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僕が綴る物語  作者: ハルハル
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序章 01 接触

 学校と言うものは特殊なものだ。

 同世代のこれだけの人間が一つの場所に集まる事は、学校以外ではもう、ありえないと言ってもいいだろうか。そこで僕達は学び、競い合う。

 全国に数え切れない程の学校があって、それぞれが同じ様に人を集める。そして学び、競い合う。が、その根底にあるのは、出会い。日本全国、いや世界中で同じように人と人とが出会う。その中で、僕と君が出会うことがどれほどの確率なのか、調べる気は無い。僕は数学が苦手だからな。そんなややこしい計算なんてやる気もしない。だけど、例え調べたとして、その答えが限りなくゼロに近かったとして、意味は無い。僕と君との出会いが偶然だったなんて、誰にも言わせない。計算なんかじゃ表せない。僕と君が出会ったことは、ただの必然だったのだから。


 学校と言う区分の中で、学年と言う区分の中で、クラスと言う区分の中で。僕は君と出会った。なんてややこしく言って見たりもするけど、この世界じゃ当たり前のこと。毎日誰かと出会って、別れて。たまたま僕と君はこのクラスで出会って、本当はそのまま卒業して別れてもよかったはずだ。でも、僕はそれで終わらしたく無かった。


 僕はただの興味本位で君が、君の物語が語りたくなった。


 君の名前は有木(ありき)(みどり)。教室の角も角に居て、今は黙々と日記を綴る。黒い髪が腰まで届きそうで、その色白い肌とで、どこか弱弱しい感じが漂う。

「初めまして、でいいのかな有木翠さん」

「クラスメイトなんだ。たとえ会話した事無くても『初めまして』は言わなくていいんじゃないかな」

「そうだね。じゃあ言い直すよ。こんにちは。突然だけど君の物語を語りたい」

「そう。じゃあ勝手に語って頂戴」

 君は目も向けずに言い切った。いつもこんな感じなのだ。

 クラスの誰かが君に話しかけても絶対に一方的に話を切る。まるで私に話しかけないでと言わんばかりに。

 そういった君の性格があってか、高校三年になった今も、君にはほとんど友達が居ない。別に居ないということは無い。ただほとんどだ。そうして彼女はこのクラスで自らのテリトリーを作った。

 後方窓側。その場所で君はいつも一人きりだった。

「君は本当にそれでいいの?高校最後の年まで何もしないままで終わるなんて」

「お説教?君は私に説教できるほど偉いの?」

 ちなみに君は学年で総合トップ十位に入るほどの頭脳。進学校で有名なこの学校で十位は実質、全国で十位だと思ってもいい位だ。ちなみに僕はそれほど頭はよくは無い。

「説教なんかじゃない。ただ、お願いだ。ただのお願い。僕は君の物語が語りたい。それを手伝って欲しいんだ」

 言い切ると、君は初めて顔を上げて僕を見た。大きな瞳がじっとこちらを見続ける。

「どうして、私なんだ」

「どうしてもだ。僕は君がいいんだ」

「答えになってないじゃないか」

「…ごめん」

 本当は理由なんて無かった。いや、実際にはあるけど…。

「まあいい。君の高校最後の思い出作りを手伝おうか」

 君は立ち上がり、言い放つ。

 こうして君の物語は始まりを迎える。



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