよ?」

 「いやいや、ピー触ったたし酷いことをピーし」

 「減るもんじゃ無いわ」

 「減るよ! 何か減るよ! ネネ! 身体は大事にしようよ。後、俺が言うことじゃないけど俺なんか最低な男好きにならない方がーー」

 「そのことも話したいわ。先ずは私の家に行きましょう」

 「う、うん」


 結局。ネネを襲おうとした事はうやむやになった。いやネネがそうしてくれた。

 でもやっぱり心に刺さった刺は消えないだろう。ネネにしても俺にしても、さっき震えていたネネの身体を忘れられない。ネネは待ってっていったのに!


 無言でネネと歩きながら電車に乗り一時間、町外れのボロボロの家が立ち並ぶ場所に連れられた。

 そして、ネネはその中でも一番ボロボロな家に入って、


 「ふふん。ダーリンを連れて来ちゃったわ! さあダーリン、ようこそここが私の家よ、ボロボロだけど雨は凌げるのよ? さっきの続きをするのは話をした後にしましょう.......全てを知った後でそれでも私を選ん出くれるなら.......ね」

 「続きって.......ネネ。お前.......」


 ネネのその言葉に笑ってしまいながら中に入る。

 俺はこの時。ネネの家に気軽に入ったことを後悔することになった。


 中には、中年の男が数人寝ていた。

 嫌な予感がしている.......それが父親では無いことは理解できた。なぜなら男はあまりにもネネには似ていないし.......何より帰って来たネネをみてゲスい笑みを浮かべて言ったからだ。


 「ネネちゃん~。速いね? 今日も相手してくれない?」

 「駄目よ。今日は。私のダーリンが来ているもの。さ。邪魔よ今日はダーリンと楽しむのよ、帰ってくれるかしら?」

 「ええぇ! 折角沢山持って来たのに! そんなの酷いぜ。ネネちゃん。その男まだガキじゃねーか。どういう事だよ?」


 そんな会話をしていた。意味は分かるようで分からない。いや。分かりたく無かった。

 俺に鋭い視線を向けて来る。狼の飢えた視線とでも言うのかな? きっとさっきの俺も同じような目だったんだろう。クソ!


 すると、ネネは声質を明らかに変化させた。


 「ダーリンに何かするのも、馬鹿にするのも、絶対に許さないわ。出て行きなさい! 貴方とはもうしてあげないわ! ほら! 貴方達も! 私を怒らせたいの?」

 「そんなこと言える立場だと思っているのか? ガキ? ああ!」


 男達も黙ってられなかったのか、こびる演技は辞めてネネに近づこうとした。そしてネネの服を無理矢理破き捨てた。それを受けてネネが固まる。


 流石にみていられなくなった俺は男の腕を掴んでネネを引きよせようとする。


 「おい! ネネから手を離せ! 殺すぞ!」

 「ああ! くそガキが! 調子乗ってんじゃねーぞおい! これは俺のモノだ。どうやってコレに取り入ったかしらねーが! ーー」

 「.......離しなさい」

 

 低い声だった。ネネの怒りのすべてがそこに篭って居たのだろう。それがわかった。

 ネネは破れた服を大事そうに持ち抱えて、もう一度。


 「離しなさい」

 

