急章 06 シルバースプーン
「恋人の条件って何だとおもう」
「いきなりだね。そうだな…、互いに好き合っていたらそうじゃないの?」
「それだったら両思いもそうじゃないか。他には?」
「え~、他って。片方が告白して、それが実ったらそうじゃない」
「み、実ったらって。面白い言い回しだね。まぁ、条件の一つだね。他には」
「まだやるの!えっと、デートじゃない」
「やっと二つ目。さぁ、次が最後だ。言ってみて」
「…、お休みのメール?」
「くぁっ!~、背筋がむずがゆい。君は何気ない台詞だけで、人を悶えさせられるな。
まぁ、私が言ってもらいたい事が一応は出たね。じゃあ、これをやろうと思ったら何がひつようーだ?」
「…、彼女のメアド…」
君はゆっくり立って、ナイフを向けるように、僕にスプーンを向けた。
「そこまで分かってて、何で私の連絡先すら知らないのさ!?」
「ちょ、待って!ごめん、ごめんなさい!む、無理。そこは口じゃない。鼻の穴にはスプーンは入らないよぉぉ」
君は頭はいいが、物の使い方が間違ってる事が間々ある。
ここではそう、焼き飯を食べる為にそれを使うものだ。
「!!!!鼻が痛い!ものすごく痛い!ご飯が、ご飯粒が鼻にぃぃ」
「うるさい!君が私の連絡先を知らないから、まともにデートをしたのは最初の一回だけじゃないか」
「別に、学校で毎日会ってるからいいじゃないか!?」
「この、デリカシー無し男のシスコン野朗めぇぇ!」
やばい、死ぬ。と言うか、入る。鼻にスプーンが入ってしまう。
「た、助けて、見てないで助けてよ」
「「…、!」」
ふ、震えている!凛ちゃんと妹が抱き合って震えている。そりゃあ、こんな状況で怖がらずには居られないのは当然だけど、せめて声ぐらいは掛けて、止めようとはしないの!?僕、死んじゃうよ?
「翠さん、じゃあ、今日行こう。ねぇ?どう?」
ぴたっと動きが止まる。そしてゆっくりスプーンを抜く。
「…、うん」
泣いてるんですか!?泣きたいのはこっちですが!
「うん。じゃあ決まりだね。何しよう、そうだ。買い物に行こう。この機会だから服とか、いるものを買おう」
「うん…。行く」
「よし、じゃあさっさと食事と終えて、早く行こうよ」
はい、うん。とすみれと凛ちゃんが返事するが君だけは黙ってスプーンを僕に突き出した。
「おいシスコン。汚れたから代えて」
この女はなんだろうか。僕にはどうにも人には思えない。




