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第六話

第六話です。12月15日に第五話の軌道修正を行っておりますので、更新後の五話を読んでいない場合は、五話から読んでいただいたほうがよろしいかと思います。

 現在、私たちはアクアに向けて宇宙を飛んでいる。

 「司さん、ありがとうございます。来てくれなかったら……多分ですが、私は今ここにいないんじゃないか……そう思います。」

 ブリュンヒルデに通信を入れ、改めて司さんにお礼を伝える。

 「あ、あぁ……いや、(かえで)ちゃんが無事で良かったよ。うん。間に合ってよかった……」

 いつもの司さんとは違う……いたってまじめな感じの言葉が返ってくる。

 何かあったのだろうか……つい考えてしまう。

 考え事をすると他のことへの集中力が全てシャットアウトされてしまうのは私の悪い癖だ。

 「……えでちゃん!楓ちゃん!聞こえてる!?レーダー見て!」

 司さんの叫びとも言えない言葉に現実に引き戻される。

 「えっ……?(つかさ)さんどうかしま……」

 言葉の途中でフレイヤが横から巨大なハンマーに殴られたかのような衝撃を受け、制御が出来なくなる。

 くるくるくるくると機体が回転し、衝撃による推進力が働くままに、流される。

 機体の制御を行うため、フレイヤに搭載された推力偏向ノズルで機体の回転と逆方向にジェット噴射をおこなう。

 「楓ちゃん無事かい!?」

 四苦八苦しながら、機体の制御を戻したところで、司さんから通信が入る。

 「はい!私は大丈夫です!司さん!何があったんですか!?」

 何が起こったか、皆目見当もつかないため、司さんに尋ねる。

 「未確認機(アンノウン)1!背後から接近してきて躊躇無くミサイルを撃ってきた!その未確認機はそっちに行った!」

 未確認機が1機……こっちに向かってるようだ……このままだと間違いなく、戦闘になるだろう……なにせ、相手は躊躇無く搭載武装をぶっ放してくるような輩だ……話し合いなんて夢のまた夢でしかない。

 アクアを正面に見据え、速度を落とし、未確認機が来るのを待ち構える。

 勤めて冷静であろうと努力するけれども、内心は有り得ないくらい焦っていた。

 「つつつ……司さん!どうすればいいですか!?私……戦闘機同士の戦闘なんて初めてですよ!何も分かりません助けてくださいぃぃぃ……」

 慌てて凄く情けない声を出してしまう……パニックになりかけている。

 「楓ちゃん、パニックになっちゃいけない。落ち着いて、深呼吸するんだ。落ち着いたら、訓練を思い出してみるといいかもねぇ……誰だって最初は初めてなんだから。なるようにしかならないよ。まぁ、ちょっと距離を空けられちゃったけど僕も追いかけてるから、僕が行くまで逃げ回っててもいいから。無理だけはしないで!」

 「ひぃっ……」

 もうこの状況が無理なんですよぉぉぉぉ!声に出さず、心の中で叫ぶ。

 「ふぅ……焦っても仕方がないんです。気合を入れろ!私!」

 ヘルメットを外し、頬を思い切り叩き、気合を入れ、再度ヘルメットを着ける。

 レーダーを凝視する。

 レーダーの隅っこに未確認機を示す光点が表示され、徐々に近づいている。

 光点の速度から、未確認機の速度を計算し、未確認機の現時点の速度とフレイヤの最高速度の差を求める。

 未確認機の速度マッハ15……これが最高速度とは思えないけれども、現時点で最高速度マッハ30なので、最高速度で逃げれば引き離せるだろう……引き離したところで、問題を先延ばしするだけであり、未確認機がマッハ30以上の速度を出せる機体だったら……追いつかれて機銃掃射などで、結局は蜂の巣だ。

 私は徐々にフレイヤの速度を上げてく、アクアを正面に見据えているため、このままだと未確認機に背後を取られるような状況になる……背後を取られるのは避けたいし、どう足掻いても打開したい。

 フレイヤの速度をマッハ14で維持する。

 未確認機の速度と現在のフレイヤの速度から、ミサイルロック範囲に入るまで残り10秒くらいと判断し、私はカウントを始める。

 「5……4……3……2……1……」

 ここだ!フレイヤの速度を落としながら、進行方向を上方へ変更し、そのまま宙返り――真空のため、軌道だけだけれども――を行う。

 未確認機が先ほどまで居たところを通過する。

 宙返りを終えたと同時にフレイヤを加速させる。

 私は未確認機の背後を取っていた。

 「投降してください!あなたの機体は既に、ロックしてます!」

 未確認機に向けて通信を行う、返答は期待していないといえば嘘になるけれども、形式のようなものなので、無くても構わない。

 「投降する気がないのであれば……交戦し、最悪の場合はあなたの命を奪います!」

 未確認機に向け、再度通信を行う。

 うぅ……出来ることなら命を奪いたくない……命は一つしかなく、失ったら全て終わりなのだから……そんな悲しい結末は迎えたくない。

 未確認機が加速した。

 突然のことだったので、フレイヤと未確認機の距離が少し空く、引き離されないように私も加速する。

 空いた距離を利用し、未確認機が反転する。

 軸をずらした平行な軌道で未確認機が近づく……やられた!

 そう感じ、焦った私は未確認機の進路上にミサイルを撃っていた。

 「あっ……」

 撃ってから後悔した……このままの軌道だと、ミサイルは未確認機と直撃してしまう……いやだ……いや……お願い……避けて……頭がぐちゃぐちゃになる……未確認機とミサイルが徐々に近づき……接触した。

 眩い閃光が一瞬煌き……ミサイルと接触した未確認機は跡形もなくなっていた。

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