破章 10 幸せ
「ごめんなさい」
「もういいよ。僕はもう、覚悟が出来た」
僕は妹が持ってきた弁当を広げながら言った。蓋の裏側には妹の手紙が貼りつけてある。
「まさか、こんな面白すぎる展開になるなんて、夢にも思わなかった」
「君と話をしたこの数日で、間違いなく僕のメンタルは強くなったよ」
二人で中庭の木陰のベンチに腰掛けていた。昼過ぎの時間。昼休みと言う奴だ。
「昨日は兄がいる手前、その彼女と仲良くしてはいたが、実際は全然嫌だったわけかな。この手紙は私への牽制のジャブとでも言った所かな」
「じゃあ僕は、君に向けられたジャブをもろに食らってしまったわけだ」
妹よ、その愛は、重すぎる。
「で、一体何の覚悟が出来たって?」
「シスコンとして、生きていく覚悟」
「ああ、その覚悟なら大丈夫だ」
何が大丈夫なんだ?クラスメイトに埋め込まれた僕のイメージはもはや、書き換えが効かないぞ?
「君が沈んでいる間に私とあずさで、皆の誤解は解いておいたよ」
ありがとう、春川さん。クラスの代表であるあなたが説明したのなら、みんなもきっと分かってくれただろう。後は有木翠、君が余計なことを言わなければ…。
「…、私は、あずさに『喋らないでね』って言われたから」
春川さん。少し怖いな。
「そろそろ、お弁当を食べようじゃないか。私も今朝、お弁当を作ってきたんだ」
「じゅ、重箱ですか」
そんな大きなものをどうやって持ってきたのかと考えてしまう。
「此処で、問題。彼女がお弁当を作ってきました一体何故でしょう。その答えは次の内、どれでしょうか。一、彼氏に毒見をさせる為。二、自分で全て食べる為。三、大好きな彼氏に食べてもらう為」
先日の王水?入りのお茶を思い出してしまう。一、かな?
「ブッブー。残念でした。正解は三。大好きな彼氏にあーん、をして食べてもらう為」
その厚焼きたまごはほんのり甘くて、サイコーだった。
帰りの前のホームルームが終わって、続々と皆が席を立ち始めた。
「おい、帰りにどっか、寄ろうぜ」
「わりぃな。先約が入ってるんだ」
海人の誘いを断って、僕は君の所へ行く。
「やけに機嫌がいいじゃないか。何かあったのか?」
君はにやけながら言う。
「恋人って、いい物だな」
僕はまじまじと思った。有木翠、君が僕の彼女でよかった。




