フィストと父
先の戦いが終わり、俺たちはヘリで帰還中だった。
ヘリの中でずっとあの時感じた虚しさは何か考えていたが結局分からなかった。
それと一つ、フィストの発言が何やらおかしかった。
普通戦いが終わったら
「お疲れ!」
とか
「よくやった」
とかいう言葉をかけるのにフィストはなぜか
「この後も気をつけろ」
と言ってきた。一体何に気をつけるんだ?
そんなことを考えているとヘリが格納庫に到着したみたいだ。
だがヘリから降りてみると出発する時と少し雰囲気が違っていた。
出発する時は整備士がいただけなのに、今はまるで戦闘中かのように銃を持った兵士が走り回っている。
それに心なしか銃声が?
「無事ご帰還なされて何よりです」
アイスは既に基地に着いていたようで俺たちを、というよりはフィストを迎えにきたようだ。
「ああ。計画は?」
「既に賛同したもの達と共に実行中です」
計画?この聞こえてくる銃声と関係でも?
「なあフィスト。計画って一体なんだ?それに銃声が聞こえるぞ」
「ああ....じゃあ説明しよう。この基地での外から来た者への扱いについては既に話したな?」
「おう。奴隷同然って話だろ。だがそれが一体なんなんだ?」
「前も言ったように、奴隷扱いを促進してるのは俺の父であり、ラストソルジャーズのリーダーである男だ。つまり奴をリーダーの座から引きずり落とし俺が新しいリーダーになって扱いを改善したら...ここはもっと良くなるだろう」
「ってことはなんだ、これはクーデターか?」
「まあ、そんなとこだ。心配しなくてもお前達に手伝えとは言わん。だが見届けてくれないか?お前達よそ者が見届ける事に意味があるんだ!」
これはまた....
クーデターとは物騒な、だが実の父親にクーデターとは肝の据わった男だな。
正義を愛する青年か...俺にもそんな時期があったな。
「って事らしいが二人はどうしたい?俺は別に見るだけなら構わないと思ってるんだが」
「あたしは別にいいよ」
「僕も特に構いません。ですがクーデターですか。昔そんな任務もあったなぁ」
「という事で見るだけならいいぞ」
「感謝する。お前達に迷惑は掛けない」
俺達がクーデターを見届ける事に合意した後は、そのまま将軍のいる部屋まで向かった。
途中いくつかの場所で戦闘が起こっていたがどこもフィスト側が優勢だった。
まあそりゃそうだろう。作戦が終わってすぐクーデターなんて中々予想できない。
将軍の部屋の前に着いたが、どうやら扉の向こうは何かで押さえつけられているようだ。
どうするのかと考えていると一人の兵士が爆薬を扉に取り付け始めた。
その間にもフィスト側の兵士が続々とやって来た。
「爆発するぞ!」
いつの間にか準備が整ったようだ。
扉が吹き飛ばされると兵士達がすぐに部屋へと突入して行った。
それから銃声が止むまで30分ほど待った。
銃声が止むとフィスト達が部屋に入って行ったので俺達も後に続き部屋へと入った。
部屋はかなり広く学校にある体育館ぐらいのサイズだ。
中の様子は中々酷いものだった。兵士達の死体が勢力関係無しでそこら中に広がっていた。
どうやらここに居た相手の兵士は精鋭だったのだろう。普通の兵士と違い白を基調とし所々に黒のアクセントのある軍服を来ていた。
そして一番奥には縄に縛られた将軍が居た。
「フハハハハハ!いい度胸だなフィストォ!!父親に牙を剥くとはな!そんなに権力が欲しかったかのかぁ!ククククク!」
「ふざけるな!そんな下衆な目的の為ではない!俺の目的はここをもっと良い場所にする事だ!」
「どうやって?これ以上どうやって良くする?既にここに居る全員が利益を得ている!」
「ここに居る全員?ああ、そうだな。よそ者以外の"全員"がな!俺はそんな事許せない!皆平等であるべきだ!」
「本気で言っているのか?お前が未だにそんな甘い考えを持っていたとは残念だ。お前は奴らの本性を知らないからそんな事が言えるのさ!!.....なあフィスト、母さんがどうやって死んだか知りたいか?」
「なっ!...母さんは病気で死んだんだろう?」
「いーや違う。母さんはな!外から来た奴らに殺されたんだよ!昔俺はよそ者を受け入れていた。と言っても二週間だけ滞在を許可するだけだったが。だがある日一つのグループがやって来た。もちろん最初は優しく接したさ。だが奴らは二週間を過ぎても出て行かなかった」
この話長くなんのかなぁ。
「もちろん1日ぐらいなら許す。だが奴らは俺達が何もしないのを良い事にそのまま二ヶ月も居すわった。良い加減我慢の限界だった。力づくで出て行かせようとしたのさ。そしたら1日だけ待ってくれと言われた。勿論待ったさ。だがその日の夜奴らは俺達を暗殺しに来やがった!なんとか暗殺者を殺した。だが奴らは俺を襲う前に母さんを先に殺していたのさ!その時俺の希望は砕け散った。唯一残ったのは既に生まれていたお前だけだった」
「あ....そんな......う....う」
フィストはひどく狼狽えている。
まあそりゃそうか。
「だが...それでも!俺は信じる!世の中はそんな奴らだけじゃない!」
「そうか、残念だ。やれぇ!」
くそっ!味方に敵が紛れ込んでたのか!
