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十 七日目 星野空の覚悟 金曜日

 ネネは話したいことを一通り話したのかお茶を口にする。

 俺も特にネネにこれ以上聞くことも無かった.......いや。


 「ネネは、どうしてセフレにこだわってるの?」


 そこまで、運命の相手とまで言ってくれるのに、ネネは俺をセフレにしようとしている。

 普通に付き合うことの方がネネだって嬉しいはずだ。それなのに。


 「.......そうね。それはダーリン.......私が他の男を知っているからよ? 昨日だってしたわ。そんな私がダーリンと正式に付き合って良い分けないわ。ダーリンにはもっと綺麗な子達がいるのだから.......」

 「ネネ!」

 「何かし.......!」


 俺はネネを抱きしめていた。それはどんな気持ちだっただろう。同情? わからないけれどネネのその言葉は何より痛かった。


 「ネネ。ネネは綺麗だよ」

 「.......それは無いわ.......」

 「ネネは、さっき俺に襲われそうなとき震えてた。怖かったんでしょ?」

 「.......それは! 違うのよ。ダーリンとなら怖くないわよ」

 

 明らかに怖がっていた。


 「男に抱かれて喜ぶ様な奴なら俺は綺麗だなんて言わない! めっちゃ蔑むし軽蔑する。でもネネは違った全然喜んでなんて無かった。ネネはちゃんと自分の身体を大切にしていた」

 「でも関係ないわ.......この身はもう数えきれないーー」

 「忘れろ!」

 「え?」

 

 俺は言う。何も分かってない、ネネの辛さをわからないけれどそれでも言う。


 「忘れろ! ネネは誰にも抱かれてなんていない。そういう事にしようよ」

 「それは.......無理だわ.......」


 ネネは声のトーンを落とした。悲しそうに


 「覚えているもの! 男のあの形を味を私は覚えているのよ! 知っているのよ! 忘れられなんてしないわよ! それにダーリン、私はこれからも男を金にして生きていくわ。普通に働くなんて出来ないわ。私にあるのは使えない力とこの身体.......ふふ。知ってるダーリン、このミニマムな身体に大金出すのよ? ふふ.......分かる? 生きるためには.......ふふふ!! 必要なのよ」


 全てを諦めている笑い声。それはネネがどう生きてきたのか分かる言葉だった。そしてネネがこれからもどう生きていくかその覚悟が分かる言葉だった。


 「ネネ.......ゴメン。何も知らないで勝手な事ばっか。君を助ける事も出来ないのに.......」

 「良いのよ。だからダーリン、私は貴方の遊びで良いわ。ダーリンは運命の人でも普通の人でもちゃんとした人を選びなさい。私にダーリンはもったいないわ.......けれどダーリンが私のからだを求めてくれるのならいくらでも貸してあげるわ、ね? セフレでしょ?」


 俺はネネに何も言うことが出来なかった。


 「さっき止めたのはダーリン。私とするときはちゃんとゴムをつけて衛生に気をつけて欲しかったそれだけよ。私からダーリンに変な病気が移ったら大変だわ。ね? ちゃんと男なら用意して置きなさい。今日は私が貸してあげるわ」

 「え?」

 

 ふふっと、ネネはなまめかしく笑った。


 「あら? ダーリン。私に男がいくら払うと思ってるの? 溜まっているのでしょ? 今だけで良いわ。私がヌいてあげるわよ」

 「えっ! ちょっと待ってよ」


 ネネはどこからかコンドームを取り出して器用に開ける。

 コンドームなんて初めて見たよ。ちきしょー! マジでネネはそういう事に慣れているのだろう。


 「私の初めてはあげられないのだけれど、ダーリンの初めては私が貰いたいわ.......嫌かしら」

 「嫌じゃ無いけどさ。待ってって!」

 「確かに使い込まれているけれど、ゴムをすれば大丈夫よ。.......お願いよ、好きな人としたいわ。ダーリンが良いなら、ダーリンの初めてが欲しいわ」

 「ネネ.......」


 ネネは懇願して来る。この気持ちに当てられてムクムクと大きくなる息子.......いや.......ね? 

