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セスナ・エア・シーク  作者: satoh ame
Ⅵ Land - ランド
16/17

Ⅵ-5 セレスト


 セーラは、階段の手摺から身を乗り出して下を覗いた。

「まだ通れそうよ」

 やめておけ、とディオンが渋い顔をする。

「火より先に煙来るぞ」

 交戦を避け、パッセージ経由でゲート04へ向かうつもりだったが、フロアに出るしかなさそうだ。


 移動の最中さなか、ふと思い出してトランシーヴを起動する。

「……だめみたい」

 諦めかけたとき、雑音とともに応答があった。

「ディオン、止まって!」

 とりあえず思いつくまま呼びかけてみた。

 機械越しに『セーラ!』と胸に染みる声。『わたし、カレンよ! ……ディオンも一緒?』

「ええ、ふたりでサバイバルしてるの。不本意だけど」

 生存できるか危うい立ち位置だが、つい冗談ぽく笑ってしまった。

 カレンが現在トランシーヴを持っているということは、彼女もひいらぎも『venomベノム』戦のメンバーだ。

「ねえ、カレン。花とヤスパーはどうしてるかしら」

 不意の沈黙が重く、少し怖くなる。

「何か、あったの?」

『ヤスパーが撃たれてしまって……』

 側で聞いていたディオンに機器を奪い取られた。

「カレン、本当なのか。……あいつは」

『ラギのお友だちがヤスパーと花の救出に協力してくださって、たぶん、ここからは出られたと思うの。そのあとのことはわからない……』

 柊に代わると言って、カレンの声が離れた。

「おい、ラギ。そっちはどうだ」

『何度か死にかけたけど大丈夫。生きてるよ』

 柊は今後のプランについてひと通り説明した後、こちらに意見を求めてきた。

 難しいことはディオンに任せた方がよさそうだ。

「俺は賛成する。事態は悪くなる一方だ。早い方がいい」

 彼と視線が合ったのでOKのサインを出す。炎の巡路がよくない。覚悟を決めて行動を起こさなければきっと後悔する。

「延焼する前にパッセージからフロアに移る。今のままだと、おまえらふたりで突入しても人質乗せる前に殺られるぞ。……俺たちは対岸の3Fからゲート04付近の『venom』を撃つ。敵の数を減らせば強行できるはずだ」

