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僕が綴る物語  作者: ハルハル
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急章 14 雑談


「こうして歩いていると。最初を思い出すな」

 最初とはもちろんアイアスに会うまでのウォーキングのことだ。あの時は君の凛々しい歩き姿を僕は後ろから眺める形だった。

「そうね。でも頭に乗らないで。君はあくまでも私の下僕なんだから」

 釘を刺された。というか下僕じゃないし!これはまぁ、置いておいていいか。

「あの時は悪魔や天使の話をしていたっけ」

「そうだったね。でも君は大して疑うことなく信じてくれてたね」

「あれは違うよ。信じるも疑うも、まず話が突拍子すぎて理解しきれていなかったんだ」

「あらそう、私の眼にはそう映らなかったわ。君は私の言葉を真摯に受け止めて信じてくれていた」

「それこそ違う。僕だって疑っていたさ。あんな話をまともに受け止められるはずはないだろう」

「へぇ、そう思ってたんだ。でもね、君は確かに信じていたよ」


 君は首を傾けて髪の間から右目で僕をのぞいていた。その目を見ると、僕より君のほうが僕を知っているんじゃないかと錯覚するかも知れない。

「君は根本的に人を疑うことができないし、してこなかったんだろうね。ざっくり言って筋トレを同じ。嘘を言い続ければ楽に嘘が言える様になるし、真実だけ言い続ければ本当のことを言うことが楽になる。信じ続ければ人を信じることが当たり前になってきて、疑い続ければ常に人を疑うようになる」

 で、僕は人を信じ続けてきたと言いたいわけだ。

 正面に向き直って、相変わらず歩みを進める。


「嘘から出た真ってあるよね。あれもそうなのかな?」

「うーん。ちょっと違うかな。私からすれば、嘘は真より真実に近いって方がしっくり来る」

「…、ごめん。やっぱりわかんない」

 多少は理解しようとした僕だった。

「たとえば、おおかみ少年って話は知ってるかな。嘘をつき続けた彼は本当のことを言っても信じてもらえなかった。でも逆に言うなら、彼が嘘を言えば間違いなくそれは嘘なんだ。彼が言うことはすべてが嘘だと確信できるならそれは中途半端な真実よりもよほど真実味があるってことだよ」

「なるほど、嘘は真より真実に近い、ね。でも現実にはありそうにないね。次の曲がり角を左に」

「現実では、確かにないかもね。でも私たちみたいに力を持っている人ならわかないわ。具体的に言うと、天の邪鬼のような妖怪の力を持っている人がいたらありえるかもね」

「でもそれってただの嘘吐きってやつじゃないか?」

「あははっ。確かにそうね。嘘吐き、詐欺師とかもそうなのかな。彼らが本当のことをしゃべったりすると気持ちが悪いものね」

 目の前の信号が赤になって立ち止まる。目的の図書館はこの交差点を渡ってすぐだった。そういえば僕があの時みたあの女。あいつはまさに嘘吐きのような匂いだった気がした。


 図書館に着くなり、西洋悪魔から日本妖怪まで悪魔や妖怪の名のつく本を片っ端から集め始めた。館内に設置されるいくつかの長机のうちの一つは完全に君が占領することになるだろう。そう思わせる本の量だった。

 開いては付箋を貼り、閉じていく。僕に課せられた指令はそれらのページをひたすらノートに書き写していくこと。どちらかといえば田舎のこの街だ。無料のコピー機なんてありゃしない。

 今日一日の残りの活動を言えば、これで終わった。当然眠りにつくまでずっとペンを動かしていたわけではないが、主なといえばさっき言った通り。学校から帰ってきた二人もさしたる話はしなかったし、深夜にアイアスを探しに出てもやはり見つからなかった。今日、つけたノートは全部で六冊になる。そのすべては君の部屋に運ばれた。


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