 可愛い女の子に迫られたらね? 刺激されてるし.......手つきエロい。何より溜まってるし。自家発電とかリスティー来てからしてないし。


 「くっ.......」

 「.......」


 ネネは嫌がれば辞めようと思っているらしく俺の前で動きを止めて俺の言葉を待っていた。

 えっと。どうしよう?


 朝はつい襲っちゃったけれど、あれだけ重い話を聞いた後。冷静になってそれでこれだ。理性がめちゃめちゃ残っている。そして理性が言う。


 「ほらほら! 空よ。星野空よ。お前童貞捨てるチャンスだぜ、相手はクラスで二番目に可愛い音音音音だぜ。やっちゃえよ。こんなチャンス二度と無いぜ?」

 

 そして感情がそれに対して。


 「いや。落ち着け、星野空。今。ネネとするのは違うだろう。自分のことよりネネのことを考えろよ。ネネは今悲しんでいる。自暴自棄って言っても良い。それにお前好きな人と以外しないんだろう? ネネを好きならちゃんと向き合うべき何じゃないか?」

 「おいおい。何言ってやがる。ネネの話聞いただろう? あんな重い事情一高校生にどうしようもないだろう。だいたいネネは生き行くために身体売ってるんだ。お前にネネを養う経済力が無い以上。何を言ってもネネは救われない。それならネネの望みを叶えることがネネを救うことになるじゃないのか?」

 「なるわけないだろう。ちゃんとした所に出ればネネの生活は保障される」

 「そんなうまい話がある分けないだろ。現実をナメるな、ネネはこうして一人生きるために戦っている。それが現実だ」

 

 とか何とか言い争っている。普通理性と感情が逆だと思うがきっと俺の理性は現実をみてネネを救う一番の方法は今ネネと身体を重ねることだと理解しているのだろう。

 でも。感情は違う。


 「俺は、今のネネとエッチなんかしたくない!!」

 「そう.......ね。分かったわ。......当たり前よね。ダーリン。今日のデートはもう良いわ。学校も一人で行きなさい.......私はもう良いわ」


 明らかにネネの目から声から光が無くなった。ネネは俺を希望だと言っていた。当たり前だ、希望が無くなればそうなるだろう。けれどどうしても今ネネをどうにかすることなんて俺には出来ない。

 バイト目一杯入れても俺一人の生活費を稼ぐだけで精一杯だ。今はリスティーがいるからもう少し大丈夫だけど。リスティーがいつまでもいる訳じゃない。

 ネネの面倒を見るならリスティーに頼っちゃ駄目だ。


 力が無いなら、何も出来ない。


 「ほら。空.......早く行きなさい。私は疲れたわ」

 「うん.......ネネ」

 「.......?」

 「いや.......俺には君を救う力は無い.......ごめん」

 「.......そうね。貴方は何も悪く無いわ。誰も何も悪く無いわ。これは仕方の無いことなのよ」

 「.......うん。そう.......だね。俺行くよ。もう夕方だし」


 そう言って俺はネネの家を走り去った。全力で。



 ■■■■■■■■


 音音音音は星野空が出て行った後。力無くただ空を見上げた。


 「.......そうね。貴方なら私を抱かないわよね。だから朝は驚いたのよ.......あのまま何もしなければ良かったわ。でもそれじゃ貴方を傷つける.......」


 ネネが覚えているのは今と同じくネネが男に凌辱されたと知って優しく抱きしめてくれた男の記憶。

 