フィストが撃たれる!こいつを今ここで死なせたくはない!命の恩人でもあるんだ!
自分が死ぬとかそういう事を考える前に身体が動き銃弾からフィストを庇った。
「ああ、くそっ...おい.....フィスト...頼んだ...」
ーーーー
ーーー
ーー
ー
記憶が蘇る。
またあの忌々しい記憶だ。
娘を俺の旅に連れて来てしまったあの記憶。
走馬灯のように思い出す。
ある日モンスターに襲われた時、ほんの一瞬だった。ほんの一瞬娘から離れてしまった。
気づいた頃には手遅れだった。
全身を斜めに鋭い爪で切り裂かれていた。
「大丈夫だよ」
そう一言だけ言うと娘は死んでしまった。
ーーー
ーー
ー
目が覚めた。不思議と意識ははっきりしている。
「どこここ」
俺はベッドの上に仰向けで寝ていた。
「あっ!!やっと起きたのカイン!皆を呼んでくる!」
そう言ってラスは部屋から走って出て行った。
ベッドから立ち上がり身体をほぐす。
だいぶ身体がほぐれて来た時レント、ラス、フィストが入って来た。
「生きてましたか。まあカインさんが死ぬわけ無いと思っていましたよ」
「カイン、本当にすまない。俺のミスだ。お前達に危険が及ぶ事は決して無いようにと思っていたのに。この通りだ」
そう言うとフィストは土下座をした。
この世界にも土下座の文化はあるのか。
ってそこまでしなくても...こいつクールに見えて結構熱血漢だな。
「いやまあ、そんな気にして無いからとりあえず、顔を上げてくれよ。それより今はどういう状況なんだ?」
「あの後まずは皆に俺がリーダーになった事を知らせた。新たな方針もいくつか出した。それで今はクーデターの後始末の途中だ」
「そうか。まあ成功して良かったな。あ、将軍はどうしたんだ?」
「父なら今は監獄に入れている。いつか父もわかってくれる日が来るだろう。そう信じている」
「そうだな。人は変われるはずだ。それでいきなりだがもう俺達は自由なのか?」
「もちろん。色々してくれたお礼に物資と何か一つなんでもしてやろう」
「そうだな、じゃあ高い技術を持ったやつもしくはラスの両親は知らないか?」
「ふーむ。その少女の両親かは知らんが何日か前に科学者の夫婦がやって来たな。確かアリーピーに行くと言っていた」
「科学者で夫婦か...ラス両親の仕事は?」
「えーと、それが仕事については全然話してくれなかったんだ」
「そうか...ところでどんな科学者だ?それとアリーピーって?」
「確か人工知能の科学者だとか言ってたな。なんでも誰かに追われてたんだとか。後は空がどうとか言ってたな。んでアリーピーってのはローチス山の中にある街だ。ってかアリーピーぐらい知ってるだろ?」
「あはは...ありがとう。じゃあもう行くよ。元気でやれよ」
去る時はクールに。それが俺の信条さ。
「ああ。お前達がまた来た時にはここをもっと良い所にしておく」
それぞれ握手を交わし準備をする。
ーーー
ーー
ー
来た時と同じようにモノレールに乗って移動する。
「今回は中々な冒険だったな」
「死にかけてたのに冒険で済ますの!?」
「まあまあそれがカインさんらしいよ」
この感じ、なんかいいなぁ。
ーーー
ーー
ー
モノレールが駅に着き、降りて、来た時の小部屋に俺達は今居る。
「俺達...わすれてたな」
「「ですね(うん)」」
扉の前にはまだグレーマンが沢山いた。
締まらないなぁ。
超久しぶりの投稿で話を忘れかけてました笑
これからもスローペースですが読んで頂けるのなら是非お待ちを




