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ホラーギルドへようこそ!!  作者: ルナ
新メンバーはお姫様
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じゃじゃ馬姫の憂鬱

 サヤ=ライリーは、ルイーズ=ドラクール、

ルミア=ラキオン、ゆきなと共に、

じゃじゃ馬姫、ルーンの部屋にいた。

 サヤ以外は、わがままな彼女を

もてあまし、嫌な顔をしていた。

 サヤはカンのいい娘だ。

精一杯強がっているのが、彼女には

わかっていたのだった。

「なあ、ルーン何して遊ぶ?」

 ルーンは口を開きかけたが、結局

やめて口をつぐんでしまった。

一人で本を読み、彼女たちに背を向ける。

 ルーたちはさらに眉を吊り上げ、

サヤはあーあ、と思った。

 この姫は、人との付き合い方を知らないのだ。

親しい人など、ほとんどいないのだろう。

「書物庫に行ってくる」

 そんな時、ルーンはおもむろに立ち上がり、

部屋を出て行った。

 彼女がいなくなった途端。

「あの子、無愛想だよね」

 頬をふくらませたルーがそう言ったのを皮切りに、

それぞれが悪口を言い始めてしまった。

 あまりのことに、たまりかねていたのだ。

「呼んでおいて、あの態度はないわよね。

何さまのつもりなのかしら」

「王女サマでしょ。傲慢な」

 ルミア・ルー・ゆきながくすくすと意地悪そうに

笑いだし、サヤはため息をついた。

 王女のことを話そうとする前に、ドサッ、と

何かを落とす音が響いた。

 ギョッとなり、全員がおしゃべりをやめる。

 そこにいたのは、ルーンだった。

 顔を真っ赤にし、泣きそうな顔をしている。

「……っ!!」

 たえきれなくなったのか、目から涙を

こぼすと、彼女は走り去ってしまった。

「姫さん!!」

 サヤは書物を拾いながら追いかけようと

したが、ルーが力強い手でそれを掴んだ。

「放っておけばいいじゃない、あんな子」

 サヤは刺すような冷たい目でそれを睨む。

 驚いたように、ルーの手の力が緩んだ。

「本気で言ってんのか、ルー?」

「え?」

「本気で言ってんのか、つってんだよっ!!」

 サヤの拳に殴りつけられ、部屋の壁がへこんだ。

 いきなり怒鳴りつけられ、ルーの目は水っぽくなっている。

 サヤはそれを構わず、苛立った声で続けた。

「見損なった。嫌なら、とっとと帰れよ」

「サヤ!! 今のはひどいんじゃないの?」

 ゆきなが倒れ掛かったルーを抱きとめながら、

非難のこもった目を向けてきた。

「ああ? 人事じゃねえかよ、お前らにも

言ってんだぜ」

 すっかりキレたサヤは、容赦なく言葉を

投げつけていた。ルミアも困ったように

肩をすくめている。

「確かに、あの姫さんは態度が悪かった

かもしれねえよ。でもな、オレらの態度に

問題はなかったか!? ちょっと無視された

からって、あの態度はないんじゃねえか?」

 黙りこむ全員を放置し、サヤは部屋を

飛び出した。仲間はずれにされた経験が、

今のサヤを突き動かしている。

 少し容貌が違うからといって、

無視され、つぶてをぶつけられ、

中傷を投げられた自分。

 その時の記憶が、サヤの心に蘇った。

 この状況はその時とは違うが、

仲間はずれ、ということは同じだった。

「姫さん、返事しろよ!! 戻ってきてくれ!!

 嫌な予感がするんだよ!! 姫さん!!」

 サヤは大声を張り上げる。

自分のカンが外れたことがない。

 新しくできた友達を、なくしたくはなかった。

 向こうはそうは思っていないかもしれない。

だけれと、サヤにとってルーンは友達だった。

「あっ!!」

 あまり急ぎすぎたため、サヤは足をすべらせて

赤い石が敷き詰められた廊下に倒れ込んだ。

 手に血がにじむ。だが、痛みに顔をゆがめながらも、

サヤは立ち上がった。

 とーー

「きゃあああああっ!!」

 ルーンの悲鳴!! 続いて、何かの焼けるような匂いと、

耳をつんざくような爆音が響いてきた。

「姫さん!!」

「さやぁっ!!」

 虹色の美しい羽根がサヤの目をかすめる。

 慌てたように、ルーが空中を飛んでいた。

「ルー!!」

「あの悲鳴、お姫様の!?」

「そうだよ!! 何しに来た、ルー!!」

「お姫様を助ける!!」

 キッと上げた顔は、決意に満ちていた。

「あたし、間違ってた。仲間はずれに

何度もされてきたのに、お姫様の

ことなんにも考えてなかった……」

 ルーの心中を理解したサヤは、

頷いて笑顔になった。

 走りながら話を続ける。

「他のやつらは?」

「あの子たち、あんまり早く走れない

みたいだから、空飛べるあたしが

先に来たの」

「そっか、わかってくれたのか?」

「もちろん!! みんなわかってくれたよ!!」

 再びルーンの悲鳴が響く。

 今度は、さっきより近かった。

 二人はスピードを上げ、声が聞こえる場所に

急いだ。

「サヤ、あたしがお姫様を助ける!! いい?」

「ああ!! ……いや、オレが助ける!!

 魔術師ウィザードがいるかもしれないんだ。

ルーはそっちを頼む!!」

「了解!!」

 ようやくたどりついた。ルーンはあおざめて腰

を抜かしてしまっている。服が多少こげていたが、

怪我はまったくないようで、二人はホッとした。

 壁にはひびが入っているので、そちらに

攻撃はあたったのだろう。

「姫さんっ!! こっちだ!!」

 サヤは素早くルーンに近づくや、その手を

掴んで引き立たせた。力全部を使って

走り抜ける。本気を出したサヤに、

勝てるものはなかなかいなかった。

「待て!!」

「させないんだから!!」

 追いかけようとした一人に、ルーの力が直撃する。

 遅くなってたどり着いたルミアとゆきなも、

すべに攻撃を開始していた。

「力全部使い切る」

「二人は追わせないわ」

 氷像と石像がその場に現れ始める。

 残りは、ルーがかなしばりで縛ったり、

見えない力をぶつけて動きを制限している。

 だが、三人は気づいていなかった。

 黒き水が、ひっそりと廊下を移動しているのをーー。


次回もよろしくお願いします。

まだまだ王宮編は続きます。

サヤたちが大活躍です。

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