グレートウォール会談
ラストソルジャーズの基地に到着すると、そのまま元将軍の部屋まで案内された。
道中例の住宅施設を通り過ぎたが、ボロボロだった家も綺麗になっており、以前のような差別や迫害も見られなくなっていた。
フィストは宣言通りここを良いところにしてるみたいだな。
元将軍の部屋は司令室のようになっており机の上にはたくさんの資料が置かれ、壁には大きな地図がかかっていた。
フィストはその地図の前でアイス司令官と会話をしていた。
「おいフィスト。お前の望み通り来てやったぞ」
声をかけるとフィストだけが振り返った。
「カイン!無事だったんだな!結局科学者の夫婦は見つかったのか?」
「いいや。だがホープとかいう組織が鍵を握ってることは間違いない」
「ホープ?そんな奴らがいるのか?聞いたことはないが...」
フィストはホープを知らないのか。まあ俺も聞いたことの無い組織だったしな。
まあ空に浮いてる街だし、向こうから情報を流さない限りはバレることもない...か。
「そんな事より、今回の件はどういう事だ?どうして急に戦争を始めたんだ?」
「ん?何を言っている?戦争を始めたのは俺たちじゃない。スケルトンズが始めた戦争じゃないか」
何?これは一体どういう事だ。グレートウォールでは確かにラストソルジャーズが戦争を始めたと聞いたが。
「冗談だろ?俺はグレートウォールでお前達が戦争を始めたって聞いたんだが」
「そんな馬鹿な。何かの間違いじゃないか?」
フィストが嘘をついていると考えるべきか?だがフィストが本当に戦争を起こすかと言われると...。何せ父親から権力を奪ったばっかりだしな。
「そうだ。お前を呼び出した理由だがな。もう1度俺達と共に戦ってくれないか?お前の戦闘力は目を見張るものがある」
協力ねえ。こんな情報が錯綜してる中何処かの勢力に手を貸すのは良い判断じゃないな。
1度全ての勢力に話を聞くべきだろう。
「お前に協力したいのはやまやまだが、情報が混乱してるみたいだ。全ての勢力と話をしてからじゃ駄目か?」
「む。それは...。まあいい。そうすれば俺達が戦争を起こしてないともわかるだろう」
「そうと決まれば善は急げ、だ。とりあえず俺はスケルトンズに会いに行く」
スケルトンズなら俺が行っても攻撃はされないだろう。それにあいつらは俺に対してなら必ず本当の事を言うはずだ。
「スケルトンズか、じゃあラーザスの近くまでヘリで送ろう。そっちは任せたぞ。その間に俺はファンキーズとガーディアンズに連絡を取る」
「分かった。じゃあ早速行動開始だ」
ーーー
ーー
ー
ラストソルジャーズのヘリでラーザスの近くまで送ってもらい、今俺は教会でイスと机を挟んで向かい合っている。
「それじゃあ、お前達はファンキーズがタワーに進軍すると聞いて戦闘を始めたのか?」
「その通りですとも。あのタワーはあなた様の炎を灯すためにあるのに、どうして他の者共に与えましょうか」
スケルトンズはファンキーズのせいだと言っている。だがラストソルジャーズはスケルトンズのせいだと言っていた。
これは非常に面倒だな。となると次はファンキーズだが...。一旦ラストソルジャーズの基地に戻ってフィストにこの事を伝えよう。
「そうだ。一つ聞こう。お前達は誰もタワーを奪わないと言うのなら戦争はしないんだな?」
「もちろんですとも。無益な戦争はいけません。しかしあなた様が命令するのならば喜んで全信徒が行動するでしょう」
「いや、できれば戦争は避けてくれ。それが俺の願いだ」
「分かりました」
ーーー
ーー
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「じゃあラストソルジャーズはファンキーズが原因だと?」
「ああ、確かにそう言っていた。それと停戦の意思は一応あるみたいだが」
「停戦か!それはこちらにとっても非常に喜ばしい!」
「それでファンキーズとガーディアンズは?」
フィストが溜息をつき肩を落とした。