『僕たちとは別行動ってことだね』

「それが一番効率いいだろ。おまえもカレンも死ぬなよ」

『ありがとう。やり遂げるよ』



 あ、と目を見開いたときには遅かった。

 声を上げる隙もなく背後から拘束された。

『venom』が通路の凹みに潜んでいたらしい。

 必死に抵抗したが、敵の硬い腕から逃れることができない。

 異変を察知したディオンがこちらを振り返った。

「セーラ! ……貴様ッ」

「武器を捨てなさい」

「先にそいつを解放しろ」

「ご冗談を。立場を理解してください」

 男がポケットからペンより細い折り畳みナイフを取り出した。

「本気ですよ。女性と子どもにも容赦はしません」

 流れるような仕草で手首を掴まれ、冷たい汗が滲む。

「勝手に触らないでちょうだい」

 ディオンには聞こえないよう、敵が耳元で囁いてきた。

 その内容にぞっとする。

 ――『どの指が大事?』って……。

 答えずにいると、いつの間にか右手の人差し指を握られていた。

「やめろッ!」

「やめませんよ。せっかく捕まえたんですから。……女の子って指先までやわらかい」

 うんざりするほど歪んだペドフィリアだ。まさか実在するとは。

「わかった。銃は捨てる。セーラを放せ」

 彼は苦渋の面持ちで降参のポーズを見せた。

「だめ、ディオン! ばかな真似しないで!」

 言い終えると同時に、鋭い痛みが全身を貫いた。

 思考が一瞬断絶される。

「やだ、うそ……」

 鼓動が弾けそうだ。

 血だらけになった自分の爪が、靴の上を跳ねて床に落ちていく。

「おい! セーラッ!」

 手首ごと断ち切られたような痛みの激高に力が抜けた。

「すごい出血だ。全力疾走してたからね」

 早速次の指が選ばれている。

「……あなたのこと、殺してやりたいわ……っ」

「それは無理だよ」

 男は右手の薬指に興味を持ったらしい。

 朦朧とする閃きを頼り、わざと思い切り手を握った。

「開いて」

 穏やかな物言いとは裏腹に、敵が意地になって指を掴もうとしている。

 刹那、視界が翳った。

「セーラ、どけろ!」

 刺されても構わない。渾身の力で『venom』を振り払う。

「触らないでって言ってるでしょう!」

 真っ直ぐに駆けてきたディオンが、体勢を崩した敵をハンドガンのグリップで殴りつけた。

 当たった鼻が折れたのか、床に液体と固体の入り混じった血の塊が転がっている。

 距離をとって、動かなくなった『venom』を見下ろすと、驚くほど軟弱な男だった。

 だから女や子どもを狙うのか。

 銃を向け、ディオンが無感情に呟く。

「死ねよ変態」



「まだ痛むのか?」

 ディオンはセーラの指先から目を背ける。

 彼女は、昼間ヤスパーが膝に貼ったガーゼを折り換え、新たな怪我に巻きつけているが、それもほんの数秒で黒っぽい血に染まった。

「歩けなくなったら言えよ」

「平気よ。指だもの」

 意外と元気そうだ。

 セーラを痛めつけられた悔しさを糧とし、怒りを込めて敵を撃ち殺した。

 奴らから奪ったライフルを3つ並べて時を待つ。

 柊と打ち合わせた狙撃ポイントに辿り着いたときにはもう、何人斃したかわからなくなっていた。

 ――俺、地獄に堕ちるかもな。

 機体が墜ちるよりはだいぶましだ。

 吹き抜けの向こう、ひとつ階下に見えるゲート04に目立った動きはなく、数名の敵が巡回している。

 すべてを同時に始末するのは無理だ。絶対に通信機器で増援を呼ばれる。

 ――上手くいくのか……?

 冷静な考察ができない。

 命の危機を自覚させないためなのか、軽い酩酊状態に似ている。

 それより、花から連絡がないのが気懸かりだ。

 あのヤスパーが死ぬとは思えないけれど。

「ディオン、ラギと話して」

 セーラが間にトランシーヴを置く。

 あちらも到着したらしい。

 駆けつけた『venom』を射殺し、ゲート前の通路が空き次第、柊とカレンが人質の集められているウェイティングルームへ突入する手筈になっている。

 ここを無事に済ませ、協力して内部の敵を殺せば安全に飛べる。

 この建物もリミットが近い。

『venom』を切り離す最後のチャンスだ。

「ラギ。こっちは問題ないぜ」

『危なくなったらすぐに逃げて。ディオンもセーラも』

「おまえらの方こそ」

 微かな声の揺れで、柊が少し笑った気がした。

『ありがとう。後でまた』


 柱を盾にし、ライフルの引き金に指をかける。

「セーラ。このエリアの見張りは任せる。敵が来たら教えろ」

「了解。……面白そうね」

 彼女が偽善的な博愛主義者でなくてよかった。

 シューティング『venom』の他に、もっと過激なゲームも楽しめそうだ。

 手始めに、ゲート04前に突っ立っている帽子キャップとバンダナを狙撃した。

 派手に吹き飛ぶこともなく、酷く虚ろな姿で崩れていく。

 銃声の残響を聴きつけ、奴の仲間が死体に駆け寄って来た。

 スコープ越しに目が合う。

 まるで無条件反射だ。

 気づいたときにはトリガーを引いていた。

 男の顔が破壊されていくコンマ数秒が架空のフィルムに刻まれる。

 清潔に保たれていた通路がブラッドパーティだ。

 ――早く来いよ次!

