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ホープ

 眼が覚めるとそこは牢屋だった。

 あー、痛い。頭が痛い!絶対あのガスだ。てかここどこ?3人は一体どこに?しかも剣が無い!


 そんな事を考えていると柵の向こうから声を掛けられた。


「お目覚めかな?混乱するだろうが安心してくれ。じゃあいくつか質問しよう」


 そこにはメガネをかけ白衣を着た白髪の50代ほどの男性が椅子に座っていた。


「あんた誰だよ?ここはどこだ?一緒に居た3人は?」


「そう焦るな。質問に答えたらすぐにここから出してやるから」


 とりあえず今はこいつに従おう。満足してどっかに行ったら魔法を使ってここから出るとするか。


 男は胸ポケットからペンを取り出し、膝の上に置いてあったファイルから1枚の紙を取り出し、メモを始めた。


「今からする質問に、はい、か、いいえで答えてくれ。質問は3つだ。では1つ目、私が誰か分かるかな?」


「いいえ」


「ではホープという組織は知ってるかい?」


「いいえ」


「じゃあ最後、君はカイン、カイン・ラークであってるかな?」


「は...はい」


 なんでこのじじいは俺の名前を知ってるんだ?それに今までの質問もどれも意味が分からない。


 男は紙に何かをメモし終えると、順調、順調と呟きながらどこかへ行ってしまった。


 もう大丈夫だろうか?それじゃあ早速ここから逃げるとするか。

 柵をどうやって壊そう?取り敢えず最大火力のファイア出して、無理そうなら違うのを試してみるか。


 そうして手を掲げ、ファイアと小さく呟いた。だが何故かファイアが出なかった。


 どうしてだ?魔力切れ?いや、魔力切れならこんな風に立って居られないはずだ。

 一体どういう事か、考えを巡らせていると部屋の中にあるモニターが突然点いた。

 画面にはハートマークが映されていた。


「あなたがカインさんで宜しいのでしょうか?」


 モニターに内蔵されているスピーカーから女性の声が聞こえてきた。


「そうだけど...そっちは一体何者だ?」


「失礼いたしました。私はAIのラブと言う物です」


 AI?つまりここは高度な技術を持っていると言う事か?


「その、疑問が多すぎて頭の整理がつかないんだが。取り敢えずお前の事を詳しく教えてくれないか?」


「宜しいですが時間がありません。質問はこれ以降受けつけず素早く話させていただきます」


 質問を受けつけないって...本当に大丈夫かな?


「私は、カイン様にとって分かるよう申し上げると、ラス様の御両親によって秘密裏に製作されたAIです。私が存在する目的はいつかここにラス様が連れてこられてしまった時、お助けをする為です」


 ラスの両親!?それに今の言い様だとラスもここに居るってことか!


「話は変わりますが先ほどの男はここ、ホープのリーダーであるフューチャーという者です。奴は一見すると人のいい科学者の様に見えますが、その実奴はいかれた考えを持った男です。ホープに属していない人間はみな、下等種族で根絶やしにするべきだと考えているのです」


 は?説明を聞いてるはずなのに余計頭が混乱してきた。ホープ?フューチャー?下等種族?なんだよ。


「ホープは、選ばれし人間の集まりだと彼らは言っていますが、実際は金や権力に物をいわせてパンデミックを生き残った人たちの子孫です。それでラス様をお助けする話に戻りますが、ラス様をお助けするには私だけでは不可能です。なのでカイン様に手伝っていただきます」


 あー、とにかくラスはここに居る。なら助けるだけだ。きっとレントやレッド達も同じ所か近くに居るだろう。


「それでは早速....お待ち下さい、誰か来ます」


 それだけ言い残すとモニターは切れてしまった。

 

 コツ、コツ、コツ。


 誰かが近づいてくる音がする。何事もなかったかの様に床に座って誰かが来るのを待つ。


 しばらくすると、よう、と声をかけられた。声の主はガスマスクで顔を隠していた。

 がボイスチェンジャーを使った様な特徴的な声、そして肌がピリピリするほどの圧。こいつは完璧にファイアーマンだ。


「久しぶりだな。勿論俺が誰か分かってるよな。驚くかもしれないが俺はお前に感謝してるんだ。お前が生まれてなきゃ俺は自分の目的を諦めなくちゃならなかった。ありがとよ。ま、残念ながらお前は俺とこうして話してる記憶すら忘れちまうんだけどな」


 はぁ?相変わらず何を言ってんのか意味が分からん。


「お前は一体何を知ってるんだ。大体お前は誰なんだ?女神、じゃなくてエンジェルとなんの関係がある?」


 ファイアーマンは変わらず腕を組んだままこちらを見ている。


「それに答える義務はないな。そんな事よりお前ここから逃げる気だろ?その前に1つだけ考えてみろ。お前は本当に前の世界の事を覚えているのか?」


 そう言って奴はどこかへと消えた。


 奴は俺が転移して来たって知ってるのか?


