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第七話

 未確認機は跡形も無く、消し飛んだ。

 「あ……あ……」

 人を殺した……私の思考はそのことだけで塗りつぶされる。

 罪悪感に押しつぶされそうになる。

 あの時、ミサイルを撃たなければ……彼または彼女は死ななかったかもしれない……

 気がついたら、私はアクアに居た。

 どうやって帰ったのかはまったく分からない。

 どうしてここにいるのだろう……意図したことではないとはいえ、人を殺してしまった私が生きていていいのだろうか……

 色々な思考が次々と湧き上がり消えていく。

 人を殺したという罪悪感……自身への嫌悪感など、様々な感情に押しつぶされ……私は壊れかけていた……


 未踏査惑星に行き、未確認機を意図せず撃墜してしまった日から1週間が過ぎた……私は相変わらず部屋に篭っている。

 仕事のほうは「普段休んでないんだから、この機会に好きなだけ休んでもいいよ~」と(つかさ)さんに言われたような気がする。

 1週間という時間が私の心を現実に引き戻す。

 今では本当に休んでてもいいのだろうか……そう思える程度には回復したけれども、以前のように宇宙に行きたいという気持ちはなくなってしまった。

 「はぁ……このまま仕事……辞めちゃおうかな……」

 人を殺してしまったけれども、アレは正当防衛なのだから……(かえで)ちゃんが気に病む必要はないよ……と司さんと事情を話した人たちに言って貰えはしたけれど……人を殺してまで、探索をして、報酬を得るくらいなら私はすべてを諦めて……このまま宇宙に出なくてもいいかもしれない。

 ――部屋に篭ってると気持ちまで塞ぎがちになってよくないな。

 そう思った私は1週間ぶりに部屋から出た。


 ステーション内の居住区をふらふらーっと歩きながら、どこに行くかを考える。

 ステーション内には、レジャー施設など様々な施設があるので、どこに行くか本当に迷う。

 理由としては、外に出たとしても、現在の鬱屈とした感情は晴れないし、特にどこに行く気もなく、外に出ようと思ったから行動しただけだからだ。

 今も後悔している。

 どんな人かは分からないけれども……私が殺した人にも家族は居たはずだ……そのことを考えると……動けなくなる。

 起こってしまったことに『たられば』はないのだから……どんな形であれ、私は殺人を犯した者になってしまった。

 「はぁ……どうしてこうなっちゃったんだろ……」

 「どうしてこうなったか……よりもこれからどうするか。それを考えるほうがいいんじゃないの?」

 誰に言うでもなく、呟いた言葉に返答があり、私は声のしたほうを向く。

 「あなたは……?」

 「俺?俺のことなんかよりさ、おねーさんどうしたの?すっごい暗いよ?なんか、今にも泣きそうな顔してるね。」

 少し年下くらいの少年が居た。

 「ちょっとね……辛いことがあったんですよ。」

 素直に答えてしまった自分が居た。

 今の心が弱っている状況じゃなかったら、きっと、この少年の相手はしていないだろう。

 「私……1週間前に人を殺してしまったんですよ……故意に……ではないのですが……そのことについて、周りの人は皆、あの状況では仕方ない。とか君のせいじゃないって言うんですが……私があの時……撃たなければ……」

 年下の子に話を聞いていただいているうえに、泣いてしまう。

 後で冷静になったらとても恥ずかしい思いをするのだろう……でも涙が止まらず、あふれ出してきてしまう。

 止める方法も分からない。


 「つまり、おねーさんは人を殺してしまったことの罪悪感か何かに押しつぶされそうで、どうしようもなくて泣いてしまってるの?」

 「そう……ですね……人を殺してまで、私が生きている価値があるのか……とかそういうことを考えたくなくても考えてしまうんです。」

 「そうやって考えて、自分の中で答えが見つかるのなら、そうしていてもいいとは思うけど……そこで足を止めてしまって前に進めないのってもったいないと思うよ。俺は。」

 この少年なりに励ましてくれているのだろうか……そんな気遣いも私には分からなくなっていた。

 「まぁ、どうするのかっていうのはおねーさん次第だし、おねーさんの人生だから、俺にとやかくいうような権利はないかもだけど。俯いて下を向いたままでは何も変わらないよ。後、その撃たれた人も撃たれた結果、相手がこんなことになってたら死んでも死にきれないんじゃないかな。当事者じゃないから分からないけどね。」

 「はい……すみません……」

 少年と話を始めたら、司さんなどの親しい人には言えなかった感情があふれ出してきて……悩みを全部吐き出した結果、少し気が楽になった。

 「じゃあ、おねーさん。俺はもう行くけど、またなんかあったらこの辺に来たら悩みでも何でも聞いてやるよ。」

 少年は笑顔で手を振って、歩いていった。

 「あ、ありがとうございます。私、天音 楓といいます!また会えましたら何かお礼をさせてください。」

 「いーよいーよ。気にしないで!それじゃーまたなー。」

 少年が見えなくなるまで見送る。


 「あ、名前聞き忘れた……」

 少年がいなくなってから、名前を聞き忘れたことに気づいた。

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