 弾を再装填し、新たに登場した『venom』を4連殺。

 この段階で全滅させることができれば後が楽だが、そう容易くはいかないだろう。

 状況は不利と有利を延々と繰り返す。

 他に居場所がないのはこちらも同じ。奴らだけではない。

 殺すという手段でしか進めないのなら従うまでだ。


 発砲するたび、気味の悪い赤が咲いて壁面を覆う。

 やがて複数の靴音が切迫し、増援が到着した。

 ――7、8、……9か。

 反撃を怖れず撃つしかない。少しでも数を減らさなければ柊の計画はクラッシュだ。

 3発で4人仕留めた直後、生き残りの『venom』がこちらを指差した。

 ――見つかったな。

 撃ち違える覚悟で再度スコープを覗いたが、敵は一斉に別方向へ散っていく。

 ここに攻め込むつもりなら喜んで待つが、このタイミングで柊とカレンを危険に晒すわけにはいかない。

 トランシーヴを掴み寄せ、早口に告げた。

「ラギ、悪い。敵を逃がした。すぐそっちに向かう。待ってろ」

 返事を聞かず、セーラを呼ぶ。

「下の階に移るぞ。走れ!」



 身体ごと吹き飛ばされた刹那、罠にかけられたことを知った。

「きゃあッ、ディオン!」

「セーラ、離れてろッ!」

 炎を避けて3Fの連絡通路へ向かったのが仇になった。

 落ちた橋さながらの様相だ。進路が大きく焼け崩れ、連結した別館に渡ることができない。

 そこに邪魔が入った。『venom』だ。

「まだいたのかよ!」

「……ッ、おまえのせいでッ! 人質を全員殺すぞッ!」

 荒ぶる攻撃を腕でガードし、間を置かずに殴り返した。

「本当にやれるのか? 仲間の帽子キャップくん呼ぶなら早くしろよ。おまえピンチだぞ」

「うるせえッ!」

 転がるように揉み合い、殴り合って、通路が途切れた断崖部に差しかかった。

「いいから死ねよ罪人……!」

 炭化した床の熱を感じながら、敵を掴んだまま階下に身を投げた。


「……痛ぇっ」

 灰塵舞い散る床の上で、叩きつけられた身体を起こす。

 隣に視線を遣ると、先ほどまみえていた男が傍らに仰臥していた。

 ――死んだのかよ、こいつ。

 落下の衝撃で後頭部が潰れたらしい。帽子キャップの加護がなかったのが直接の死因だ。

「ディオン! ケガは? 無事なの!?」

 雑音にかき消されていたが、セーラが何度も呼びかけていたようだ。

 途切れた通路の端から身を乗り出し、こちらを見ている。

 平気だ、と気怠く航空式の礼を返した。

「そこから階段に戻れそう?」

「無理だ。焼けてる」

 通路の左右を炎に塞がれた。

「手が届かないわ。ジャンプしてみて!」

 たとえ届いても、セーラの細腕で男の身体を引き上げられるはずがない。

「やめとけ」

「だめよ、諦めないで。私、ロープか何か探してくるわ」

 根拠は不明だが、ここで行かせたらもう二度と会えない気がした。

「セーラ! ……その前に聞いてくれ」

 彼女は立ち上がりかけた体勢を、渋々といった感じで落ち着けた。

「今じゃなきゃだめなの?」

 ここで死ぬ運命でなければ、明日でも明後日でも構わないけれど。



「おまえはこの近辺で救助を待て。ラギが計画通り離陸すればすぐに助けが来る」

 自分が動けない以上、セーラを単独でゲート04まで行かせるのはリスクが高い。

 迷いはあったが、柊とカレンにこちらの状況を伝えるのはやめた方がよさそうだ。あのふたりのことだから、危険を冒してでも助けようとしてくるだろう。

 そうなれば計画はタイムアウトだ。

「ディオンはどうするの? そこは危ないから離れるべきよ。道具があれば登れるでしょ? ……私たち、今夜はポリスとレスQに借りを作ることになりそうね」