「それがだな...。ファンキーズはガーディアンズ、ガーディアンズは俺達が原因だと言ってるんだ。何処かが嘘をついていると考えるのが妥当だが...」
これは厄介な事に...。とりあえずは停戦を提案してみるか?戦争はいつの時代も嫌なもんだし。
「お前達はこの戦争を継続したいとは思ってないよな?」
「勿論だ。我々はまだ体制が変わったばかりでまだまだ不安定だからな」
「ならお互いに不可侵条約を結ぶってのはどうだ?」
フィストはしばらく黙り込んだ。
戦争をやめてもらわないと困るんだよな。もう1度ホープに行きたいが地上のいざこざをなんとかしてからじゃないと。おそらくこの件にはホープが絡んでるはずだしな。
「…いいだろう。では俺は早速三勢力と会談の約束を取り付ける。お前はひとまず休んでくれ。無理やり連れてきてしまったようなものだしな」
「そうか、会談ができるといいな。じゃあ俺は前の部屋で休ませてもらうよ」
司令室を後にした俺は部屋に行く事にした。
これでパパッと戦争が終わればいいが...。そんな訳ないだろうな。会談には大なり小なり駆け引きが起こるだろう。
部屋につくとあれこれ考えるのをやめ、シャワーを浴び、ベッドに入って就寝した。
次の日の朝、司令室に行くと案の定フィストがいた。
「会談の約束は取り付けられたか?」
「ああ。全勢力参加だ。会談の場所は中立都市のグレートウォールだ。それと一つお前はファンキーズを除く全ての勢力と面識がある。さらに実力もトップクラスだ。そういう訳で今回の会談の仲介役としてお前にも参加してもらう」
はい、面倒くさいのキターー!!!これは非常に厄介!仲介役とか1番しんどいやつじゃん。全勢力の顔色を伺わなきゃいけないじゃん。
でもここで断ると、会談がこじれそうな気もするし...。やっぱりやるしかないよな...。
フィストに参加の意思を伝えると、会談の日時を教えられた。明日の午後2時頃かららしい。胃がキリキリと痛んできた俺は早々に自室にこもって一日中精神統一をする事にした。
ーーー
ーー
ー
「えー、皆集まってるよな?準備がいいなら会談を始めたいんだが」
円を描くようにして並べられた椅子に座りながら、それぞれのリーダーの顔を見る。
ファンキーズのリーダーがこちらを睨んでいたが全員無言で頷いたので、早速会談を始めるとしようか。
「じゃあ、停戦条約の内容について協議するか。俺としては今後数年戦闘行為を停止、領地は戦争前に戻す、でいいと思うんだが」
最初に声をあげたのはファンキーズのリーダーだった。
「ちょっと待ちな、そもそもお前は誰だよ。てめえらはこいつの事知ってんのか」
その問いかけに対し全員が頷いたのを見てファンキーズのリーダーは、そっか、と小声で呟いていきなり涙目になった。
ええ...。ファンキーズって狂ってるて聞いたのになんか、リーダーはなんというか可哀想だな...。てかリーダーで大丈夫なんだろうか?
「確かに領地についてはそれでいいが、戦争を始めた勢力にはなんらかの罰が必要じゃないか?」
涙目のファンキーズのリーダーを無視してフィストが提案した。
それに対してガーディアンズのリーダー、長老が反論した。
「何を言うかと思えば。この戦争の元凶はお前らだろ?」
「ふざけるのもいい加減にしてくれ。俺たちは均衡をスケルトンズが破ったからだなー」
「何を仰いますか!我々は不潔なファンキーズ共が使徒様のタワーを奪おうとしたからそれを止めようとしただけです!」
「え、ちょっと待てよ。私たちはガーディアンズが攻めるって聞いたから...。後、綺麗だから!毎日体洗ってるから!」
「ほざけ!そもそもーー」
「なんだと!?じゃあーー」
はぁ、売り言葉に買い言葉。これじゃ会談は進まないぞ。てか誰だよファンキーズが狂ってるって言ったやつ。リーダーいたって普通の女性じゃん。
とにかく会談を再開させないと。そのための仲介役だしな。
「おいっ!」
部屋に響いたその声は俺のものではなかった。皆が呆気にとられた。なぜならその声の主は部屋に突然入ってきた、ラースだったからだそして次の言葉は
「ホープが来るぞ!」だった。