 「.......何度生まれ変わっても私はこうなのね.......そして今回はもう貴方はいないわ」


 ネネの力を使えば多少は生きていけるが、ネネの力はそこまで強くない。ただ空のために使った時は男達を遠ざけることまで出来た。

 もうその力も使えないが。


 日が落ちて暗くなった頃。ネネのお腹がなる。人はどんな時でもお腹が減るのだと悲しくはかなく笑う。


 「貴方がはっきりしてくれたから、私も引きずらないで良かったわ。貴方に抱かれながら他の男に抱かれるのは嫌だものね.......」


 一人呟くネネの元に中年の小肥りの男が金を持って来た。


 「ネネちゃん! いい、良いかな?」

 「.......いくらかしら?」

 「これ、これだけ」


 ネネの前にケースに入った大量の札が置かれる。

 事は無かった。精々数千と言ったところか。

 それでも多いくらいだ、


 ネネは相当安い値段で売り買いされていた。それがネネの市場価値だった。空には嘘をついていた。

 でも最初は違った。もっと多かった。と適当に言い訳しながら。

 

 「少しむしゃくしゃしているしお金も多いからサービスさてあげるわ来なさい。豚ちゃん。ブヒブヒ言うのよ」

 「ブヒブヒ!」


 ネネは中年の男の唇重ねた。


 「ふふん。臭い口ね。唾液もまずいわ......」

 「ブヒブヒ!」

 「あの人は.......もっと.......優しかっ.......うぅ.......」

 「ブヒブヒ!」


 実際はブヒブヒとは言ってないがネネにはそう聞こえていた。

 乱暴に扱われながらネネはお金を握ろうとして手を伸ばした。

 そのお金を誰かが持ち上げた。


 たまにある。こういう事も仕方の無い事だった。そういう仕事をしているんだ。手癖の悪い奴もいる普段ならもらったらすぐに金庫に入れる。がネネはそういう気分には慣れなかった。お金なんて.......もう嫌だった。


 こんなこともう嫌だった。

 もっとちゃんと生きたかった。そしたらそしたら! あの人だって!


 おもむろにお金を取った人ぐらいは見ておいてその人とはもうしないようにしようと思った。

 だから顔をあげた。


 「!」


 そこにいた人物をみて時が止まった。

 そこにいたのは、


 「何で.......貴方が.......どうして! 空がここにいるのよ!」


 星野空がいた。お金を持ってそこにいた。

 見られたく無い姿を見られた.......今更か、いや。


 「何よ.......貴方がまさか私を使うの? 結局? なら待ってせめて綺麗にしたいわ。ねえ」

 「.......」


 いつのまにかネネを襲っていた。男はいなかったが、空はだまったままそこにいた。

 せめてっ、せめて貴方とするなら身体だけでも見た目だけでも綺麗で.......


 その思いは、潰えた。


 空がネネを抱きしめたのだ。

 身が縮んだ。生まれて一番辛く長い時間だった。


 「ネネ」


 だけど空の声を聞いたら何故か落ち着けた。もういいと思えた。身体から力が抜けた。


 「どうして.......今なの?」

 

 抱き上げられて抱きしめられそれでも一つの疑問を口にする。

 遅い.......もう少し早ければ、いや明日でも良かった。今じゃなきゃ良かった。


 ネネは言う。


 「いやぁ.......いやぁ、貴方に抱かれたくない!」


 自ら欲しかった憧れた好きになった人を拒んだ。

 拒んでから泣いていた。何を! と思って後悔した。


 「ネネ。俺はさ。何時も遅いんだよ。ごめん」

 「いやぁ.......いやぁ、貴方にだけはいやぁ.......もういやぁ.......どうしてよ! どうしてよぉ! 何で私ばっかりこんなぁ!」


 長年溜めていた想いが決壊した。我慢して隠して隠して気付かないようにしていた想いがついに。

 そんなネネを空は優しく撫でた。


 「ネネ。ごめん。俺じゃ君を救えなかった」

 「.......」


 もういい。もう良いからもうほっといて欲しい。



 「だから、ネネ。リスティーに借金して君を君の人生全てを買う事にした」

 「え?」

 「めっちゃ嫌がってたけど。頼み倒したら折れてくれた、ほら.......みて」


 空が指差したそこにはクリスティーナが立っていた。手に大きなケースを持ってその中に見たことも無いほど大量のお金があった。


 え?


