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日常ディファレンス   作者: ユーサ
4/10

部員五人ともう一人の男の子

これで四話目です。活動報告でのコメントありがとうございます。

とてもうれしかったです。

金曜日、学生全員が待ち望んでいるであろう一週間の一曜日である。

そうなってくると心なしかいつもの通学路も少しばかり違って見えてきたりする。

いつもは視線が下にいきがちであるのが真正面を見れるくらいには変わってくる。

すると前方に映研部の部員、戸森純の後姿が見えた。

後ろ姿、というよりは腰あたりまで伸びているポニーテールが目についた。

そういえば戸森さん、今週まだ来てなかったな・・・

戸森純、一年二組で俺と同じクラスであり言葉数が多い方ではない、クールな女子だ。

基本部活には週一くらいでしか参加しないが、れっきとした映研部の一員だ。

ちなみに七瀬遥も同じクラスだったりする。

前にいる彼女に声をかけるでもなく、ただただ通学路を歩いていく。

普段から俺は部室以外で話をすることはめったにない。

話しかけられれば話はするが、クラスメイトに限らず、部員であったとしても自分から話しかけることはなかった。


いつも通りに授業を受け、いまはHRの時間。

相変わらず適当な先生の号令で一週間の学校生活が一区切りを迎える。

いつものごとく帰り支度を済ませ、教室を出る。

「ちょっと待って~矢野君。」

後ろから声をかけられ、振り返ると七瀬さんがいた。

「部室行くんでしょ?一緒に行こう。」

いつもは一緒に行くことはないのに今日はどうしたんだろう。

「今日はどうしたの?いつもはこんなことないのに。」

「ん~、今日は純ちゃんが来る日でしょ?だから一緒に行こうとしたんだけど掃除当番らしいんだ~。待ってるよ?って言ったら、大丈夫だから矢野君と先に行ってなさいって言われたの。」

「あー・・・」

言いそうだな~、と思いながら二人で階段を下る。

戸森さんはお姉さん気質というかお母さん気質というか、言うことや行動が何かとお母さんのようであるのだ。

よく寝ている七瀬さんの頭を優しく微笑みながら撫でているのを見たことがある。

映研部を一つの家族として見たなら、確実にお母さんポジションである。

お母さん話に花を咲かせているとあっという間に部室前だった。

部室には珍しく佐々羅さんと一条君がいた。

担任の関係上、自分たちのクラスより早く終わるクラスはないと思っていたので少々驚いている。

「今日は来るの早いんだね。」

「ああ、六限が横井の授業でな。放課後に予定があるらしくて授業終わりにHRも済ませてたんだ。」

横井とは一年一組担任の横井龍二先生のことだ。

まじめな良い先生であり、俺たち二組の担任の山田先生の先輩でもある。

よく横井先生を先輩と呼んでいるし、何かと関わりが多いようで一部の山田唯ファンの方々からは目の敵にされていたりする。

一条君は今日はソファーではなくイスに座ってスマホをいじっていた。

佐々羅さんは一条君の前の席でノートパソコンで何かしているようだ。

俺は一条君の隣の席に座り、昼休みに買って残っていたお茶で一息ついた。

七瀬さんは既にソファーで横になっており、頭には七瀬さん用の枕が敷かれている。

誰かが話すことなく、窓から聞こえる様々な楽器の音色に耳を傾けていた。

窓から吹き抜ける風が心地よく、眠気を誘うようであくびが出てしまいそれがうつったのかみんなもふわぁ、とあくびが連鎖した。

そんなこんなで10分ほど時間が経った頃、扉がガラッと開きそこには戸森さんがいた。

「ごめん、掃除で遅れちゃったよ。」

「遅れるくらい大丈夫だ。一週間ぶり、といっても体育とかで顔は合わせてるか。」

「掃除おつかれ~。じゅんじゅんは今月掃除当番なんだったんだね。」

「純ちゃ~ん。会いたかったよ~。」

「おんなじクラスだけど・・・」

七瀬さんが戸森さんに手を伸ばし子供のおねだりのようにしているのを見て、戸森さんはクスリと笑い佐々羅さんの隣の席に座る。

席に座り、そのまま戸森さんはかばんの中をゴソゴソとあさり、中から可愛く包装されたものを取り出した。

「クッキー焼いたの持ってきたから、みんなで食べよ。」

「わーい!純ちゃんのお菓子大好き~。」

ソファーに寝ころんでいた七瀬さんが素早く起き上がり、横にかけてあったパイプ椅子を持ち出した。

部室に来るとき七瀬さんと話していた、戸森さんがお母さんのようだと言っていた理由の一つが家庭的なところだ。

いわゆる女子力とも言えるものだが、裁縫や料理、掃除など専業主婦がすることのほとんどがハイレベルでこなせるのを目の当たりにしてきた。

戸森さんは週一くらいで部室に来るのだが、その時にお菓子を持ってきてふるまってくれたのだ。

「わざわざ作って来なくても普通に来てくれてもいいんだぞ?」

「妹や弟に作ってあげたついでに作ってるから大丈夫だよ。無理はしてないからさ。」

「そうか・・・じゃあありがたくいただきます。」

「ん、どうぞ。」

佐々羅さんに倣っていただきますと言ってクッキーに手を付ける。

味は言うまでもなくとてもおいしい。

クッキーを食べながら談笑しているところにまた、扉が開いた。

扉の方を向くとそこには神前高校の制服を着た中学生くらいの・・・男の子がいた。

顔が中性的、というより女顔であり背も小さいのでどっちか一瞬わからなかったが、着ている制服が男子生徒用のものであったので男の子なのだろう。

「こんにちは、映像研究部のみなさん。」

その男の子はニコッと笑って部室の扉を閉めた。

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