「やめてくれ。嫌いなんだよ。あいつら」

「どうして?」

「言わなきゃだめなのか」

 問いかけではなく諦めだ。

 セーラは頷いた後、唇の端を静かに上げて笑った。

「何を聞いても驚かない。秘密は守るわ」


 ふざけた三つ編みのセーラがこちらを見下ろしている。

 目が合わないよう、壁に凭れて腕を組んだ。

 ――告解かよ。

 どうせ死ぬのなら、もう何もかも打ち明けてしまおうと思った。

「子ども時代にいろいろあったんだ。……家庭内で殺人事件だぜ。ありえないだろ。不倫された腹いせに、母親が父親を刺した」

 そして、兄と自分を道連れにしようと狂乱していたが気が変わったらしく、裸足のまま家を飛び出して川に身投げした。

 その母親が、そこそこ名の知れたインテリアデザイナーだったせいで、事件はセンセーショナルに報じられた。

 その日から途切れることなく、気忙しい大人に取り囲まれ、通学時に何度も無断で写真を撮られた。

 ――あいつら、顔伏せて通り過ぎようとしてる俺たちを追い回して面白がってたよな……。

 あのとき芽生えた殺意が消えない。瓶に閉じ込められたインクのようだ。最初から好きではなかった人間が、吐き気がするほど嫌いになった。

 周囲から注がれ続ける好奇の視線。

 精神が黒く罅割れるまで追い詰められる毎日。

 通っていた初等部では誰も口を利かなくなった。

 被害者でもあり、加害者の子でもあるという曖昧な立場。

 無能な警察は最初、自分と兄がなぜ殺されなかったのか、という質問から、徐々に自分たち兄弟に疑惑の目を向けてきた。

 凶器の調理用ナイフからふたりの指紋が無数に検出されたからだ。

 宅配ピザに拒絶反応が起こり始めたらもう、残された道はメンズ料理しかない。

 親殺しの疑いが晴れると警察の興味は移り、両親のプライバシーに纏わる情報を執拗に知りたがった。

 すべてが嫌になって、中等部は故郷から遠く離れた寮のある学院に入った。

 以来、元の家には帰っていない。

 あの出来事で、対人関係の忍耐と余力を使い切り、乾いた砂のような人間になった。

 けれど今は違う。

「俺も兄貴も、本当はあの家の子どもじゃないんだ」

「そう……」セーラは当たり前のことのように受け止めてくれたらしい。「大丈夫よ。私も孤児だから」

「ポリスの奴ら、人のこと散々疑っておきながら謝りもしないんだぜ」

 早い段階で『venom』を捕獲できなかったのも警察の落ち度だ。


 セーラはひと頻りポリスの体制を批難し、やがてこちらを見て、寄り添うような微笑み方をした。

「小さい頃、酷い目に遭ったのね。……聞かなかったことにした方がいい?」

「そうしてくれ」

「慰めてあげたいけど、距離がありすぎて届かないわ。……今ならまだ腕も両方動くのに」

 夜明け前の聖堂で罪を分け合うみたいに、すべてを包み込んで抱き締めてくれるのだろうか。

 セーラのか細い腕の感触を想像してみたけれど、あの華奢な身体に縋って泣くような真似はできないと思った。

「別にいいんだ」

「私が憶えているから、ディオンは忘れてしまっても構わないわよ。私に預けて心を軽くするの」

 古い事件も、いつかは分解されてなくなるときが来るのだろうか。

「ディオン。生きてここを出られたら、何かしたいことはない?」

 言った後、気難しい顔をして彼女が続けた。

「こういう遣り取り好きじゃないわ。私、どうかしてるのね」

 大人ぶってアナウンスをしているせいか、改めて耳を傾けると、凛と引き立つ美しい声だ。

 これまでセーラという少女を、いつも同じ方向からしか見ていなかった。