 「さっきの男もお金を渡しておいた。だからもう大丈夫。君はもうこんなことしなくて良い。君はもう身体なんてうらないでいい。リスティーから二億で君を買ってもらった。流石に大丈夫でしょ? 足りない? リスティー。足りないって」

 「むっー! ソラの為のお金なのに.......ソラ約束一ヶ月追加」

 「う、うん」

 「なら、倍」

 

 そう言って同じケースをもう一つだした。


 「四億だって、節約すれば一生大丈夫だよ、きっと。ね? ネネ」

 「どうして?」


 疑問。目の前の信じられないお金より、疑問。何故、星野空が音音音音にそこまでするのか、四億もの大金を払うのか。


 「ネネだからだよ。誰でもじゃないよ。普通にただのクラメイトなら見捨てるよ。馬鹿馬鹿しい四億だよ。俺が欲しいよ」

 「ソラならただであげる!」

 「そこ五月蝿い!」

 「むーっ! ソラだいっきらい」

 

 星野空は言った。


 「大丈夫。君には四億以上の価値がある」

 「無いわよ.......生きている価値も無いわ」

 「ある。だって君は俺の初めての相手になってくれるんでしょ? あるよ」

 「!」


 にやけながら星野ソラはそう言った。


 「それに、俺は君を傷つけた。あれだけ酷いことをした。それだけじゃない。君は俺を痴漢から救ってくれた。誰も信じなかったのに。正直めっちゃ嬉しかった。俺は君が四億以上に大切だ」


 そう言った。


 「.......ううぅ.......ううぅ.......ダーリン! ダーリン! 私を抱いてくれるの」

 「うん.......ネネが嫌じゃ無いなら.......ね」

 「ダーリン! ダーリン! やっぱりダーリンだわ。私にはダーリンしかいないわ!!」


 その日。星の夜のしたネネは人目を憚らず泣きつづけた。

 ずっと泣きつづけた。



 ■■■■■■■


 「ネネを助けたいんだ! リスティー。ネネが一生一人で生きていけるお金を頂戴」

 「イヤ! ソラの為のお金だもん! ネネ何か知らない!」


 俺は全力で走って帰って学校から既に帰宅していたリスティーに土下座した。

 学校に来なかったことに怒っていたリスティーは俺の頼みを全力で否定した。

 当然だ。形見のお金大切にしていたお金。それを仲良くも無いもしろ嫌っている人のために使いたくなんて無いだろう。


 使うぐらいならリスティーはもっと最初から使っている。


 「頼むよ! リスティー」

 「イヤー!!」


 何時間も頭を下げて下げて下げてそれでも首を縦に降らない。


 「.......ケチ」

 「む! ケチじゃないもん!」

 「人一人ぐらい養える癖に!」

 「リスティーはごにょごにょ.......を養いたいんだもん!」

 「ケチじゃん! 誰を養いたいかは知らないけど、今、目の前で困っている俺の好きな人を救ってくれても良いじゃん!」

 「だからイヤなの!!」


 意味がわからん。

 リスティーの横で俺を心配して来てくれた姫野さんが。


 「星野さん。私が少しなら出せますよ」

 

