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神稲和の日々は変わらない!?  作者: トムソンボーイ
トラテットへようこそ!
2/2

第一話 Aパート

「いてててて……」

 何かに肩を引っ張られて神稲はロッカーから飛び出していた。

「いきなり何なんだ?熱中症にでもなっちゃったかな?」

 後頭部に出来た瘤を摩りながら自分の身体状況を確かめていく。後頭部以外に痛めている所はない。そして熱中症にしては意識がはっきりしており、体の感覚も鈍ってなどいない。

 そして、目を開けたそこには

「水色の生地に白のレース……」

転がっている神稲の頭の少し先で少女が佇んでいる。その少女の股間に引っ付いている布の色だ。日常生活ではありえないアングルからの視線だからか警戒の範囲外なのだろうか、パンツが見えている事に気づいていなかったようだ。

少女は顔を赤らめ、二歩三歩と後ろへ下がっていく。体の輪郭、身に付けている物のシルエットラインが淡い青色に輝いた。

「変態!!」

 その少女の前方に突然、青白い稲光が発生した。そして、その稲光とともに神稲の意識がぷっつりと切れた。



「ねぇ。起きなさいよ」

 暗い何もない世界に気のせいかと思うほど小さい少女の声が届く。

「うるさいなぁ。まだ寝かせてくれよ」

「起きろって言ってんでしょ!」

「あーはいはい、一瞬起きた。はい、おやすみ」

 徐々に大きくなっていく、少女の声はやがて

「いい加減にしろー!」

 と耳元で叫ばれたのかの様な大きな少女の声と頬の痛みとともに暗闇の世界に切り開かれた大きな筋から光が差し込んだ。

 そこには栗毛色の髪の毛が肘の辺りまで伸び、前髪は眉毛の上でバッサリと切られて円な瞳が綺麗に見えている。ぷっくりと膨らみ健康的に赤らんだ唇が動く。

「単刀直入に聞くけどあんた何者?」

「君こそ誰だよ」

「自分の立場を理解出来てる?」

 彼女の外見や言葉に気を取られて自分が木製の椅子に縛り付けられている事にさえ気づいていなかった。

「これはどういう事なんだ!?それにここ教室じゃないよな?どこなんだ?」

「あたしの質問に答えてくれたら答えてあげる」

 少女はそっぽを向いて不機嫌そうにしている。神稲は軽く溜息を吐き

「…神稲和だ」

「クマシロカノウ?変な名前ね」

 そう言うと少女は机に向かいノートか何かにメモを取っている。そして、座っている机を反転させて神稲と相対した。

「今度は俺の質問に答えてくれよ」

「いいよ。あたしの名前はアストリア・トロニーテ。トロニーテ一族の次期当主よ!」

「へー。名家か何かの生まれなのか?そんな事よりここどこだ?学校の中なのか?」

「何を言ってるんだ?ここはあたしの部屋だよ」

「教室からこの部屋に運ばれたっていう事なのか?」

「う~ん、運んで来たというか引っ張り出してしまったというか…まぁ今はこの話は置いといて――」

「ちょっと待ってよ!ど、どういう事なんだ?引っ張りだすとかなんとか」

「残ねーん、質問オーバーです。では次にあたしの質問ね!」

 少女は苦笑いを浮かべて流した。

「どこから来たのかな?コトリアット?それとも地球の裏側のストリスト?」

「ここがどこなんだか知らないが埼玉県越ケ野市からきた」

 神稲が放った言葉を聞いて口を開けて放けていた。

「サイタマケンコシガヤシ?聞いたことないなぁ……どこら辺にあるの?」

「埼玉県の南東部、東京駅から1時間ってところかな」

 少女は机の横にある棚から分厚い本を取り出し、単語検索欄から『サイタマケンコシガヤシ』を探していく。

「サイタマ、サイタマ~……どこにもない」

「そろそろこっちの質問いいか?」

「さっきの引っ張り出すっていう事について答えてくれよ」

 分厚い本を机の上へ置いて、神稲の方を向いて背筋を伸ばして話し始める。

「怒らないで聞いてね。昨日も夜に瞬間移動の魔法術式思いついてね、そして組んでみたの。今は場所を限定して尚且つ1%以下の限りない程小さい確率でしか発動出来てないんだけどね。それでたまたま一回出来て向こう。そう、移動先にたまたま人がいたから引っ張ってきてみたってだけなんだ」

「まっ魔術!?漫画とかにドハマリしちゃうと私生活にも影響されちゃうタイプなの?」

「電撃強すぎて記憶喪失にでもなっちゃったのかな?さっきから言動が可笑しいし、回復魔術するから待ってて。安心して、読めば大体出来るようになるタイプだから」

 先程分厚い本を取り出した棚から更に分厚い本を出した。

「おいしょっと。どれどれー……」

 目次欄から回復魔術に関する記述を発見しページを捲り頭に叩き込んでいく。

「ふむふむ、よし大体わかった!」

 そして稲光の様な現象が発生した時と同じように服を含めたシルエットラインが淡い青色に輝いた。

「いやいや!ちょっと待って!それさっきのヤツだよな!それに大体って危なっかしい言葉乱発してんじゃねー!魔術って奴は信じるから勘弁してくれ!」

「信じるも何も使えない奴なんていないじゃない。本当に頭どうにかなっちゃたんじゃないの?大丈夫?」

「誰でも使えるのか?マジックとかじゃなくて魔術?」

 少女は軽く溜息を吐き、神稲へと近づき両耳を掴んで勢いよく引っ張る。そして叫んだ。

「だーかーらー!魔術は誰でも使えるのー!」


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