 彼女は自分をどう見ていたのだろう。ときどき言い争ったりもしたけれど、思えばいつも手を差し伸べられていた。無償の愛に近い何かだったのかもしれない。

「俺はここで死ななくても、仕事はしばらく休んで故郷に戻ろうと思う。……あの出来事と決別するには必要な行程だった」

「私も連れて行って」

「汽車で半日かかるぞ。やめとけ」

「どのステーション?」

 仕方がないので駅名と発車時刻を答えた。一度調べたきりなのに、なぜ憶えているのか謎だ。

「もしはぐれてしまったら、そこで待ち合わせましょう」

 ああ、と素っ気なく応じる。


 ――それより燃えすぎだろ。

 炎の勢いが増し、通路の両側から分厚い白煙が押し寄せてくる。

 雲の眩しい白に突っ込んだときのような爽快感が皆無で笑えた。

「セーラ」

「何?」

 上着に入れていた小切手に書き込み、軽く丸めて投げた。

「持ってけ」

 彼女は紙片を開いて目を丸くする。

「だめよ、受け取れないわ!」

「それ使って自由に生きろ。好きな仕事極めて人生楽しめ」

 涙を溜めながら、セーラは躊躇いがちに口を開いた。

「私、今のままで充分よ。何も変わってほしくない」

「頼むから受け取ってくれ。おまえには世話になった」

「でも……」

「遠慮すんな。嫌なら後で捨てろ」

 気の進まない表情のまま、彼女は黙って小切手をポケットに仕舞った。

「トランシーヴ寄越せ。時間がない。ラギとカレンに、俺たちを待たずに飛べと伝える。おまえは救助が来るまで安全な場所に隠れてろ」

 ありえない、と彼女は困惑全開の抵抗だ。

「そんなことできないわ。必ず助けるから待ってて」

 制止を振り切り、セーラが駆け出す。

 するとすぐに戻って来た。

「退屈でしょ? 貸してあげる」

 落とさないで、と前置きして紫色の小さな機械を放った。

 記録機のフォトンだ。

「おい、これ……」

 どうしてなのか、メモリを再生するのが怖かった。

 思い出の重さが手の平に沈む。

 自分が死んでも、他の誰かが死んでも、この小さなマシンの中に懐かしい姿が残り続けるのだろう。心の奥底で大切にしていた平穏な日々が。


 フォトンの端に貼られた『S』のシールを指でなぞる。

 ――おまえの、セーラという名前が好きだ。

 何もしてやれなかったことを申し訳なく思う。

 ――大人になるのは俺の方だった。

 今日から少し変われそうだけれど、気づくのが遅かったようだ。

 俯くと、レンズを向けられ、セーラを突き放した過去が目蓋の裏を掠める。

「悪かったな、あのとき。……許してくれ」



 清掃用の脚立を抱えて戻ると、渦巻くような煙が強い圧で吹きつけてきた。

 ――ディオン……。

 ほんの数分前まで顔を覗かせていた、崩れた通路の端がもう、炎に阻まれて見えなくなっていた。

 ――どうして……。

 またひとりになってしまった。

 流れた涙が音も立てず、熱の魔力に無効化されていく。

 不気味な虫に食べものを分けてあげていたディオンの、不器用な後ろ姿を思い出した。

 時間の流れに攫われて、顔も声も、いつかは忘れてしまうかもしれない。

「……報われないことばかりね。私も星になりたい」

 気がつくと脚立を手離し、蟀谷に銃口を押し当てていた。

 悲しいことに際限はなく、生きている限り、何度でもすれ違うだろう。

 待ち受けるそれを避けては通れない。



                                  Ⅵ-5 end.


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