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ホラーギルドへようこそ!!  作者: ルナ
科学者ギルドを潰せ
25/28

清らかなる少女の想い

 サヤ=ライリーは倉木ルカと共にまだ

出口の捜索をしていた。だが、どこを

探しても見つかりそうにない。

 他の仲間たちにも連絡を取っては見たが、

結果ははかばかしくないとのことだった。

 サヤは支給されているカチコチのパンに

かじりつきながら獣のような唸り声を上げていた。

 彼女と同じようにパンを食べようとしたルカが、

あまりの硬さに驚いてそれを投げだす。

 鈍い音がその場に響いた。

「よくそんなパン食べれますね」

「オレの牙はそんなにやわじゃないんだよ!!」

 サヤは見せびらかすように牙をむき出しにした。

人狼ルー・ガルーと人間のハーフである彼女

の歯、否牙はとても鋭いのである。

 こんなに硬いものを噛み切れるのだから、もし

本気でがぶりと噛まれたら人間はひとたまりもないだろう。

 ルカが少し怯えたのを見て取り、瞬時にサヤの頬は風船の

ようにぷ~っと膨らんだ。

「なんだよ!! ルカ、オレに怯えてんの!?」

「いや怯えてるってわけじゃ、噛まれたら痛そうだな~って……」

「怯えてんじゃん!!」

 真っ赤になって怒るサヤにルカは思わずじりじり後ろに下がった。

と、悲鳴のような声が響き渡ったのでサヤはびくんと反応してうずくまる。

「……ぅ。うあううううううぅ……!!」

「リーダー!! サヤ!! どうしたんですか!?」

 ルカがそっとサヤに触れると、彼女の体が小刻みに震えていることが分かった。

きっとかつてここで過ごしたことを思い出しているのだろう。

「はじ、まった……ルーとシオン、が……」

 ルカはサヤの言葉を聞いてハッとなった。

あの声はルイーズ=ドラクールとシオン=エレットの声なのである。

 始まった、とは実験のことなのだろうか。

この『科学者ギルド』では毎日のように実験が繰り返される、というのは

妹からよく聞いていた。

「……っく。嫌だよう、もう嫌だよう……!!」

「落ち着いてサヤ!! 大丈夫だから」

 ルカがなぐさめてもうずくまったままのサヤはただ震えるばかりだった――。


 ルイーズことルーとシオンは、ベッドに手足を固定され今まさに『実験体』として

無理やりに実験を受けさせられていた。バチバチと光を放つ雷の力の宿った棒を剥き

出しの手足に当てられ、耐えがたい痛みにずっと耐えていなくてはならない。

「ううぅ、いやああああああああああああっ!!」

「ぐうううううううううううううううううっ!!」

 実験部屋にいるのはルーとシオンの他に、感情をなくしたガラス玉のような瞳を

した少女とニタニタ笑いを浮かべた怪しげな男の二名がいた。

 少女はちらともルー達に視線を向けない。

ただうつむきながら手にした棒に力を与え続けるだけだ。

 少女は以前渚達とサヤ達が出会った『守護姫』だった。

銀とも白ともつかない髪を長く垂らしていてその顔は見えないが、ルーとシオンには

少女を気遣う余裕はなかった。守護姫はきつい目つきで男を見つめる。

「これでいいでしょう? 私は出て行かせてもらいます」

「どうぞ守護姫様」

 守護姫は鼻を鳴らすと、ふわりふわりと宙に浮きながらルーとシオンの近くに漂ってきた。

一瞬痛みを忘れた二人の前に一枚の紙をこっそり落とすと、彼女は音もなく部屋から消えていた。

 シオンは落とされた紙をとっさにポケットに押し込んだ。

実験が終わったのはもう少したってからだった。

 部屋から出ることを許され、拘束を解かれた二人はすぐさま紙を開いた。

「こ、これって……!!」

「地図!?」

 それはこの『科学者ギルド』の地図であった。

出口の場所さえも記載してあり、実験室や被験者たちの部屋まで全て

書かれている完全品だ。どうしてそんなものをあの少女が持っているのか

という疑問はあったが、ルーとシオンは走ってその場所に向かった。

 ……鍵はかかっていなかった。『科学者ギルド』の連中は絶対に

見つからないと言う自負があったのだろう。扉は鏡の形をしていて、

ルーとシオンも地図に書かれていなければ見逃していたハズだった。

 いや、実際に見逃していたのだ。ただの鏡だとしか思っていなかった。

二人はどちらからともなく頷きあうと、そっと扉を押しあけた。

 正常な空気が二人を包み込む。久しぶりの外にルー達は思わず感動した。

「サヤ達にも知らせなくちゃ!!」

「ちょっと待って。これまだ何か書いてある」

 はしゃいだ声をあげるルーを制し、シオンは地図の下に書かれている

文章を見つめた。そこには血で書かれたらしい文字が踊っている。

 『我、アニタ達、友。依頼を受けたギルドの、者達、今すぐ、帰れ。

我、今訳あり身動きできぬ身。アニタ達と、共に、帰れ 守護姫』

 書かれていた文面はそれで以上である。自らの血を使ったからか

文章は途切れ途切れだったけれどなんとかルー達は読み事が出来た。

 二人は顔を見合わせると、地図をくれた少女の姿を想い浮かべ

心配そうな顔になるのだった――。

 すみませんまた時間があいてしまいました。

予定ではシオンの過去編だったのですが、どう

しても浮かばずに予定を変えて本編を進めました。

 ついに『ホラーギルド』が出口を発見します。

その時アニタ達は!? あの少女はどうなってしまうのか!?

 次回もよろしくお願いします。

次回からは順繰りに行くのでそこまで遅くならないと思います。

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