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僕が綴る物語  作者: ハルハル
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急章 15 覚悟


 二日目ともなると、君の体はほぼ全快していた。今朝もすみれ達を送ると足繁く図書館へ向かった。道中、僕らが交えた会話といえば昨日調べた妖怪たちのことだった。しかもつらつらと暗記している様で、一方的に僕にその知識を送り込んでくる。

図書館に着いたところでそれは終わったが、今度はまったく会話が無くなってしまった。公共の場所だから静かにするのは当然だが、それにしてもまったく無口になった。極端すぎる光景だった。

 何か決心した様子、それでなければ決心するかどうか考えているようにも思える。

 結局この日もこれといった成果は僕にしてはなく、今日もまた一日終わるかに思えた。


「待つんだ。私も一緒に行こう」


 僕を引きとめたのは有木翠だった。しかしそこは問題ではなく、むしろ今の時間が問題だった。深夜零時。二日目が終わり、三日目に入る瀬戸際の時間だ。


「え、翠さんって、もしかして気づいてた?」

「当たり前だ。このシスコン。私が思い切り動けないのをいいことに好き勝手動き回っていたのを私が知らないはずがないだろう」

「好き勝手じゃないし…それに…」

「いい。言わなくてもわかるから。それより早く行くぞ。今日が最初で最後のチャンスかもしれないんだ」

「うえ?チャンスってなんの…」

「質問は後!ほら早く行く!」

 そう言って、ジャージ姿の僕を押しながら玄関を出た。

 


「アイアスは、探しに行かないんだ」

「そう。探さない。もうどこにいるかもわからないし、時間もない。アイアスに頼るのは無理だろう」


 君は僕の前をすたすた歩いていく。いつかを思う出す歩き姿だ。

 僕はジャージ姿だが君はいつも通りの服装だった。いつも通りといっても具体的に説明したことがなかった気がするな。ワンピースに薄手のカーディガンだ。以上。僕はファッションには疎いんだ。説明しようにもボキャブラリーが出ない。というか、ない。見た感じは、こう、ふわふわだ。ふわふわした感じ。色合いも薄い色が多いし。


「ねぇ、何をぶつぶつ言っているのかしら」

「ん?なんでもないよ。君の後姿を見てただけさ」

「ええっ!?し、視姦?」


 やめて、僕は変態じゃないから。

 僕も少しは大人になったのかも知れない。以前なら大声で否定してただろうけど、笑ってその暴言を許せる。ふっ、成長したものだ。

「ちょっと、カッコよく締めようとしないでもらえる?ただボキャブラリーがないだけじゃない」

「確かに僕は語彙が少ない。それは認めよう。でもちょっと被害妄想をいうか、そういうのが多いんじゃないない?」

「それは仕方ないじゃない。私は人の目を気にするんだもの。こんな性格、こんな体なもので」


 その場でくるっと一回転ターンを華麗に決めている。長い髪が遅れて回っている。

 最近気がついたんだけど、僕は君の髪が結構好きみたい。長い髪から薫ってくるものにそそられてるのかな。


「たった数年だったけど、人の心が見える状況っていうのはまるで外国に一人で移住したように、世界が変わって見えるの」

「ということはあれかな。不安いっぱいな新入生みたいな感じかな?」

「う、うーん。近いけど。まぁ、この際はどれでもいいよ。ようは疑心暗鬼なんだよ、私はね」

「最近はそんな風には見えなかったなぁ。最初のころはピリピリした雰囲気だったよ。口にするほどじゃなかったから特に言わなかったけど」

「それは私も自覚しているよ。最近は丸くなったというか、なんだか色ぼけしてる感じかな」

「笑顔が増えたんだよ。よく笑ってる」


 僕らはまだこうして笑い合っている。性懲りもなく、いつも通りに。

 正直に言って、僕はシェイプシフターに会うのが怖い。この上なく怖い。あいつが僕を見るときの眼には、殺意みたいなものがなかった。それが逆に怖い。まるで、僕は死ぬことが当たり前であるかのように錯覚していまいそうだった。

 だから、三日という時間。カウントダウンのように減っていく時間に恐怖している。僕の余命があと三日であるかのように。


「翠さん」

「なに?」

「これから、行くんだよね」

「ああ、そうだ。行くんだ」

「これが最後になるかも知れないから、言っておくよ」

「うん。私も言っておこうかな」

「大好きだよ」

「私も大好き」

 残り一日という時間を残して、僕たちは彼らの待つであろう場所に向かった。




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