 前の世界の事?覚えてるに決まってるさ。俺は知らない間に勇者になって、それでそんな世界に飽きて....待て。

 俺はどうやって勇者になった?そもそもなんで前の世界に来たんだ?そんなはず....


 再びモニターが点き、ハートマークが映し出される。


「カイン様時間がありません。一刻も早くお嬢様を助けていただかないと。今扉を開けますので。扉が開いた後も私が点在するモニターで誘導しますのでご安心を」


「待ってくれ!ここから出るのは大賛成だが、武器もないのにどうしろっていうんだ」


「ご安心下さい。武器は牢屋を出てすぐ右の箱の中に入っております。それと魔法の方も私と協力者の方で使える様にします。これ以上会話をするほどの時間はありません。では扉を開けます」


 魔法を知ってる!?それに協力者って誰だよ!?くそっ!他に道はないか。


 扉が開くとラブに言われた通り右の箱から剣を取り出す。どうやら傷もなく使えそうだ。

 壁には牢屋にあったものと同じ様なモニターが一定間隔で設置されている。


「ではそのまま左に進み突き当たりを右へ。その先には警備が2人居ます」


「はあ...しゃあねえ。行くか!」


 突き当たりを右に曲がると確かに警備が2人いた。2人ともこっちを見ているが、何が起こったのかを悟らせる間も無く2人を斬る。

 この装備は見た事がある。確か...マグマ発電所の時だ。あの時の奴らはホープの兵士だったのか。


 その後もラブに指示に従い廊下を進んで行く。すると1つの牢屋の前で止まった。

 そこにはラスがいた。扉が急に開く。おそらくラブが開けたんだろう。ラスがこっちに気づきやって来る。


「カイン!やっとーーモゴッ!」


 大声を出さない様にラスの口を押さえ、静かにする様嗜める。


「一体、タワーで何があったんだ?レントはどこに?」


「え...えと。タワーでここの兵士達に捕まったんだよ。それでここまで連れてこられて、なんの説明も無くだよ!レントとは別々になっちゃうし...」


 レントは別のところか。ラブなら居場所を知ってるかも。


「おい、ラブ。レントっていう奴が何処にいるか分からないか?そうだ、レッド達もだ」


「その件については心配ご無用です。なので引き続き私の指示に従って下さい。反論は認めませんので」


「ねえ、ラブって誰?何処にいるの?」


「仲間だよ。そこのモニターの奴さ」


 ラスがモニターをじっと見て首をかしげた。


 チッ。仕方ないか。ここの事をよく知ってるのはラブだけだ。


「俺の後ろにぴったりついて来い。今度は決して離れたりしないからな」


 そう言うと、ラスは無言で頷いた。




 途中兵士を何人か倒しながら、ラブの指示通り進むと、四角い棺みたいな物がたくさんある場所に着いた。


「その四角い物は脱出用ポッドです。それぞれ1人しか乗れませんのでご注意を。お2人にはそれに乗って脱出していただきます」


「脱出用ポッド?って事はここは地上じゃないのか?」


「ええ。ここは空に浮かぶ街ですので。早く乗って下さい、できる限りお2人が近くなる様な場所に着陸させますので」


 空に浮かぶ街!?どんなトンデモ技術だよ!?


「待ってよ!レントは!?置いていけないよ!」


「大丈夫です。彼もこちらに向かっているので。お2人は早くご搭乗ください」


「そんなのダメだよ!カインもそう思うでしょ!」


 ラスがこちらを今にも泣き出しそうな顔で見ている。ラブからは無言の圧力を感じる。俺は...俺はどうすればいい?


 ふと自分の娘の事を思い出した。ラスを見ているとつい娘に重ね合わせてしまう。


 どうすればいいか分からず思考が停止していると、突然ブザー音がけたたましく鳴り響いた。

 そこでようやく我に返る。ここで俺が取るべき行動は...


 こちらを見つめるラスを無理やりポッドに乗せる。


「やめてよ!レントを置いて行くの!?信じらんないよ!仲間じゃなかったの!?」


 ラスが喚き散らすがひたすら無言でポッドに詰め込み、扉を閉める。


「ラブ...頼んだぞ」


「ええ」


 ポッドの中から扉を叩くラスを横目に自分もポッドに乗り、ベルトをする。


俺は...俺には、2度も子供を死なす事は出来ない。

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