 そう言ってくれるが、姫野さんのそれは親の金だろうし、なにより。


 「少しじゃ意味が無いんだ。ネネを救うには億単位の金が必要だ。しかも今すぐ、それをリスティーなら用意できる」

 「億単位.......今すぐ.......失礼します」


 バタバタ出ていく姫野さん。もしかしたらちょっと驚かせたのかも知れない。リスティーが金持ちだっていってないからな。まあ姫野さんなら大丈夫な筈だ。


 リスティーは紙で億単位を本気で持ち歩いている。

 畳みのしたに隠している。ヤメロと言っても聞かないし。ぬすまれてもしらんと言っておいた。


 「リスティー.......頼むよ。俺ネネを助けなきゃ駄目なんだ」

 「イヤ!」

 「俺を助けると思って」

 「イヤー!」


 そこまで言われてまあ無理だろうなと理解していたから怒りはしなかった。だから。

 俺は覚悟を決めた。


 「なら、リスティーさよならだ」

 「え?」

 「悪い。俺ここを出るよ。契約とか色々書いたからあれだけど。まあ親父が何とかするでしょ、うん。あいつ意外と良い奴だよ。妹もいるし」


 分かっていないリスティーにハッキリと言った。


 「俺はネネと生きるよ。ネネの為に生きるよ。ネネが少しでも身体なんて売らないで良いようにアイツの隣で生きるよ」

 「どうして!? 何でそこまでするの?」

 「アイツ。俺のこと運命の相手とか言うんだぜ。馬鹿だよな。でも嬉しかった。俺をハッキリと好きだと愛してるといってくれたアイツのためなら、ネネとなら何とかなるよ。ネネがつらい想いをしなくて良いように俺はするよ。だからリスティー。君とはお別れだ。ここにあるもの全部あげるから許して。じゃあね」


 ネネの事を救えないのならネネのとなりで支えたい。

 彼女は俺に抱かれようとして俺はそれをできなかったけど、彼女の隣で支えるならできる。

 そういう覚悟を決めた。


 「待って! 待ってソラ!」

 「待たない! もう決めた。リスティーとのデート楽しかったよ」


 そう言って再び俺は走り出した。そこで。


 「分かった! ソラ! お金出す! だから行かないで!」

 「え? 良いの?」

 「ソラが居なくなるならお金なんて要らないもん。でもソラ条件ある」

 「なに?」


 俺の覚悟が決まった所でこのどんでんがえしかん。でもリスティーが出すならそれが一番良い。


 「ソラは誰とも付き合っちゃ駄目! そのネネってこも駄目! 良い?」

 「え? マジで?」

 「お金.......一億ある」

 「足りるかな?」

 「むー! 欲張り! ならソラがこれからリスティーと一ヶ月一緒の布団で寝る」

 「.......」

 「プラス一億」

 「乗った!」

 「じゃあ。契約書と誓約書と血印押して」

 「ちょ! リスティー急いでるんだって! 早くしないとネネが貪れちゃう」

 「なら急いで書いて!」


 とまあ。どたばた書いて急いで向かったら.......ね? もうね。ネネがネネってたよね。

 ほらまにあわなかったという視線を向けたら、リスティーが、男に大量の金を渡してさがらしてた。その金をネネにあげようよ!


 俺に気づいて意識がぼーっとしているネネを抱き起こして。

 ネネにお金の事を話してそれで色々と言って、泣いてしまったネネをお持ち帰りした。もうあんなボロボロな所において起きたく無い。


 泣きつかれて寝てしまったネネを抱きながらタクシーで帰る中。


 「大家さん。部屋一つ頂戴」

 「むー! 団地妻反対」

 「五月蝿い。ネネの二億で買収し直すよ」

 「また買収するから良いもん!」

 「おい!」

 「むーっ! ソラがバイトやめるならいいよ」

 「は? やめたら生活どうするんだよ」

 「リスティーが全部出すもん!」

 「おい!」

 「.......もっとリスティーもソラと......一緒にいたいから.......」


 瞳をウルウルさせたリスティーにそういわれた。一緒いたい.......か。

 だからリスティーはずっとバイトを辞めさたがっていたのか.......バイト.......か。


 「まあいいかな。ネネの二億があれば何とかなるでしょう。将来はネネとグヘヘ」

 「ソラ誓約書!」

 「はい。わたくし、星野空は今後一切異性とのお付き合いは致しません」

 「宜しい」

 

 くっ! この野郎! まあそれでネネの幸せが買えたら十分か。

 

 「リスティー。バイト辞めた瞬間いなくなったりするなよ」

 「リスティーはずっとソラと一緒だもん!」

 「とか言いながら男作ってどこか行きそうだよな」

 「行かないもん」

 「いや。いっていいよ。そしたらグヘヘ」

 「ソラ契約」

 「はい。わたくし、星野空は一生異性とはお付き合いを致しません」

 「破ったらお金はぼっしゅう」

 

 くっ! この野郎! 

