第九話
予約を取っていたレストランでは、司さんと悠くんが頼んだ料理を争奪するようなこともあり、とても楽しかったが、周囲からの視線が痛く……とても恥ずかしく気づかれするものとなってしまった。
もうちょっとゆっくりとした時間をすごしたかったけれども、これは人選ミスといわざるを得ない。
疲れた身体をよいしょっと動かし、部屋まで戻る。
シャワーを浴び、ベッドに潜り込み。目を瞑る。
目を瞑ると今日の食事の風景が頭に浮かぶ。
その中でも印象に残ったのが、フレイヤの整備が決まって、私がフレイヤを見に来るまでの伝聞だけで聞いた私のイメージについてだった。
「ミサイルで未確認機を容赦なく撃ち落としたって聞いてたから、もっと怖そうな人かと思ってたんだよね。でも、実際会って見たらぜんぜんイメージと違って、今はこんな優しそうな人でも未確認機を落とさなくちゃいけない。そんな状況にも陥るんだなって思って。なおさら宇宙には出たくないなって思ったよ。」
アクアにももちろん、宇宙に出たいって思ってる人ばかりじゃないのは知っていたけれども、私が普段会う人は大体が宇宙に出たいと思ってる人ばかりだったので、面白い話を聞けたな。と思った。
悠くんは悠くんなりに考えて、宇宙に出たくないと結論を出したのだろう。
それに比べて私は……特に何も考えずに宇宙に出ている。
ダメだダメだ……こんなことを考えてたら、また何も出来なくなってしまう。
深く考えこむ前に今日は寝よう。
翌朝、私は司さんに連絡を入れる。
元々、有給休暇の消化を兼ねた休日であり、期間も3週間程設けられていたけれど、昨日悠くんに励ましていただいたことで、私の精神面はかなり回復していた。
「あー、うん。ぶっちゃけ楓ちゃんの気持ち次第でいーよー?探索でしょう?別に人が動かなければ動かないで、収入はないけど、推進剤の消費もないから費用もこれといって発生しないんだよねー……だからほんと、楓ちゃんの気持ちで!後、アレからちょくちょくと未踏査惑星の探索も始まってるから、収入は問題ないしね!」
気持ち次第でいいのか……未踏査惑星の探索、調査も始まっているっていうのは私も気になるけど……あの場所に行っても平静を保てるのだろうか……あの星で色々なことがあった。
「あ、後あの惑星、ロヴィーネって名前がついたよ~」
未踏査惑星にも名前がついたのか……1週間も何もしてないと……結構変わるんだなぁ……
「んー、それでは、後数日休ませていただいて、それから復帰させていただきますね?」
「了解したよー、復帰する時はまた連絡してねー。」
「はい。分かりました。ご迷惑をお掛けしてすみませんでした。」
「いやいやー、気にしないでー。それじゃー、ゆっくり休むんだよー。」
司さんへの通信を切り、今日からはニュースのチェックをきっちりやろう。そう決意した。
司さんへ連絡をした日から更に5日ほど休みをいただき、私は仕事に復帰した。
宇宙へ行くために着替えて装備を確認する。
耐Gスーツ……相変わらず慣れないなぁ……結構な期間……着るんだけど……こういうのはもっとスタイルがいい人が着るものなんじゃないかな……自分の貧相な身体に自信が持てず、そう思ってしまう。
「ふぅ。よし!復帰初日!頑張りますか!」
勢いよく部屋のドアを開け、離着陸場に向かう。
様々な人とすれ違う。すれ違った際に軽く会釈をして離着陸場へ一歩一歩着実に進んでいく。
離着陸場についたら、宇宙に出るための許可を取る。
「かーえーでちゃん!今日から復帰だね。ロヴィーネ、行ってみる?2週間くらい経ってるから結構調査は進んでるだろうけど。まだ発見はあると思うよー。」
「あ、司さん。今日から復帰しますので、またよろしくお願いいたします。」
許可申請の用紙の必要項目を埋めていると司さんに声をかけられるので、今日から復帰のことを改めて伝える。
「うん。こちらこそよろしくねー。」
簡単に会話を済ませ、私は申請用紙の記載に戻る。
用紙を記載したら、用紙を提出する。
20分程待ったら、許可が下りたので、フレイヤのハンガーへ向かう。
許可が下りた際、職員の人から以前のことは大丈夫か心配されたけれども、私はもう問題ないということを話した。
ハンガーに着くと、悠くんが居た。
「あ、楓さん。もう大丈夫なの?」
「はい。悠くんが話を聞いて、励ましてくれたので。もう平気ですよ。」
「俺は別に励ましたつもりはないんだけどね。まぁ、探索に行くなら、いい結果が出ることを祈ってるよ。」
「ありがとうございます。」
悠くんと少し話し、キャノピーを開け、フレイヤに乗り込む。
フレイヤのコクピットに着座すると、10日から2週間くらい離れていただけなのに……乗るのが1年ぶりくらいに感じた。