変わらないようで変わった日常
九話目です。お盆でいろいろあったので更新できませんでした。
加えて今回はちょっと少な目です。
ミルファが二度部室に来てから数日たち、今日は金曜日。
あれ以来ミルファが部室に来ることはなく、また俺に接触してくることはなかった。
それだけでなく超常現象も誰にも起こった様子はなく、ただ平和な日々を過ごしていた。
といってもあの日の出来事でなにも影響がなかったわけではなかった。
その翌日には佐々羅さんと許斐君が欠席し、そのまた翌日には佐々羅さんは登校したようだが許斐君は昨日ようやく登校してきたそうだ。
あの日存在を消されるという体験をした後、佐々羅さんは七瀬さんと戸森さんに連れられて帰宅したそうだ。
帰り際に見た佐々羅さんの表情が重々しく青白くなっていたのが記憶に残っている。
再会した後の佐々羅さんはいつもと変りなく毅然としていた。
けれどどこか無理をしているようにも見えた。
七瀬さんも部室では少し心配そうに佐々羅さんを見ていた。
一条君もいつもより元気がなかったような気がする。
なにもかもが4月とはまったく変わってしまった。
六限の授業もあと十分というところで終わりを迎える。
数学の授業で前には横井先生が数式をつらつらと並べていろいろ説明をしている。
相変わらず数学はさっぱりである。
あの数式がいつどこで使う時が来るのかがわからないし、むしろ絶対使うことなんて無いに決まっている。
先生の話を聞き流しながら黒板に書かれた物をそのまま写す。
いまある部分を写しきったところで授業の終わりを告げるチャイムがなる。
それと同時に先生の説明も終わったようで、日直の号令で授業が終わった。
「山田先生から言われているか知らないが一応言っておくぞ。今日は緊急会議の関係で部活動は中止だから早く帰るように。」
・・・そんなこと初めて聞いたんだけど。
あ、そうなんだ・・・というクラスの反応で横井先生の顔が少し曇る。
この顔をしたときは大体山田先生にご立腹なときなのだ。
この間も学年総会の伝達をし忘れていたことで部室前で山田先生が横井先生に説教されていた。
しかしそれでも山田先生は気に留めることなく適当なので、行事があればその度に横井先生はこの顔をすることになるだろう。
横井先生に心の中でお疲れ様です、と手を合わせておく。
そうして放課後。
学級委員から山田先生に、部活動の中止が本当か一応の確認がされたが先生は、
「ああ~そういえば今日なんか会議あったな・・・」
と会議のことすら忘れていたようで、仕舞いには、
「まあ横井先生が言ってたならそうなんじゃない?」
とまるで我関せずであったがいつものことである。
そのままHRも終わり、先生は教室を出て行った。
部活がないなら特にやることもなく、いつもより早く帰宅することになる。
本屋はGW中に行ったから当分新刊は出ていないし・・・帰るか。
そう決め、帰り支度をして教室を出る。
廊下に出てもいつも通りどの教室もまだHR中だ。
階段を下り下駄箱まで来たところでスマホに着信が来た。
また姉さんからのパシリかなと思いスマホを見ると、送信者が佐々羅さんだった。
SNSで送られており、内容は”明日の午後一時に三代神木の前に来い”とだけ書いてあった。
三代神木とは駅前にある一本の大樹である。
神木であるらしくいろいろ言い伝えや伝説があるとかないとか。
内容だけ見ればデートのお誘いのようだが、それはない。
そういう間柄でもないし、そういう風にも見られていないだろうし。
これが七瀬さんとかだったら、ちょっとはドキドキする・・・いやあの人もただの買い物とかで呼び出しそうではあるか。
残る戸森さんならば、完全にお母さんとの買い物になってしまうので結論―――映研部の女子とは甘酸っぱいことにはならなそうだなぁ。