序章 08 気分屋でなんでもお見通し
開口一番、やっとしゃべったかと思うと、いきなし僕への罵倒が始まった。
しかし、どの言葉も今の状況になっていなかった。僕の数学の悪口、僕の英語の悪口、僕の物理の悪口、…僕の勉強の悪さに対する悪口しか言わなかった。それに、君の言葉には強い意志が感じなかった。いつもの言葉にあるように、僕を不幸にしてやろうという、意志が弱かった。
「楽しそうにお話しているとこ、悪いのだけど、僕もあなたと少し話がしたい」
アイアスが名指したのは、君だった。
「それは、此処に来る前にグラウンドで言っていた、『長くなる話』というやつかな?」
「うん。流石に覚えているよね。よかった」
「私をそこの、変態と一緒にしないでくれ」
「ちょっと待て、その言い方だと俺はさも、忘れていたかのようじゃないか」
「忘れていただろ」
「忘れてない」
「じゃあ、私の目を見ていってみろ」
「…」
「…」
「僕は、忘れていました」
読心術なんて卑怯だ。
「…、私もそう思っている」
僕はなんて考え足らずな事考えたのだろう。今君の目の前では、隠し事は一切出来ないことは明白に分かっていた。考えた事はすぐに伝わる事もだ。しかし、考えないようにする事は僕にだって出来たはずだ。ほんのついさっき、君の辛さを知ったはずなのに、僕は、なんて馬鹿な事
「をぉぉぉぉ?」
「なんだ?さっきからうるさいぞ」
君はアイアスのサンドウィッチを頬張っていた。
「え?ちょっと、なんで、落ち込んでたんじゃあ」
「馬鹿だな。どうして私が落ち込む。私の悩みは解決されたと言っただろう」
「人の考えを簡単に読めてしまうのは嫌だとか、言っていたから。せめて僕は君の前では傷つく言葉は考えないようにしようって」
「もし、たとえ君がそう出来たとしても、君以外の人間がこの世にうじゃうじゃといる限り、君一人がどう頑張ったところで変わったりしないのさ」
君はそう言い捨てて、サンドウィッチを完食した。
「それとも君は、私のために、全世界を変える気があったのかな?」
君は、さも願いが叶ったかのように、嬉しそうに笑った。僕には、その意図が分からない。
「意図か?たいしたことはないよ。簡単に言えば、嬉しいのさ。今の私になって、君みたいに私のことを想ってくれる人が居る事が嬉しい」
君は穏やかに笑っていた。
「すまない、アイアス。さぁ、『長くなる話』とやらを、始めようか」
「うん、そうだね」
アイアスは一呼吸置いて、僕達に話し始めた。