 そう言った。透き通るような綺麗なネネの声に男はあれほど荒れ狂っていたのに従った。


 「良くも、ダーリンの大切な服を破いたわね! 許さないわ。私を怒らせたことを後悔すらさせないわ。もう二度と貴方達とはしてあげないわ。全てを忘れて出て行きなさい!」


 ネネが身体に響く声でそういうと男達はぞろぞろと外に出て行った。

 その異様な光景に困惑していると、ネネが涙を流した。


 「こんなつもりじゃ無かったのよ.......嫌いにならないでダーリン!」

 「うっ.......うん。大丈夫。何がなんだか分からないけれど、大丈夫田から。泣かないで。色々事情があるんだよね?」

 「ダーリン! ダーリン! やっぱりダーリンがぁ好きだわぁ! ダーリン!」


 さっきとは逆にネネが暫く泣きつづけた。それを俺はただ大丈夫と言ってネネの頭を撫でつづけた。

 ネネが落ち着いてから、ネネはボロボロの戸棚からボロボロのコップや皿を出して、お菓子とお茶を入れた。


 「ダーリンをここに連れてきたのは話すより、見せる方が速くて何より解って貰えると思ったからなのよ。でも失敗したわ.......ダーリン。食べて」

 「うん。それじゃあ.......頂きます」

 「どう? 美味しいかしら?」


 ネネが用意してくれたのは柔らかいチョコクッキーだ。

 普通に美味しい。


 「うん。めっちゃ美味しいよ」

 「ふふん。今日のために作ったのよ? もっと良いタイミングだったら良かったのだけれど」

 「手作り.......」

 「あ! 大丈夫よ。ちゃんと綺麗な場所で作ったわ、ダーリンの口に入れるものだもの.......さて。ダーリンにあげたかったものもあげれたことだし、私のことを話すわよ。聞いてくれるわよね?」


 聞きたくは無いのだがここまでみて関わってしまった以上。気になるし何よりもう逃げる選択肢は無い。

 俺はネネを襲いそうになったのもあるし、とにかくこの時の俺に聞かない選択は無かった。


 「ふふん。嬉しいわ。私はね、幼少期に親に捨てられたのよ.......だからこうして一人で暮らしているわ、生きるために必要な事は何でもやったわ.......ふふ.......もちろんさっきみたいな人達に身体も売ったわ」


 最初から壮絶に重い話だった。でもネネの語りは全部俺にネネの事を理解して貰うために話していると分かる。同情を誘うつもりではないのだ。俺が聞きたく無いことは素直に言わずに進めてくれる。


 俺に出来るのはただ黙ってネネの話を聞くことだった。


 「もちろんね。売りたくて売ったわけじゃないのよ? 私にはダーリンと会える確信があったから初めてはダーリンが良かったわ。でも会う前に死ぬのはもっと嫌だったわ。だから.......とにかくあの男達はただの金づるよ。軽蔑するかしら?」

 「いや.......」

 「ダーリンの言葉なら何でも聞くわ。素直に言ってほしいわ。隠される方が嫌だもの」

 「うん。じゃあ言うけど。軽蔑なんてしないよ。絶対しない。ネネの気持ちなんて分からないけどネネが生きて居るのはそういうことをしてきたからでしょ? 俺は今ネネが生きていることが嬉しいよ。だから軽蔑なんて絶対にしない。もちろん、嬉しい訳でも無いけどね」

 「良かったわ。じゃあ続きを話すわよ。ダーリンに私を好きになって貰うためには必要な事だからね。隠して置けないわ」


 ネネの声は透き通る綺麗な声だ。ネネの綺麗な心が全て声に出ているような気がする。

 だからネネが悲しい気持ちだと言うこともすぐわかった。


 「私はね。ダーリン。変なのよ」

 「それは.......まあ、うん。そうだね」

 「失礼ね! 違うわよ!」


 ネネが怒り俺が軽く謝る。ネネが変なのはもう解っている。

 今更言われなくても分かる。


 「笑わないで聞いて欲しいわ」

 「いや.......さっきから笑える話じゃ無いんだけど」

 「言うわよ。私は超能力が使えるみたいなのよ」

 「は?」


 予想の斜め上。ネネはそう言った。俺はそのギャプについプフと笑ってしまった。

 すると、ネネが口を尖らせた。


 「笑ったわね! 笑わないでっていったじゃない!」

 「いや。超能力って.......ね?」

 「さっきみせたじゃないもう.......信じてくれないならいいわよ。不思議ちゃんとでも思っておきなさい。私は事実を言っただけだわ。ダーリンと付き合う事になればいずれ分かるわ。その時謝り倒しなさい」


 ネネはそこで否定も肯定せずにそう打ち切り続ける。

 え? 何かほんきっぽい。マジで?


