アルマジロ?
「どーしたんですかカインさん!さっきからぼーっと空を見て」
さっきまでトイレに行っていたレントが帰ってきて俺の肩を叩いた。
「少し考え事をな。ファイアーマンがめがみ、じゃなくてエンジェルに言ってた事が気になってるんだ」
レントが俺の横に腰を下ろす。
「契約がどうとかいう話ですか?でもカインさんには関係無いんじゃないんですか。それよりも僕はあいつがどうやって燃えてるのかを聞きたいですよ」
確かにそうだな、そう呟いてまた空を見上げる。俺は疲れてんのか?
最近変な夢もよく見るようになった。
何より俺が今まで話してた女神様は一体...
「そろそろ寝たらどうです?明日も長い距離を歩く事になりますよ。それじゃあ僕は寝ますね」
レントはテントに入っていった。
そうだな、考え事なんて俺らしくないな。
火を消し自分も寝る事にした。
ーーー
ーー
ー
「そーれで、ここがセントラルタワーでいいんだよな?」
ゆうに200階はあるであろうビルを見上げる。
「そうですね、このタワーの中には街があるって噂ですが本当でしょうか?」
「嘘じゃないかな?だってタワーの中には化物がいっぱいなんでしょ。それにこんなとこじゃ交易もできないし」
ラスの言う事は最もだ。
仮に化物から生活必需品が得られるとして、どうしてこんな所に住んでる?
他にも住める街は十分あるはずだ。しかも便利な街が。
なんにせよタワーに入らなければ何も分からないな。
「もう一回確認しましょう。食料、弾薬等は十分ありますね。化物が出てきた場合カインさんが前衛、僕は後ろからカインさんを援護、ラスちゃんは一番安全な僕とカインさんの間からできる限りの援護と言う事ですね」
俺とラスは同時に頷く。
レントによる念密な計画がタワーに入る前に説明された。
他にも1日何階進むだとか、食料はどれだけ使うだとかも再度確認した。
当然だ。200階はあるんだ、ろくな計画も立てずに進めば途中で物資が無くなって死ぬのが目に見える。
レントの説明を耳にたんこぶができるほど聞いてから俺たちはタワーへと足を踏み入れた。
タワーの中は外見に反してダンジョンのようになっていた。
上の階に繋がっている階段の位置はランダムのようだ。
何事もなく五階に到達した時ようやく、化物ーーほとんどがグレーマンだがたまに頭が三つに割れた犬だとか変な奴もいたーーが現れ始めた。
「これぐらいならまだまだ楽勝だな」
グレーマンを切り捨てながら話しかける。
「まあまだまだ二桁も行ってませんからね。こっからが本番だと思いますよ」
「でも200階も登るのかぁ〜」
ラスがいかにもだるそうに大きなため息をつく。
「仕方ないだろう。俺たちにはここしか手がかりがないんだ」
お子ちゃまには困ったもんだ。
1日目は15階まで進む事が出来た。
まだまだ序盤ではあるがいいペースじゃなかろうか?
ちなみに寝る時はどうしているかと言うと、ダンジョンの中にテントを立ててそこで寝ている。
化物に襲われるんじゃないかと思うだろうがセンサーがある上に、2人には内緒でテントの周辺に魔法による障壁を展開しているので心配ない。
「なあレント。ここって本当にセントラルタワーだよな?俺が聞いた話じゃセントラルタワーを登る事が出来るのはそうそういないって聞いたんだが、俺達全然苦労してないよな」
テントの中からレントに質問する。
「序盤ってのもあるんでしょうけど何よりカインさんとの相性がいいんですよ。こんな狭い所じゃ銃よりカインさんみたいな近接武器の方がいいんですよ」
そういえば当たり前の様に受け入れてたけどなんでセントラルタワーっていろんな勢力が欲しがるんだ?
