部室に現れた自称神様
五話目です。書くこともとくにないんですけどどうしましょうか。
映像研究部の部員は五人であり、この男の子は部員ではない。
誰かの友達かと思い皆に目線を向けるが誰一人知っている人はいないようだった。
入部希望者かとも思ったが既に部活には強制入部させられているはずでありその線はない。
ならば、この男の子は誰なのだろうか・・・
「えっと・・・映像研究部になにか用かな?」
「そんなに硬くならないで。これからちょっぴり仲良くしてもらうだけだからさ。」
部長の戸森さんが率先してその男の子に問いてみてくれたが、まったく答えになってなかった。
その子はニコニコはきはきとした声で楽しそうに話していた。
「なんでもいい。お前まず誰だよ。なんでこんなところに来たんだ?」
いきなり敵対心バリバリで佐々羅さんがもう一度聞いた。
「そんな怖い顔しないでよ。まだ君たちになにかするつもりはないんだからさ。」
誰も何も答えず、その子の続きを待つ。
「はじめまして、僕はミルファ。君たちからしたら・・・神様かな?」
・・・中二病かな?
全員が全員、こいつ何言ってんの?という顔であっけにとられていた。
「・・・みんなひどいなー。僕は中二病でもないし、れっきとした神様だよ!」
「・・・で?そのカミサマとやらが私たちにいったい何の用だ?」
「信じてないな~・・・」
その子が不満そうにしたと思ったら、右手を顔の横まであげていた。
ニヤッと笑った後に指をパチンと鳴らした。
その一瞬でその子はその場からいなくなっていた。
目の前で起こったことが理解できず、茫然としてしまう・・・はずだったが後ろから七瀬さんの「きゃあ!」という悲鳴でそちらを向くと、さっき消えた男の子がそこにいた。
「・・・どうやって移動したのかな?」
あのテンションの高い一条君でさえ、冷静になってそう聞いた。
「瞬間移動、ってやつなのかな?でもこれで・・・」
またその子は指をならし、その場から一瞬で消えた。
「僕が神様だってわかってもらえたでしょ?」
再び背後から声がして、振り返ると扉の前にその自称神様がいた。
どうやらこの子、ミルファが神様でないにしても人間ではないことは確かだ。
百聞は一見に如かず、目の前の事実に納得せざるを得なかった。
「それで、お前は何の用はなんだ。」
「今日は時間があんまりないから挨拶と顔合わせだね。一週間、みんなが揃うの待ってたんだよ?」
「そんなことはどうだっていい!!聞きたいのは・・・」
佐々羅さんが声を荒げて何かを聞き出そうとした。
しかしその先を再び扉が開いて遮った。
こんどはこの部の顧問、山田唯先生がそこにいた。
「騒いでるけどどうした・・・ん?」
「あーらら、見つかっちゃった。」
他の人には聞こえていなかったようだが一番ミルファの近くにいたから、”見つかった”と聞こえた。
先生が現れたからか、ミルファの様子が先ほどより大人しくなっている。
「こらこら、勝手にウロチョロされちゃ困るよ?親御さんも待っているから戻りなさい。」
山田先生らしからぬそれっぽい先生の言葉にも驚いたが、言葉の内容にも引っかかるところがあった。
「お前らも今日は帰れ。このあとここ、ちょっと使うから。」
じゃ行くよ、と山田先生はミルファを連れて行くらしく、そのまま部室を去った。
ミルファはまた神様と名乗った時のような様子で
「じゃあまたね」
と一言添えて去っていった。
一同急展開に唖然として、少しの間動くことができなかった。