 「で不思議ちゃんの私はもの心ついた頃から、ダーリン。.......私のことを愛してくれる相手が居ることを理解していたのよ。もうその時には親もいなかったのだけれどね。不思議ちゃんだから捨てられたのかも知れないわ」 

 「.......よし。解った。超能力者で良いよ。信じるよ。そんなに不思議ちゃん連呼しないで、何か悪い気がしてきた」


 ネネが口を楽しそうに歪めて「そう?」なんて言うけどあれはわざとだろう。

 

 「まあ良いわ。そして私が分かることはダーリンには運命の人が私の他にも何人かいるという事よ」

 「それは.......」

 「そう。姫野聖とクリスティーナね.......ダーリン。朝。あの子と喧嘩して怒っていたのでしょ? 駄目よ。仲良くしておきなさい。あの子はダーリンの運命の人なんだからね?」

 

 ネネの話はどこかファンタジックだが何故か説得力があった。まあそれを丸々鵜呑みに出来るほど子供でも無いのだが信じても良いと思えるくらいは、あったのだ。


 「さて。このくらいね。ダーリン質問はあるかしら? 私に分かることなら答えるわよ」

 「運命の相手ってまだいるの?」

 「そうね.......会えば分かるのだけれど、血を吸えば完璧よ」

 「.......あれね。いきなりは辞めた方がいいよ。リスティー怒ってたから」

 「そうね。ダーリンの運命の相手に会えたのが嬉しくて興奮していたのよ。仲良くなりたかっただけなのに.......ダーリンの運命の相手とは、特にね」


 ネネの意図は分かりやすい。運命の相手がどういうものかはわからないけれど、それが俺にとって大事な人である事は分かる。ネネはただ俺の大事な人と仲良くなりたいそれだけたんだろう。

 ネネの気持ちは真っすぐだ。


 「他には無いのかしら?」

 「今は特に.......思いつかない」

 「そう? なら思いついた時に聞くと良いわ。聖の方が何か知っていそうだけれどあの子もあの子で何かあるわ。あんまりがっついちゃ駄目よ。ダーリンは何か知っている事はあるかしら?」

 「俺?」


 そうか、ネネも不思議なことなんだ。全部知っている訳じゃない。

 しりたいのだろう。この不思議な関係を。


 「ネネが言う。運命の相手。俺、何か前にあったことがあるきがするんだよ」

 「そうね。当然よ」

 「え?」


 ここでネネは言った。


 「私達は運命の相手よ。難しいのだけれど、ダーリンと私達はもっと深い場所で繋がっているのよ。特に私達四人は特別よ。.......四人? まあ良いわ。ダーリンは輪廻天性を知っているかしら?」

 「どっかの宗教的な考えでしょ? 確か生まれ変わる的な? .......まさか」

 「そうよ。私達は輪廻のなかで何度も巡り会っているわ。そういう存在よ。それが運命の相手だわ」


 じゃあ。あの声は前世の.......あの景色はあの光景は、そしてネネ達の話は。


 「ネネは前世の記憶を持っているの?」

 「逆に聞くわダーリン。ダーリンは前世の記憶を言葉に出来るかしら?」

 「え? それは俺と.......うっ!」


 急に頭痛が走った。


 「ダーリン。私達のそんざいはこの世界じゃ許されないわ。ましてや前世の記憶なんて絶対駄目よ。私達が何をそれぞれ覚えていようとそれは口にも考えにもまとめられないわ。だって生まれて無い記憶だもの。魂に焼き付いたそれだけよ。あった事がある気がする。でも私達はあったことは無い。そういう事よ」

 「なるほど、わかったよ」

 

 リスティーは知っていて何も言わなかったのは言えなかったからだ。俺の所に来たのは俺が感じた何かをリスティーも感じたかからだ。


 「ダーリン。間違えないで、わたし達は今この時を生きているのよ、前世なんて運命なんて関係無いのよ。今を見なさい」

 「え? でもネネは」

 「私だって会うまでダーリンを好きにはならなかったわ、好きな人がいるのにからだなんてうれないわ。私の運命のダーリン。貴方は私の希望であったそれだけよ。今はとても好きなのだけれどね?」

 

 ネネはそう言った。散々説明してきたネネはそれを全て最後に捨てた。


 「だからダーリンがこの先私達運命の人を選ばなくても良いのよ。全然別の人を選んでも良いのよ? 何もおかしくはないわ。ただダーリンを好きになる物好きはそうそういないでしょうけれどね?」


 ネネは悪戯するようにわらったのだった。

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