出口を探し出せ!!
サヤ=ライリーと倉木ルカが出口を
探している、その頃。
ルイーズ=ドラクールと、シオン=エレットは
とりあえず部屋で休息を取っていた。
ルーはベッドに寝ころび、シオンは内容が
分かっているのかと思わせる速さで本の
ページをめくっている。
「ねえ」
ルーが小さな声で聞くと、びくりとシオンの
体が跳ね上がった。文字通り、本当に
飛び上がったのでルーはきょとんとなった。
「何だよ?」
睨みつけられ、ルーは不満そうに頬を膨らませていた。
声をかけただけなのに、何故睨まれなくてはならないのか、と。
シオンはそんなルーを無視するように本を閉じた。
「そろそろ、行くか」
「まだ出かけるの?」
「当たり前だろ、リーダー達も活動してるはずだ。
僕達だけ活動しないわけにはいかないぞ」
「う……ん……」
ルーはシオンが怪我をしたことを思い出して
乗り気ではなかったが、仕方がないので部屋の外に
でることにした。ここにいると、本当に落ち着かない。
恐怖と不安な気持ちがよみがえるから。
シオンには分からないのだろうか、ここで暮らした
ことがあったに違いないのに。
それとも、分かっていて無理をしているのだろうか。
あえてルーは聞かずに歩き出した。
そろそろ、空が明るんでくる頃なので、
問題はなくなるころだろう。
ルーがため息交じりに呟いた言葉は、
シオンには聞こえなかったようだったーー。
一方、サヤとルカもまた出口を探して奔走していた。
その手はしっかりと握られたままだ。
「見つかんねえなあ」
「次、あっちを見てみましょうか、リーダー」
「ん、分かった、あっちな!!」
空が明るくなりかけていた。
かなり長い間探しているのにもかかわらず、
一向に出口が見つかる気配はない。
サヤは舌打ちしながら牙をかみしめた。
「あいつら、一体どこに出口を隠してやがるんだ」
すぐに分かる場所にはないことは分かっていた。
そうならば、すでに多くの者たちがここから
逃げ帰っていることだろう。
ほとんどの者たちが帰ることなく死んでいく、
それがこのギルドだ。サヤ達は逃げ切れた分
幸せなのだと思わせるほどに。
実際、ルカの妹は逃げだせたものの
自殺をはかってこの世にはすでにいなかった。
無事に逃げきれたとしても、サヤ達のように
トラウマや心の傷を抱えたものたちはかなりいる。
「ああ、朝になる……」
ルカに言われ、サヤは再び舌打ちしながら
窓の外を見つめた。美しい朝日が顔を出していた。
きれいな光景だけれど、今のサヤには楽しめる
ものではない。
「俺達、いつここから出れるんだろう」
サヤの心に不安の色が混ざりはじめた。
一生、出られないのではないか、と。
震え始めたサヤの両腕をルカが取った。
「大丈夫ですよ、リーダー!!
絶対に出口は見つかります!!」
「だと、いいけど……」
「諦めたらそこで終わりです!!」
ルカになぐさめられ、サヤは少し元気を取り戻して
歩き出した。と、前方に何か、いや誰かがやってくる。
それは、音もなく二人に接近してきた。
「アニタ達に、伝えて、私は大丈夫だからって」
「あんた、まさかあいつらが言ってた友人か!?
ちょっと来てくれよ、あいつらもあんたに
会いたいって……」
「私は、いかない」
サヤが伸ばした手は空を切った。少女に触れることが
敵わず、サヤは何度か手を伸ばしたが一度もその手に
感触が現れることはなかった。
「アニタ達に、帰ってって言って、私は、大丈夫だからって」
「お、おい、待てよ!! あんた一体なんなんだ!?」
サヤの言葉を聞くこともなく、彼女はフッと姿を
消してそれから戻ってくることはなかったーー。
清らかな少女、再び登場です。
彼女の正体は誰なのか!?
次回はシオンの過去話を
書きたいと思います。