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僕が綴る物語  作者: ハルハル
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序章 11 昔話


「力をなくしたいのかい?珍しいねぇ。その力は臨んだって手に入らないものなんだよ」

「それでも!…私はなくしたい。望んでなんか無かったのに」

「ふぅん。考え方は人それぞれだからね。利用する人が居れば捨てようとする人も居るのが摂理なのかね。わかった。でもやることは多いよ?とてもじゃないけど華奢な君には出来そうもないけど。やる?」


 有木翠は無言で頭を下げていた。それまで話しさえ信じてくれる人が居なかったせいで、突然現れた女だったとしても、その言葉はまるで極楽からのびる蜘蛛の糸のように思えた。

 扇はひらひらとまわさせていた扇をたたんで、わき道に隠れた地蔵をこつこつと叩いた。


「具体的にはこれ、壊してもらうことになるの」

「これって、お地蔵…様?」

「うんそう。でもまぁ理解はしたいよね。そうだよね。だからちゃんと説明はしてあげます。

 まずね、君の力はそのまま読心術の一種だと思っていいよ。そしてそれは人ならざる物の力だね。ん?初耳かな?普通に暮らせさえしていれば関わる事なんて無いだろうからね。じゃあこの機会に受け入れてみてね。でここで問題に戻るけど、その読心術は君の体に負担がかかっているの。とても、とてもね。辛いよね?今の君を見てもかなりの物だもん。だからね、

 人じゃなくなっちゃえばいいんだよ」




「それで、信じたのか?それを」

「まさか。跳んじゃった話だからね。鵜呑みになんかできなかったさ。でも、他に頼れるものなんてなかったからね。しばらくは言うとおりにしたさ」



「具体的には悪行を重ねればいいんだ。本当は善行でもいいけど、それは圧倒的に時間が掛かるからなしの方向で進めるよ。で、悪行を重ねる事でどうなるのかと言うと人じゃなくなるの。つまりは悪魔になっちゃうって事。化物になるわけじゃないから心配しないで、メンタル的な面で悪魔になるの。いやいやだから心配しないでよ。考え方も変わるわけじゃないし、そうだね、言い換えればメンタルを鍛えてるだけ。ほんと大丈夫だから。

 こんな言い方してたらいけない事に誘ってるみたいに聞こえるね。いやいや、悪い事じゃないから。そんな怪訝な顔はしないでね。

 話を戻すよ。この町で繰り返し行える悪行、しかも人に迷惑を掛けないタイプが地蔵壊しになる」


 やってみる?と彼女は言った。そしてそのまま後にしていった。


「もしやるんだったらね、目安としては百体。一心不乱にやることだよ」



「それで、君はやったんだ」

「百体。数えたかのようにぴったりだった。探したらそれだけの数しか見つけられなかったの」


 今の現状を見れば失敗したのか。そうでなくても上手い事はいかなかったんだろう。


「ちなみにその扇って人はそれから現れずじまいなの?」

「うん。結局会っていない。どうしてあんな事を私にさせたのか、そもそも誰なのかもわからない」

「なるほど、アイアスの話を鵜呑みにしていいなら、言ってしまえば結局地蔵壊しには何の意味のなかったって事だな」

「そんなにはっきり言う?それ」


 君はここでやっと顔を緩めてくれた。君はもちろん全てを語ったわけではないだろうけど少し暗い感じになった。と言うか僕のほうが聞いてて悲しくなりそうだったよ。


「私はね、少し勘違いしてるのかも知れないの。別に君が私の問題を解決してくれたわけでもないのにね」

「確かに僕が君の力についての悩みを何とかした訳じゃないけど、…特に何もしてないけど」

「はははっ、ほんと面白いね。君が今日話しかけてくれて、それが君で本当によかったと思う」

「なんか、デレてるねw」

「デレてなんかないよ!もういい。話したいことはもう終わったから。帰ります」

「翠さん!…、どうして僕が君に声をかけたのか知りたくないの」

「最初、…最初教えてくれませんでしたよね。どうしたんですか?いきなり」

「はぁ、読心術。使わないでね、って自動発動だったけな。そもそも僕が君の物語を綴ろうと思った理由は単純な好奇心。君が知りたかった。君の事が好きだったんだ」

 君はそっと微笑みだす。

「アイアスの話だと。私、不幸になるらしいですよ?」

「関係ない」

「私が耐えられなくて崩れちゃう事もあるかもしれないよ?」

「その時は、僕が支える」

「本当?」

「本当」

「そう。そうなんだ。わかった。じゃあ、また明日ね」

「え?ええ?ちょっ、どうなの。結局」

「また明日。会いましょう。デートには遅れないようにね」

 

 やっぱりこの日の夜空は澄んでいて、星がとても綺麗に見えていた。



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