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絶望と希望の依頼人②

絶望と希望の依頼人②、予約登録ミスってたみたいです。


読んでくださってる方、すみませんでした。

次からはミスらないよう気を付けます。

 魔獣を探している。青年はそう言った。


 ギルベルブルーと呼ばれる、空色に似たブレザーに、一部の隙もなくネクタイを締め、茶色をベースにしたチェックのパンツ。女子はこれがスカートに変わって、なかなか評判がいいらしい。


 深緑のマントは、素っ気無いピンで留めている。ダリアが以前会った魔法使いは、宝石の付いたブローチで留めていたなと、とりとめなく思う


 プラチナの髪は男性にしては少し長め、スクウェアの下フレーム眼鏡が、クールな印象で、切れ長の瞳は、海を切り取ったような青緑色をしている。


 ちょっと神経質っぽい彼は、来客用に用意した応接セットに腰掛け、ダリアが出したお茶に口をした。


 「改めて、失礼しました。僕はアーサー・ジギル。魔術学園高等科の五回生です」


 「いえ、こちらこそ。落ち着いたようで良かったです。あっ、私、ダリア・アルビレオって言います」


 なぜか、アーサーが訪れてから、強くしがみ付く仔獣を膝の上に乗せ、二人は向かい合って座っている。


 「あの……不躾ですが、うちに大きな魔獣って、どう言うことですか?」


 無意識に視線を部屋の中に走らせながら、ダリアは恐る恐る切り出す。魔獣は知っている。野生のモノもたまに居るが、基本的には魔法使いが使役する生物で、魔力を持った獣だ。


 野良魔獣が、人や畑を襲うという話もまれに聞くが、すべて郊外の村や街道での話であり、街中で。とは、聞いたことがない。


 「はぁ、余り、口外したくない話なのですが……この工房まで、微かな魔力が続いているので、お話します。が、他言無用に願います」


 眼光鋭い、結構怖い。ギュッと膝の上の仔獣を持ち上げて、抱きしめる。睨まないで欲しいな。



 ダリアの行動に僅かに眉をひそめ、それでもアーサーは事の顛末を語る。


 「……魔術学園には、魔獣に限らず、様々な魔法の契約用や、召喚用の魔法陣が、石に刻まれている部屋が多数存在します」


 それは、ダリアも知っている。魔法陣を刻むのは、魔具師の仕事だ。一回使い切りになるが、紙に書いた簡易の魔法陣なんかも存在する。



 閑話休題


 「僕が行ったのは、今日の授業で習ったばかりの、魔獣召喚術でした。ただ、本来は自身の魔力のみを代価に、召喚するのですが……」


 そこで、アーサーは言葉を言い淀む。これは展開が読めたかもしれない。


 「……魔力と、更に違う物。恐らく魔気か、又は予め、自身の魔力で作っていた魔石を魔法陣の要になる部分に配置しましたね? 魔獣召喚用の魔法陣は要が八つ。或いは、中心にも置いて九つ」


 はっと、驚きの眼差しが向けられるが、構うことなくダリアは続ける。


 「確か、魔術学園の召喚部屋は、壁に、捕獲用の陣を刻んでいると聞きました。けれど、回年と、ランクで使える部屋が違うとも」


 未だ、注がれるのは驚愕の視線。それに、今更ながら初対面の人に色々話してしまったと、ダリアは頬を染めて、俯く。ギュッと抱きしめた仔獣が暖かい。


 「ぇと、申し送れました。私、正式には名前の前に、名乗りとして『ギ』の魔具師カメリア派12代目が、付き、ます」


 正式名を名乗るのは初めてだ。恥ずかしい。書類には書いたが、名乗るとなると結構来るね、これ。


 「『ギ』の魔具師って……一子相伝の?」


 ……恥ずかしい、隠れたい。そう言えばお師様が『ギ』の魔具師は有名なんだよねぇ? なんて、言ってたのをダリアは行き成り思い出した。


 「それなら、詳しいのにも納得です。そして、見た限りここに魔獣は居ません」


 「あのぉ、その魔獣って、どんな子なんですか?」


 「そうですね、しなやかで大きな、猫に似た……あぁですが、もっと気品のある感じでした。一瞬でしたが目を見張る様な……そして、魔力は恐らく、紫のどちらかです」


 「むっ、紫ですか!!」


 一般的に、魔力は六段階12種類に分けられる。六種類は上から紫、青、赤、黄、白、黒。白は見分けが難しいが、一応、各2種類に別れ、強い方が濃く、弱い方が薄い。


 紫なんて、どっちでも、そこらの魔法使いより強い、強すぎる。国家レベルで管理されるランクだ。


 「そう、紫です。そして僕は、その魔獣を逃がしてしまいました。すぐに捜したのですが……なぜか途中で、魔力が四散しているのです。その一つがここから少し上の、階段付近で強く残っていました」


 ここより上の階段付近。この仔を拾った辺りだろうか? あっ!


 「私、その魔獣見たかもしれません! この仔を襲ってたのが大きな猫だったんです。その猫が……」


 「黒色、でしたか」


 「はい」


 「何かしらの影響で魔力を失い、生命力を奪って、魔力にしようとしたのかもしれません。そんなに傷だらけになって」



 痛々しい姿を瞳に映し、アーサーは眼差しを伏せる。


 「その猫、やけに大きかったんです。私が近付いたらすぐに逃げて、この仔は泥と傷だらけで、相手の子はまったく無傷でした」


 そっと、背中を撫でる。ダリアたちの雰囲気で、先ほどのことを思い出したのか、僅かに震える姿がいじらしい。


 「僕の責任です。早く、見つけ出さないと」


 ポツリとこぼれた苦悩を含ませた声。ダリアは一瞬思案するが、一つ頷く。

 


 「あの……私にも何か出来ることありませんか? なり立てですけど、魔具師です。何か、役に立てるかも知れません」


 弾かれたようにアーサーが、顔を上げる。しかし、弱弱しくかぶりを降る。


 「折角のお申し出ですが、魔獣の強さを考えると……」


 「私では、力不足だと、お思いですか?」


 濁された言葉に、肯定と取り、唇をかみ締める。私なんてまだまだ、だ。けど、それでも、何かしたい。この仔のためにも。


 「じゃあ、時間掛けれないけどテストして下さい! それで、私が力になれるか、作れるものがあるか、確かめて下さい」


 強い決意を持って、アーサーを見つめる。私は、私に出来ることをしたい。



主要登場人物が出揃いました。

遅ればせながら

二名様、お気に入り登録を。そして、読んでくださってる方有難うございます。

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