急章 21 終
「あ、翠さん。起きたんだね。おはよう」
「おはよう。ねぇ…、これってどういうこと」
自宅に戻った僕に待っていたのは、出る前に書き残したメモを掲げた君だった。
目が覚めてしばらくが経っていたようで、服は着替えていて、シャワーも浴びた後の様だ。
「私の事、過小評価しすぎてない?」
君が言っている事はメモに書かれた、僕から君へのメッセージの事だ。そこにはこう書いてある。
〝目が覚めて、もしも今いる状況がすぐに分かっていたなら、僕の戻りを待ってくれると嬉しいです。君の事の全てを話すのが僕の義務だと思います。そうでなければ、話すことは何もないと思います。僕と別れるようにしましょう。君を守れなかった僕には、君と一緒にいる資格はないみたいです〟
君はどかどかと玄関にいる僕のもとに寄ってきて雑に、いかにも雑に僕の襟をつかみ引き寄せた。
唇が重なって、ぐっと息が止まっていた。
「たかが一回死んだくらいで、君の事が嫌いになるとでも?別れたいと思うとでも?そんなことになる訳がないじゃない」
泣いてる君を見るのは久しぶりだ。君がぐっと握りしめているメモを抜き取り、僕はびりびりと破り捨てた。
僕は君を過小評価していたんだろうか。いや、きっとそうじゃない。信じ切れていなかっただけだ。これを知ることが出来ただけでも、今回は上出来だと思えるな。
それはそうと、うん。やっぱり前歯が痛いよ。慣れないことはするもんじゃないね。




