依頼人はじゃじゃ馬姫
じりじりと照りつける陽光を浴びて、
ストリートファイトが今日も行われていた。
戦っているのは、『ホラーギルド』の
リーダー、サヤ=ライリーと、ギルドマスターの
ルイア=ラクレンサだった。
「とっとと負けを認めなっ!!」
「まだまだ私は戦える!!」
サヤは器用にルイアの攻撃をよけつつ、
朝ごはんのローストビーフのサンドイッチを
頬ぼっていた。上機嫌だ。サヤは人狼なので、
肉類が大好物なのである。
「夕顔、シオン!! おかわりちょうだい!!」
「了解、リーダー!!」
今度はタマゴサンドが空を舞う。サヤは華麗(?)に
口でキャッチ。ついでにルイアの腹にキックを叩きこんだ。
ルイアが吹き飛び、サヤの着地が見事に決まる。
「うまいよ、やっぱり~!! もう一個ない?」
「どんどん作ってるわよ、サヤ!!」
「サヤのごはんは作りがいがあるよね」
調子に乗って空中を舞いながら、次々とサンドイッチ
を腹におさめていくサヤ。シオン=エレットも、夕顔も
笑顔でサンドイッチを投げていた。
と、その時。
「あなたたち、何をしていますの?」
冷やかな声が響き渡った。
ヤバイ……。
さあっ、とシオンとサヤが青ざめた。
ぎぎぎぎぎっ、ときしむような音を
立てて振り向く。案の定、巫女の少女、
吾妻夙が笑顔で立っていた。
目が笑っていない。明らかに怒っていた。
その背には黒いオーラが二人には見えた。
「あ、あの、ゴメンナサイ……」
「もうしません……」
彼らはげんこつをもらった挙句、
二時間にわたって正座でお説教をくらったのだった。
ちなみに、夕顔はいつの間にかいなかった。
ルイーズ=ドラクール、倉木ルカ、ルミア=ラキオン
は心配そうに見ていたけれど、決して助けてはくれなかった。
二時間後、『ホラーギルド』のメンバーたちは、
ギルドマスターから依頼書を受け取った。
あまりにも遅い出し方だったので、サヤが
「もっと早く出せよっ!!」とぶっとばした。
少し遅れてきたゆきなと、エリオット=アディソン
と共に、ギルドメンバーは依頼書を見た。
依頼人は、なんとお姫様だった。はねっかえり姫が、
遊び相手を欲しがっているのだという。
「はい、却下」
「サヤ!!」
即座に破棄しようとしたサヤの手を、
エリオットの平手が叩いた。ルカ以外の全員が冷たい目で彼女を
見ている。サヤは小さく呻いてうつむいた。
彼らが怒っている理由は、お姫様がかわいそうだから、では
決してない。依頼の料金がかなり高いからだった。
世の中金、という訳ではないが、あるにこしたことはない。
「わかったよお、やればいいんだろやれば」
すねたように頬を膨らませつつサヤは渋々了承した。
了承印を押して、ギルドマスターに直接手渡す。
彼はすぐに本部に帰って行った。
本当に仕事をしているのか、と疑いたくなるメンバーたちだった。
あれから、彼は何度もサヤに勝負を挑んでくるのであった。
一時間後、城には、サヤ・ゆきな・ルー・ルミアの姿があった。
すぐに準備をして城に乗り込んだのだ。
やってきた魔物たちに、門番はギョッとなって武器を突き付けて
来たが、王女に頼まれたことを告げるとすぐに通してくれた。
その後もたびたび見とがめられたけれど、王女の名前を
出してそれを乗り越え、ようやく姫様の部屋にたどりついた。
そしてーー
「遅いっ!!」
いきなり怒鳴り声が飛んできた。この部屋の主のものだ。
「遅い遅い遅い遅い遅いっ!!」
色白の顔を真っ赤に染めた姫様は、地団駄を
踏みながら遅いを連呼し始めた。
ムッとなり、サヤが何事か言いかける。
が、その口はルミアに素早くふさがれてしまった。
「すみませんね、お姫様。遅くなりました」
「ルーンだ。呼び捨てで呼べ。敬語も使うな」
「あの、でも……」
「敬語を使うなっ!!」
だんだんだんと再び地団駄が始まる。ルミアはこの子
石にしてもいいかな、と本気で思ったというーー
続きものです。
次回は全員のバトル
シーンを書こうと
思うので、次回も
見てください。