 

 そんなコントみたいな事をしていたら。

 腕の中にいる小さなネネが、


 「ダーリン.......大好きよ.......ずっと待っていたのよ」

 

 と呻いた。可愛い奴だ。

 

 「ああ。ネネ。もう君を苦しめるものは全部無くなったからね。リスティーも俺が借金しただけで君には何も無いから大丈夫だよ。もう悲しいことも辛いことも忘れてこれから楽しいことを沢山していいんだよ」

 「ふんっ。リスティーはネネ何か知らないもん。でも部屋ぐらい貸してもいい。ソラが一緒に居てくれるなら」

 「ツンデレ、リスティー」

 「ツンデレじゃないもん! ソラがにぶちん何だもん」

 「この俺をにぶいだと。よく言ってくれるな。俺は察し良い男として自負が.......あメール。姫野さんからだ可愛いな」


 『姫野さん。

  星野様。夜分遅くすみません。しかし火急と思ったので、急いでメールを差し上げました。

 

  只今、国際銀行から私の預金を落とせます。しいては.......小切手で十億までは何とかなると.......私の全財産を合わせれば数百億は.......しかし銀行から数百億は一日では.......以上です。折り返しお願いします』



 その通帳の写真付きでメールをみて俺は書いてあることの半分も理解できなかったが、ようやくすると、数百億ありますがどれくらいひつようなのでしょうか? という感じだった。


 唖然である。


 実はリスティーより金持ちなのではないか、と思ってしまう程だ。

 そういえばリスティーは最初から妙に姫野さんを敵視して居たけれどまさか知り合い.......まさかね。


 とにかく

 

 『姫野様。解決致しました。帰って来てください。お願いいたします。明日のデートはリーズナブルでお願いします』

 

 すると、数秒後。


 『そうですか。ネネさんが無事なら良かったです。私ではやはり少な過ぎますよね。すみません。ソラ様のお力になれればと思ったのですが、明日のデート楽しみにしています。迎えに行くので自宅で待っていてください』


 というメールがきた。

 少ないって? 姫野さん金銭感覚.......え? リスティーでさえ渋ったよ。え?


 というか姫野さんに借りてたら誓約書とかいらなかったんじゃ?

 

 「ムム。ソラ! 血印」

 「ははぁ! わたくしーー」

 「もう良い。ソラ! ネネはリスティーがお風呂に入れるから覗いちゃダメ。音も聞いちゃ駄目!」

 「へいへい」

 「ソラ.......でもソラは優しかった!」

 

 ニコニコ天真爛漫にそうリスティーが笑った。


 「何も優しくなんか無いよ。俺はネネだから助けた。ネネが好きだからって理由で、でも本当に優しい人は助けないよ。ネネとおなじ境遇の人を全員助けられないといけないから。俺はネネを救ってネネ以外の好きじゃな人を見捨てたんだ。最低だよ」

 「それでも、ソラはネネを助けた。ソラが助けようとしなければリスティーもヒジリもネネを助けなかった。ソラはネネを助けたんだよ。人一人をきっちり救いきった。それはソラじゃなきゃできないよ。ソラが優しくなきゃできないよ。ソラ。頑張ったね」


 リスティーにそういわれて俺が救われた気がした。

 頑張ってよかたって心から思えた。ネネを買えて良かった。違うか。


 「まあ、ネネの人生には責任を持つよ、ネネが誰かと幸せになれるまでは完全に救った事にはならないから」

 「.......ソラの人生にはリスティーが責任持ってあげる!」

 「俺の母親か!」



 星野空。借金四億。返済予定無し。クラスメート音音(おとね) 音音(ねね)購入。

     


  

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