「あとさぁ、なんでみんなセントラルタワーを狙ってんの?」
「それはですね、ここらで1番高い建物だからですよ。つまりここを制圧して監視所にしてしまえば、他の勢力の動きを逐一観察できるってわけですよ」
なるほどね、高き場所を制したものが戦いを制す、か。
タワー突入2日目は20階まで進む事が出来た。
だがいよいよグレーマンの数が増えてきて進むスピードが遅くなって行った。
そのあと5日が過ぎ8日目にしてようやく49階に到達した。
「これでやっと4分の1?....本当に最上階まで行けるの?」
「あはは....そ、それでも単純計算をしたら32日目ぐらいには着くはずだよ」
2人の会話を聞きながら周囲に気を配る。すると前方になんらかの気配を察知した。数は1つ。
「2人とも待て、前に何か居るぞ。恐らく1体だけだが念のために準備しとけ」
俺の言葉を合図に2人ともお喋りをやめる。
さあ何が出てくるんだ?グレーマンは数が多いだけで歯ごたえは無かったからな。
ドスン!ドスン!ドスン!
前方からの大きな音がだんだんと接近してくる。まず最初に暗闇から出てきたのは小さな頭。トカゲのような、いわゆる爬虫類の様な頭だ。
次に見えてきたのは小さい頭とはあまりにも不釣り合いな巨大な鱗を持った体だった。
これはなんと言うか....まるでアルマジロだな。あー....待ってくれ。まさか本当にアルマジロみたいに丸まったりしないよな?
多分あいつが丸まったとしたら、道幅とぴったりのサイズに違いない。頼むから俺の勘違いであってくれ。
「カインさん、まずいですよ。あいつはボールって言って名前の通り丸まるんですよ」
ああレント....その言葉だけは聞きたく無かった...
カイン達が後ずさりすると、ボールも一歩ずつ前に進んでくる。
痺れを切らし始めたのか、ボールが体を動かし始めた。
「やばいよな...あれって多分丸まってるよな。よし!急いで走れ!」
一斉に3人が来た道を猛ダッシュで引き返していく。
策は一応ある。通用するかは別だけどな。
カインは逃げながら魔法で鉄製の壁を通路に作っていった。それを見た2人はかなり驚いていたがタワーの仕掛けと勘違いしたのか俺には何も言ってこなかった。
鉄製の壁を20枚は作り、ようやく3人は立ち止まった。
「いやいやいや、タワーに助けられましたね」
「本当今だけはこのタワーがありがたいよ」
そんなレントとラスの希望を打ち砕く音が聞こえて来た。
ドガシャン!ドガン!ボゴン!
「ねえ、この音って幻聴だよね....」
「なら奇遇ですね、僕もおんなじ幻聴が聞こえるんですよ。ボールが壁をぶち壊してこっちに向かってくる音が...」
2人が首を震わせながら壁の方を見る。残念ながら音は確実に近づいているようだ。
いや....あれ結構硬くしたんだけど...鱗が鉄に打ち勝つってどんな世界だよここ....まあ予想はしてたけどな。
鉄製の壁から少し離れたところに立ち、剣を壁の方に向ける。
とりあえず魔法で剣の強度と切れ味高くしてっと。さあ後はあいつが突撃してくんのを待つだけだ。
後ろから、無茶だよ!とか、死ぬ気ですか!とか聞こえるけど気にしない気にしない。
さあ来い!
ドガン!
来た!感覚を最大限まで研ぎ澄まし、ボールの僅かな隙間に剣を突き刺す!
今までの壁のおかげか、力で無理やり押し返すだけでボールは止まった。死が急すぎたのかボールは体を丸めたまま死んだ。
「すごいじゃないですか!もちろん今までも凄いと思ってましたが改めて尊敬しますよ!」
レントの歓声に思わずニヤけてしまう。ラスはどうしたのかと思って見ると、言葉も出ず立ち尽くしていた。
結局その日はそのまま49階で8日目を終えた。その日の晩は丸まったボールをなんとか開き、レントによるボールの料理が晩飯となった。ちなみにボールの味だが、あの見た目に反してタコみたいな味だった。おかしいだろ...




