旅の始まり
「それで女神様、この状況をどう説明する?」
「そうですね〜おそらくここは異世界では無いですね。ですがあなたがいた世界とは何かが違います。違和感を感じるのです。おそらく何者かの干渉があったのでしょう」
女神は顎に手を当て答えた。
(この女神は本当にぶりっ子だなー)
「そりゃあ頼りになる女神様だこと」
「あら、ありがとうございます。でも私に文句を言っても仕方ありませんよ?それにあなたの目的は果たされています。では、私もこの件について独自に調査を行うのでまた会いましょうね〜」
「おいっ!待てよ!」
(確かに女神の言う通りではあるが...まあ仕方ない)
翌日、長老の家にてーー
「それで、今日はどんな話をしてくださるのですか?」
一体何の動物かも分からない肉を食べながらカインは問いかける。
「そうだな。今日は勢力と地理の話をしよう」
「勢力と地理...ですか」
(勢力か...どこかに所属するべきかそれとも一匹狼でいるべきか)
「ではまず勢力から。まずは我々ガーディアンズだ。我々は基本的に来るものは拒まん。ルールを破った者は別だが」
(ガーディアンズか...まあいい奴らではある)
「次にスケルトンズ。こいつらは死を栄光と捉えている。中々危険だが、話し合えない訳ではないな」
(スケルトンズ...厨二くさいな。いわゆる武闘派か)
「次はラストソルジャーズ。彼らは非常に閉鎖的だ。会ったことはおろか見たこともほんの数回だ。確か元軍人の集団で厳しい規律があるらしい」
(ラストソルジャーズね。ガーディアンズの次にまともか。ただ閉鎖的なのが少しなぁ)
「そしてお前が勘違いされたファンキーズ。彼らは一言で言うと狂人共だ。話し合いは基本無理だ。そしてスケルトンズとは一触即発の状況だ」
(ファンキーズ...狂人か。こいつらには近づかないでおこう)
「最後にこれは噂のようなものだがファイアーマン。こいつを見た奴は少ない。なぜなら見た者はほとんどが死んでいるからだ」
(ファイアーマンね。昨日聞いたが噂なのか?)
「では地理だ。と言っても話すことは一つだけだ。それはあれだ」
長老の指す方向には数あるビルの中で一番大きく中心にあるビルがあった。
「あれはセントラルタワー。今まであらゆる人物や勢力があれを目指したが殆ど失敗に終わっている。噂ではあのタワーの中に町があるらしいが...嘘だろう」
(セントラルタワーか。きっと宝でもあるんだろうな)
他にもカインは長老からモンスターの話を聞いた。イエローマンやグレーマン、ケルベロスだ。これについてはまた詳しく話そう
「それでこれからお前はどうする?」
長老はとれかけの耳をボリボリとかいた。
(そうだな。旅でもするか。だが転生に干渉した人物も気になる。当面の目的はそいつの捜索だな)
「そうだな。人探しをしようと思う」
「人探しか。ならグレートウォールに向かうといい。あそこはこの地方でも中々デカイ町だ。グレートウォールはあれだ」
グレートウォールは橋のずっと奥に左右に伸びるように位置している
(ありゃミニ万里の長城だな)
「ありがとう。それじゃあもう行くよ」
カインはこれからの旅の事を考えながら家から出ようとした。
「ちょっと待て!お前に渡す物がある。必要な物資と銃だ」
そう言うと長老は水と食料が入ったリュックと少し型の古いリボルバーを差し出した。
「こんなにたくさんの物資を...しかも銃まで!いいのかこんなに貰って?」
「いいんだ。あんたはどこか懐かしい感じがする。久しぶりに良い気分になった」
その言葉を聞きカインはリュックを背負い銃を手に取った...が
「あっちい!何だこりゃ!熱すぎて銃が持てん!」
カインは銃を持てなかった。実際には持つことを許されていなかったのだが。
「いや、そんなはずはない!貸してみろ!」
長老は銃を手に取った。
「ほら、何ともないぞ?」
(そんな馬鹿な!まさかこんな世界で剣一本と魔法だけで立ち向かえと?!)
「銃はいいよ。後は自分で何とかする。今までありがとうございました」
カインは長老に礼を言い家を出た。
ゲート前にてーー
(いよいよ旅が始まる。何だかワクワクしてきたな!)
カインは今新たな一歩を踏み出した。それが後にこの世界の運命を変える事になるとも知らずに。
だが今は彼を見守ろう。
"その時"が来るまでは...