新たな世界
説明が多いです。
すいません!
「ハアッ...ハアッ...ハァ」
カインは転生に成功した...無事かどうかは別として。
(どうなってる?身体が動かない!あの女神め!相変わらず転生が雑だ!)
「聞こえていますよー。全く私の転生が雑ですって?聞き捨てなりませんが今は置いておきましょうね〜ですが...おかしいですね。私はちゃんと一番安全な町に送ったんですけどね〜」
「じゃあなんでこんな事に?しかも...ここはひどい場所だな」
カインの言う通り周りには倒壊した建物ばかり。
唯一変わらないものといえば青空ぐらいだ。
「何故でしょうね〜まあ私としては楽しいのでいいのですが...ブフッ」
(笑いが隠せていないぞ)
「おやおや、誰か来たようですね。それではまた、斗真様」
(あいつ名前で呼んだ上に逃げたな)
「こっちだ!皆来てくれ!」
「今行く!」
カインを取り囲むように続々と手作りの銃を持った男が現れる。
「何故こいつはこんな格好をしているんだ?」
眼帯をした禿げ頭の男が言うと横の義眼の男が言った。
「こいつはきっとファンキーズの仲間だ!殺そう!今すぐ殺そう!」
(おいおいまじか。転生して10分も満たずに死ぬのはごめんだ)
カインは弁明をするために口を開いた...が本当に口を開いただけだった。
(喋れない?!どうなってる!このままじゃ本当に死んでしまう!)
義眼の男が引き金に指をかけたその瞬間。
「そいつは生けどりだ。長老からの命令だ」
「でもこいつはきっと--」
「長老の、命令だ」
眼帯男は突然出てきた男に小さく悪態をつきながらカインに近づいた。
(助かった...みたいだな)
「いい夢を!」ドゴッ
カインの意識は消えた。
(くそッ!一体何だ!ここはどこだ!駄目だ。冷静になれ)
カインが目をさますと周りに居た警備兵がカインに銃口を向けた。
「お目覚めか?客人」
カインの目の前にある玉座に座っている肌の青い男がカインに語りかけた。
「お前はどこから来た?」
(ふむ。逃亡は不可能か。本当のことを言う方がいいだろうな)
「俺はカイン・ラークだ。ギリツ国からやって来た」
青い男の眉が微かに動いた。
「ギリツ国?そんな訳...だがもしや」
青い男は少々混乱しているようだ。
「信じてくれ。本当だ」
(頼む頼む!死にたくはない!)
「だがそれは...あるいは?いいだろう。信じよう。縄を解け!」
カインの背後にいた男が慣れた手つきで縄を解いた。
(どうやら信じてもらえたみたいだな)
「おい長老!あんた気は確かか!こいつはきっとファンキーズの仲間だ!どうなっても俺は知らんからな!」
義眼の男は怒りを振りまきながら部屋から出て行った。
「すまん。奴は排他的な奴でな。根はいい奴だ」
「いえ、構いません」
(殺されかけたがな)
「一つお願いしてもよろしいでしょうか?この世界の事を教えて下さい」
「いいだろう。それではーー」
(どうやらあの"長老"によるとこの世界は突然発生したウイルスによって荒廃した世界らしい。そのウイルスによって様々な生き物が変異したり、人間同士で争ったりしているようだ)
「ありがとうございました。ですが一つ質問があります。何故あなたは私の国を知っていたのですか?」
(そうだ。ここは異世界のはず。俺のいた世界の国を知っているのはおかしい)
「そうだな。それではまず私の話をしよう。確かーー」
(長老が俺の国を知っていた理由が分かった。どうやら長老はウイルスに感染した事で、ブルーマンという寿命や病気で死ぬ事はない生物になったらしい。それで長老はウイルスが発生した当初から今まで何千年と生き延びてきたらしい)
(だがこれではおかしい。これじゃまるで今いる世界が俺のいた世界の未来であるかのようだ)
カインが考えを巡らせていると長老が話しかけてきた。
「まあとにかく今日はもう遅い。宿に行って休んでくれ。また明日話し合おう」
カインは長老に促され建物を出た。
(やれやれ困った事になったな。まあ以外と面白いかもしれないし、頑張るか)
建物の外には町が広がっていた。
そして眼下には川が流れていた。
(どうやらここは橋の上に作られた町のようだな。とりあえず宿に行くか)
どんな世界にも酒場というものは存在する。
そしてこの世界の場合は酒場が宿にもなっている。
「おい、あいつだよ。ほら、例の!」
「あいつが?まあ確かに見えなくはないが」
(どうやら俺は住民の注目の的のようだ)
カインは住民からの好奇の目を気にせず酒場へと入った。
「ああ、あなたがカインさんですね」
どこにでもいそうな普通の店員が話しかけてきた...四肢が機械であることを除いては。
「どうして俺がカインだとすぐ分かった?」
カインが尋ねると店員は笑いながら答えた。
「そりゃあ当然ですよ。あんたみたいな格好をする奴はそうそういないですから」
(確かに。俺の格好は前の世界のままだが、これじゃ俺はピエロだな)
「それで今日はもうお休みに?それともなんか飲みます?今日だけ奢りますよ」
「本当に?じゃあ何杯かもらおうかな」
(こりゃ思いがけないただ酒だぜ!)
「ところであんたは本当にファンキーズじゃないのかい?」
「俺か?そのファンキーズとやらは知らんがそいつらの仲間ではないな」
(またファンキーズか。明日長老に聞こう)
「そりゃあ世間知らずな人ですね」
「すいませーん」
「他のお客さんに呼ばれているのでまた後で」
そういうと店員はニンマリ笑いながら他の客のとこへ走って行った。
(なかなかいい店だな)
「なあ、聞いたか?ファイアーマンの話」
後ろのテーブルに座っている男が前に座っている男に話しかける。
「ああ、ファイアーマンねー。あんなの子供をしつけるための嘘だろ?」
「俺もそう思ってたんだけどよ、見たんだよ。この目で!」
男は目を見開き身体を乗り出して話を続けた。
「それは俺がスカベンジャーとして夜歩いてたんだけどよ、急に路地から人の叫び声が聞こえたんだ!それで何事かと思ってみたら身体全身が真っ赤に燃えている男がファンキーズを殺してたんだ!俺はそれを見て一目散に逃げたんだ」
「おいおい、冗談は止めてくれ。酒の飲みすぎじゃないか?」
「でも本当にーー」
(ファイアーマンか、安直な名前だな。そろそろ眠くなってきたし寝るとするか)
「すまん!俺の部屋は?」
「二階に上がって左の突き当たりです!」
「どうも!」
「疲れた」
カインはそう呟くとベッドに倒れこんだ。
(結局この世界は未来なのか?)
そんな事を考える内にカインは眠りに落ちた。