4話 翔吾
「よーし翔ちゃんの住んでる寮の場所知らないから電話してみるわ」
そんなこんなでまた再び絵里とバンドを組むことになった。後は翔吾と清香に声をかけるだけだ。
「あっ翔ちゃん⁉うん、うん、そう、そうなの、えっ⁉うん…わかった…ちょっと待って‼リュウに代わるね。」
と言って明らかにテンションが下がった状態で俺に携帯を手渡してきた。多分断られたのだろう、俺もそんなにうまくいくとは思っていない。
「しょ、翔吾か?久しぶり。」
「お、おう、久しぶり。」
やはり久しぶりの会話ともなると気まずいものだ。絵里とのときはやはり特殊だったのだ。
「お前大学行ってるんだって?簡単じゃないと思うけどまた一緒にバンドやろうぜ。」
「何でまた急に…」
「思いたったら吉日だろ。」
「バンドなんてやってもろくなことないじゃないか。」
まさか翔吾がそんなことを言うなんて思っても見なかった。
「月日っつうのは人を変えちまうもんだな…どうせあの誓いも忘れちまったわけだ。すまん俺の検討違いだった。じゃあな。」
と言って電話を切ってしまった。
やっちまった〜‼この前の俺となんら変わらない状態の翔吾を怒鳴りつけてしまった。
「えっなになに⁉翔ちゃんはどうなったの⁉」
「し、心配すんな。明日だ、明日こそ説得してみせる。」と言って今日の所は解散した。
そして次の日のこと。
あーあんなこと言った後電話かけづらいなー。とりあえず誤った方がいいな。よーしいくぞ。
と思ったとき急に翔吾から電話がかかってきた。
「お前んちの近くの公園で待つ。じゃっ…」
「ちょっ待っ‼」
一方的に切られた。一体なんだというんだ。とりあえずいってみないことには始まらない。
公園に着くと翔吾の姿があった。
まずは俺が謝ってその後また勧誘しようという算段を立てていた。
「翔吾、昨日は…」
「リュウ、昨日はゴメン‼‼」
はっ?
「バンドをバカにするようなこと言って。俺のこと一発殴ってくれ。」
「いや、ちょっと待て。俺はお前を殴るためにここに来たんじゃない。」
「いいから早く‼」
こいついつの間にMに目覚めたんだ?まぁ今は殴ることでしか収拾はつかないらしい。
「じゃあいくぞ。」
ゴッ‼
うぐっ‼
「だ、大丈夫か?」
結構思いきりいってしまった。
「大丈夫だ。…覚えてるよ。あの誓い。ただ俺はリュウが忘れてたのかと思ったんだよ。だってそうだろ?5年間音沙汰なしで急にバンドやろうって…夢みたいな話だよ、俺にとっては…」
翔吾の目からは涙が溢れていた。
「いつお前がまたバンド始めるかウキウキしながら待ってたんだよ…昨日はあんなこと言ったけど俺ホントは嬉しかったんだ。ただ俺がどんな思いで待ってたのかも知らずにお前が当たり前のようにバンドに誘ってきたから頭にきて口からでまかせ言っちまった…」
そうだったのか…ずっと待っててくれたんだなこいつは…みんなにはホントに悪いことをしたな…
「翔吾、ホントにすまな…」
「だから俺にも一発殴らせてくれ。」
へっ?
ドゴッ‼
うぐっ‼
おかしいぞ‼さっきから妙に男臭い感じがしてならない‼だがこうなったらいた仕方ない…定石どおりここからは…
ドゴッ‼
うがっ‼
ゴッ‼
ぐはっ‼
こうして男同士の殴り合いが始まった。