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僕が綴る物語  作者: ハルハル
10/50

序章 10 悪魔の所以


「うん。このお地蔵さまも私が叩き壊したんだ。悪い事をしてしまったものだ」

 少し歩けば山へと続く舗装のなっていない道路がある。路肩の長い草原に隠れて、もとは質のいい石だっただろうが、叩き割られてボロボロに見えるそれは、お地蔵さまだったようだ。

 君が中学時代にやったことだ。

 後悔…、しているのかもしれない。何を思ってやったことかは知らない。当時の君は並々ならない精神だっただろう。けっして良い精神状態だとはいえないはず。


「あの感触、今でもぞくぞくするよ」


 後悔しなかったのか?


「後悔か。したさ、確かに。でもお地蔵さまを壊したことじゃない。まぁ、申し訳なくは思っているが…」

 後悔しているのは幼かった自分に、と続けた。

 当時は今から四年近く前。僕らが中学三年生だった頃だ。小さい町だからすぐに知れ渡った。君とは違う学校だったけど、その名前は僕も知っていたくらいだ。実際に壊されたものを見に行ったくらい。

 しかし、真相は誰も知らない。君はその間それ以降、ずっと心を閉ざし続けてきた。

「教えてくれないか。どうしてこんな事をしたのか」

「君はずうずうしいな。人の心の内に土足で上がりこもうとして」

「あっ、いや。そういうわけじゃなくて」

 ふと思ったが、読心術を僕を罵倒する為に使っていた君に言えたことなのか。

「冗談だよ。元々、その事を話すつもりだったんだし」

「その事…」

「聞いてくれる?私の中学時代の思い出話」

 中学時代の黒々した話。

「…、嫌だなぁ」

「聞けよバカ!」

 頭を吹き飛ばす威力のある裏拳を生身の人間に使っちゃダメだろ。ああ、脳が揺れる。


「今思えば、あの日も同じように澄んだ夜空だったように思う。

 中学三年の夏の日。私は扇と名乗る女に出会った」


 君がその扇と言う人に出会ったのはすでに力を手にした後だったようだ。どうやら君自身も良く分かっている部分は少ないらしい。

 少しずつ木々が多くなってきて、道も狭くなってきた。わき道で拾ったコケの生えた石を擦ってみると、穏やかな表情が見えた。


「だんだん、人が離れていったんだ。周りが私の事を勘ぐり始めてきた。その少し前から私はわかってきた。この力の事が。最初は気のせいに思えたけど、そう思えなくなってきたんだね。決め手はあれだったね。かなり効いたなぁ。

 お母さんのね、心の声が聞こえたの『化物めっ』だってさ。はは、笑えるよね。ホント、冗談じゃ無かったよ…」


 笑ってんのかよ。笑えんのかよ、そんなこと。

 僕の手からすり落ちた石が、カーンと音を立ててきた道を落ちていった。振り返る君には涙は無かったが、その表情からは涙の匂いがした。一体このことでどれだけの涙を流したのか。


「扇と出会ったのはちょうど、こんな山道を歩いている時。『化物めっ』なんていわれて、柄にも無く家を飛び出た後だったよ。

 彼女は私にこの力の事を教えてくれた。そして、覚のことも教えてくれた。人外の存在がいることを教えてくれたんだ」

「その、扇って人は君を助けてくれなかったのか?」

「当時はそうしてくれるって、そうしてくれているって思っていた。今から思えばなんて馬鹿馬鹿しいことだったか。

 彼女が言った、力を無くす為の方法が、このお地蔵さまを壊すことだったんだ」



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