清らかなる少女の居場所
今日もホラーギルドのメンバーは
守護姫の捜索を始めていた。
彼らには諦めるという意思が全く
ないようである。
倉木ルカは震えそうになる幼き
リーダー・サヤ=ライリーの手を
しっかりと握りながら歩いていた。
もう全員は集合しており、話合い
ながら歩いている。
もちろん科学者ギルドに気付かれない
ように小声でだが。
「行けない、って言ったのか守護姫が」
「ええ、私たちを出口まで誘導して帰そうと
したわ。何故そこまでするのかしら」
吾妻夙が眉をひそめながら言う。
サヤも意味は分からないらしく首をかしげていた。
ロッカ=ロッタが口を開く。
「巻き込みたくないんじゃないんでしょうか」
「巻き込みたくない?」
「だってサヤ達は守護姫とは何の関係もない
人達でしょう? 優しい子なら巻き込みたく
ないと思うのが普通じゃないでしょうか」
「そっか……」
サヤが舌打ちした。まあまあと夙がなだめる。
と、サヤはルイア=ラクレンサに目を移した。
「ルイア、警備が厳しそうな場所とかなかったか!?
あったら教えて欲しい」
「警備が厳しそうな場所……?」
「そうか、あいつらは守護姫を逃がしたくない! 彼女の部屋の
警備は厳しくなっているはずだ!!」
ゆきながサヤにかぶせるように叫ぶ。ルイアはしばらく考えていたが、
やがて思い出した事を口に出し始めた。
「……あったぜ。出口の前には誰もいなかったが、研究室の隣に小部屋が
あるだろう?」
研究室、と聞いて夕顔の表情が強張った。いや、夕顔だけではない。
サヤ、ゆきな、シオン=エレット、ルイーズ=ドラクール、夙、ルミア=
ラキオン、エリオット=アディソン。
この場にいるルイアとロッカ以外の全員が怯えていた。
研究室は奴らの巣窟だ。今まで自分たちを苦しめてきた
奴らがいる場所だ。怯えても当然だろう。
倉木ルカだけは怯えてはいなかったが、妹が同じような目に
遭ったという怒りで唇を震わせていた。
「……本当に、そこなの?」
ルーが震える声で答える。シオンはうつむいていたが、怖いと
思っているのは誰もが分かっていた。
「間違いない。奴ら交代で、守護姫とかいう女の部屋の前に立って
たしな」
ルイアが断言する。それを聞いた全員はしばらく黙っていた。
誰もが口を開かない。と、数分してようやくサヤが口を開いた。
「分かった、行く」
「そうこなくちゃな」
「ま、待ってよ! サヤ分かってるの!? 研究室のそばに行く
って事は、奴らに捕まるかもしれないって事よ!?」
夕顔の声は今にも泣きそうだった。サヤは一瞬ためらった後に
力強く頷いた。
「分かってるさ、危険なのは。だからお前たちは着いてこなくても
いい。俺だけで行くから」
「やだ!! サヤだけ置いてけないッ!!」
「ばっかじゃないの? サヤ一人だけで何が出来るってのさ。
捕まるのがおちだよ」
「私たち、仲間でしょ。協力し合わないと」
「正直俺だって怖い。だけど、一応女のサヤだけに危ない橋を
渡らせる訳にはいかないな」
「私も行こう。いつまでも奴らにいいなりになっているのも
つまらなかったからな」
「私たちは奴らの実験動物でもいいなりになる駒でもない。
その事を思い知らせてやらなくちゃね」
「妹の仇、そして皆さんの恨みも晴らさせていただきたいと思います」
「私はもう、誰も見殺しにしたくないわ」
「もちろん私たちも協力しますよ」
「愛する君のためならいつでも力を貸そう」
一人でも行こうとするサヤに、ギルドの全員とロッカ達が立ち上がった。
泣きそうな顔になりながらルーが喚き、そっぽ向きながらシオンが言い、
夙がにっこりと笑い、エリオットが自分を鼓舞するように拳を握り、ゆきな
がぎらりと目を光らせ、ルミアがキッと前を睨みつけ、ルカも凛々しさを感じ
させる声で呟き、夕顔は今まで何度も見殺しにしてきた事を悔やむように唇を
噛みながらも決意した。
ロッカとルイアもこのまま一緒に行動してくれるようだ。
「野郎ども、行くぜ!!」
『おお――っ!!』
サヤの大声に、全員がかぶせるように張り切ったような声を上げた――。
ついに守護姫の居場所が
分かりました。合流したサヤ
達は、守護姫を救うため、そして
もう二度と科学者ギルドが悪事を
働くことのないように戦う決意を
固めます。
後二話でホラー・ギルドは
完結します。見てくださった
方、本当にありがとうござい
ました