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僕が綴る物語  作者: ハルハル
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序章 05 悪魔という青年


「待っていましたよ」


 校庭に居る男に僕は会った事がなかった。しかしあったことがないはずなのに、どこかその男に親しみを感じた。まるでこれまでもずっと居たような感覚を得た。


 パーカーとジーパンの簡単な服装。黒く男にしては長い髪と白い肌はまたしても病弱そうなイメージを誘った。薄笑いが不気味だ。

「親しみを持つのもおかしくはないだろう。奴は悪魔で、私達人間とは違うのだ。何があってもおかしいことはない」

 驚いて君を見ると、君の両目はあの男に固定されていて、僕には振り向いても居なかった。ネクタイからも手を離し、両手を下げてはいるが、何にも対応できる風だった。しかしそれよりも驚いたことは、


「180度は視野のうちなのか」

 この状態で読心術が発動している事にだった。


「よかったです。手紙はきちんと届いたようですね」

 男は僕らの目の前に居た。目の(・・・)にだ。僕らがあの男を確認したとき男はまだ校庭の真ん中に居た。なのに僕が君のほうに向いている一瞬の間に百メートル強はある距離を詰めた。時間にしてわずか一秒ほどだったはずだ。

「て、手紙って?」

 僕はやっとのことで一言話せた。

「今朝方私のところに手紙があったんだ。文面は〝二十時に城西高校の校庭にて死の悪魔が待つ〟だ。気味が悪いほど真っ黒な紙に白い字だったよ」

「そうです。それは僕が送りました」

「そして、タイミングを計ったかのように君が私に話しかけてきたんだ。君はついてるよ」


 本当、僕はタイミングがよすぎるみたいだ。こんな事に巻き込まれるなんてついてるよ。

「それで、私に一体何の用なんだ?」

「用って、そんな聞かなくても分かっているでしょう」

「そうだね。悪魔が目の前にいるんだ。何もないほうかおかしい!」


 君は目の前の男に向かって腕を突き刺した。手刀のように右手を固めて、胸めがけて突き出した。そこから僕の目の映ったのは手刀が命中する前に男は消えた事と、君の手は丁度男が居たとすれば心臓の位置で止まっていることだった。

「見事な手刀ですね。殺意がひしひしと感じられる。

 いいでしょう。戦争です。この僕、アイアスがあなたの相手をしましょう」

 アイアスと名乗った男は、僕らが最初に来たときと同じ、校庭の真ん中に立っていた。

「ここに一緒に来てくれた事、本当にありがとう。君には感謝している。此処で見ていてくれ」


 君は校庭の中心へと向かう。


「翠さん!」

 君が数歩歩みだしてから声をかけた。

「僕は君のことをまだ全然知らない。だから僕は勝手に君の物語を書き続けるよ…。一人で書くのなんて、僕はいやだ。ここで、待ってるから」


 君はふっと軽く微笑んだ。


「ありがとう、君でよかった。

 行くぞ!アイアス!」

 地面を踏みしめ、脚力を全開に使って君はアイアスの元に一気に飛んだ。


「……あれ、手刀が通り抜けなかったら突き指してたんじゃ、いや、もう考えない様にしよう」




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