テントってすごい!
「なあ、いい加減機嫌を直してくれないか?忘れてた事は本当に悪かったから」
「いえいえ。私みたいな影の薄い男の事何か気にせずどうぞ旅を続けてくださいませ」
「そんな事言わずにーー」
俺達は今リージョンバンカーを目指し歩いていた。
「分かりました。もういいですよ。それより本当にラストソルジャーズは高い技術を持っているんですか?そんな話聞いたことありません。リージョンバンカーの話もです」
「でもあのワイルドな市長が言ってたんだぜ。大丈夫でしょ」
「でもあの市長って素性が全然わからないんですよね。何でも突然現れたんだとか」
「ふーん。でも俺達はどのみち情報もろくにないし信じるしかないだろう」
それにあの市長見た感じいい奴ぽかったし大丈夫だろう。
そして気づけば時間は夜になっていた。
「いやー、レント様ありがとうございます!こんなに気持ちいい野営は久しぶりです!」
「でしょうでしょう。私の有り難みが分かったでしょう!さあ、靴を舐めてください」
「ははー」
「馬鹿じゃないの」
何故俺がこんなにレントに感謝しているのかというと、それはレントが持ち運び式のテントとキャンプセットを持っていたからだ。
テントのおかげで雨の日でも気にせずに寝ることができるし、おまけに温かいと来た。
この世界に来てからというと、ねる場所はだいたい硬い地面か、虫がてくてく歩いてる腐りかけの床だったからな。
久しぶりに気持ちよく寝ることができる。
俺がレントの靴を愛情を込めて舐めようとした時
「ねえ、カイン。グレートウォールではありがとう」
おや、珍しいこともあるもんだ。
あの仏頂面のラスが俺に感謝の言葉を言うなんて。
ついつい顔がニヤニヤしてしまう。
「おう、別にいいぞ。お前から感謝の言葉を聞けるとは思わなかったぞ」
「何ニヤニヤしながら喋ってるの。あたしだって感謝の言葉ぐらい言えるよ。ただ、優しくされるのが久しぶりだったから」
そうか。ラスは俺達に会うまで1人で旅をしていたんだろう。
きっと色んな人の悪意を目にしてきたんだろう。
そりゃ疑い深くもなるよな。
おどけた口調で俺は
「そっか。じゃあこれからは俺達に甘えまくっていいぞ!」
レントが私も入ってんのみたいな顔してたが気にしない。
「べ、別に甘えたりはしないけどありがと」
ラスが頬を紅潮させながら答えた。
ハッ、照れちゃって。まだまだ子供だな。
「ところでラスちゃんは何で旅をしているの?」
レントがコーヒー(この世界では呼び方が違うがめんどいので俺はコーヒーと呼んでいる)をチビチビと飲みながら尋ねた。
ラスは暗い顔をし、少し間を置いてから答えた。
その時にレントが俺やっちゃた?みたいな顔をしていたのは言うまでもない。
「あたしは、その、両親を探しているの。何歳かな。6歳ぐらいまでは一緒に住んでたんだ。でもある日、おつかいが終わって家に帰ったら誰もいなかった。その後何ヶ月も待った。でも2人は帰ってこなかった。捨てられたのかもしれない。それでもあたしはもう1度2人に会いたい
お…重い。予想より重かった。
でも大変だったろうな。俺ならきっとそのまま1人でニートできる最高!!とか叫んでたな。
先に言っておくが俺は日本に居た時も前の世界に居た時もニートではなかった。
まあ実際は泣いちゃうだろうな。
「そうだったんですか。すいませんね。辛いこと聞いて」
「いいのよ。それに意外と今は楽しいから」
「そりゃ良かった!そんな風に思ってもらってパパは嬉しいぞ!」
「何言ってんの?何か急にキャラ変わってない?」
「そんな事ない。むしろこっちが素だ」
何故か2人が冷めた目で俺を見る。まさか、
「ちっ、違うぞ!俺は決してロリコン何かではない!俺の対象は包容力のあるお姉さんだけだ!」
何故だろう。ラスの目がさらに冷たくなった。
でも逆にレントは嬉しそうなんだけど。
すると急にレントが立ち上がり
「さすがカインさん!分かってますね!やっぱ包容力あるお姉さんが一番ですよね!久々に同士に会いました!今日はとことん語り合いましょう!見張りの心配はありません!ちゃんとセンサーを仕掛けてあるので!さあ、さあ!」
この後俺はレントによるお姉さん講義を延々と聞かされた。
ラスはずっと冷たい目を向けながら気づけば寝ていた。
「斗真様〜元気にやってますか?」
この声は女神様!
「どうしたんですか。女神様」
「様子を見に来ました」
「さいですか。調査の方はどうなんですか?後今更なんですけど何で俺の言葉通じてるんですか?」
「調査は諦めました。言葉が通じるのは私がそういう奇跡を与えたからです」
ちょっと待て。今この女神とても大事な事言わなかった?
いやー、待て、そう落ち着こう。
深呼吸してー良し。
「すいません、今何て?」
「何言ってるんですか。鈍感系主人公の真似ですか?同じ事は二度言わない主義なんです」
なんだよその主義!
「何で調査やめたんですか?」
「んーだるいから?」
この糞アマッ!駄目だ。こうなった女神は本当に何もしない。
「わ、分かりました。えーと奇跡はこの世界にも存在してるんですか?」
「していますよ。ただあなたのいた世界の奇跡とは効果が違うものばかりでしょうね」
おお、まじか。
奇跡って結構面倒臭い能力が多いんだよな。
ちなみに奇跡ってのは神から与えられた能力です、以上。
「まあ、元気そうなんでもういいですよね。さよならー」
あいつ!もしあいつが女神じゃなかったら1日中痺れ魔法かけてやるところだ!