表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ホラーギルドへようこそ!!  作者: ルナ
科学者ギルドを潰せ
22/28

科学者ギルドの潜入者たち その二

 吾妻夙あずまなぎさは不安な面持ちで

堅いベッドに腰かけていた。

 今、彼女は留守番である。

他の三人は今出ていて、帰ってはこない。

 一人は嫌いだ。あの時の恐怖を思い出すから。

彼女たちはそこそこ強いし、そんなことには

ならないかと思うが、不安はぬぐえなかった。

 ここは、なんといっても『科学者ギルド』だ。

普通の神経の者など、いない。

 知識欲に狂った者か、人を殺したい殺戮狂か、

人を傷つけたいいかれた趣味のものたちだけだ。

 夙はかたく拳を握りしめると、二人の無事を

祈って黙って目を閉じていた。


 その頃、ルミアと夕顔は途中で参加した

ゆきなと共に歩いていた。

 全員男装しつつ歩いている。

ルミアはキレた時の対策に、度の入っていない

縁なし眼鏡をつけていた。

 バレたら大変だからである。

「まったく、なんで誰もあたしに気がつかなかったのよ」

 ゆきなは拗ねたような顔をしながら歩いていた。

彼女は家の都合でかなりの間休んでいたのだが、

ギルドメンバーはそんな彼女の存在を忘れていたらしく、

彼女がギルドに来た時、子供二人とルーンとエリオット

しかいなかったのだった。

 事情を聞き、すぐに飛んできて今にいたる。

「仕方ないでしょう? あなただって、

しばらく来られないということしか言わず、

今まで連絡さえしなかったんだから」

「それは、悪かったわよ」

 夕顔が言い返し、うっと詰まったゆきなは

素直に謝罪の言葉を口にした。

 と、ルミアがしっ、と口に指をあてていた。

「何か聞こえない?」

「えっ!? ……そういえば、聞こえる!」

「隠れるわよ!!」

 三人はひっそりと身を隠した。

夜に出歩くことは危険だと、ここですごした

時間が多い彼女たちは知っている。

 ルミアは力を利用され、ゆきなはここで隔離されて

一族の力を知るための拷問を受けさせられ、

夕顔は被害者の世話係をさせられていたのだった。

 ゆきなは秘密を割ることはなかったけれど、

いまだに心の傷は消えず、体にも消えない傷があった。

 夕顔は一見何の被害にもあっていないようにも

見えるが、死んだような目をした者たちを何度も

見せられ、力不足で見殺しにしてきたのだった。

 だから彼女は逃げ出し、ギルドに入ったのだ。

「やっぱりやめた方がよかったんじゃ……?」

「今更言ったってしょうがない!!

とにかく、すぐにあいつらを探さなくては!!」

 三人の顔が安堵の色になった。

聞き知った声は、エリオットとルーンのものだった。

 何故ここにいるのかは気になるが、とりあえずは

安心してもいいだろう。

 一番先にゆきながそこを抜け出すと、

二人の元へと急いだ。

 二人は一瞬ぎょっとなったものの、

相手がゆきなたちであることに気付き、ホッ

と胸をなでおろした。

 ルーンは被害者ではないが、

エリオットにここのことをいろいろ聞いたのだろう。

「何であんたたちがここにいるの?」

 ルミアがつっけんどんな口調で聞いた。

二人は、予定では居残り組みとなっていたのに、

何で来たのかと幾分きつい聞き方だった。

 ルーンは鼻じろんで黙ったが、エリオットは

困ったような顔をしながら告白した。

「実は、あの二人が脱走したんだ。

どうしても、友人とやらが気になってしょうがなかった

らしくて、俺たちの食事に眠り薬まで仕込んだんだ」

「ね、眠り薬……!?」

 夕顔がぎょっとして叫んだ。

あの子供たちがそこまでするとは思えなかったのだろう。

「それで、仕方なく俺たちも潜入することになったんだよ」

「夙はどこにいるの!?」

「部屋にいるわよ。留守番として残しーー」

「一人で残したのか、夙様を!!」

 エリオットが絶叫するかのような声を上げたので、

三人は耳を両手で押さえなくてはならなくなった。

 それから、おろおろとなだめにかかる。

「ちょっと、エリオット!! 見つかったらどうするのよ」

「夙のことは心配いらないわ。むしろ、外にいる私たちが

危険なのよ。あまり大きな声を出さないで」

 そして、ルミアが続けて言った言葉に、

彼の眉がひそめられた。

「エリオット、あんた、夙に過保護すぎるよ。

彼女はあんたが思ってるより弱くはないし、

赤ん坊でも子供でもないんだから」

「夙様は俺の主だ。守らなきゃいけないんだ!!」

「もう、やめなさいよ!! とりあえず、一度部屋に戻るわ!!」

 いなくなったという子供たちも心配だったが、ここに

ぞろぞろといても見つかるだけだ。

 全員は部屋に戻ることになったが、

彼らを出迎えた夙は驚いたような顔をするばかりだった。

「エリオット、ルーン!?」

「夙!! 子供たちを見なかったか!?」

「夙様、ご無事でよかった!!」

 二人の声がかぶってしまったため、夙はいさめるように

言うと別々に話させ、ようやく要領を得た。

 それから、ため息交じりに彼を見つめる。

「前々から言おうと思っていたけど、私のこと、もう様

づけで呼ぶのやめてくれないかしら、エリオット」

「何故……ですか?」

「私はもう巫女じゃないの!!

 うんざりなのよ、夙様夙様って!!

思い出させないで!! 私はあの時のことは忘れたいのよ!!」

 彼女の声は叩きつけるかのような響きを帯びていた。

エリオットは何を言っていいかわからなくて黙る。

 夙は言いたいことを言うと、くるりとそのままきびすを

返して部屋を飛び出した。

 エリオットが追おうとするが、その前にルーンが

部屋を出て彼女を追いかけていたーー。



夙を一人部屋に残し、

いろいろなことを調べるルミアたち。

そこに、エリオットたちも参入した。

彼の登場に、ついに夙が貯めていた

感情を爆発させる。

彼女はどうなるのか!?

次回、清らかなる少女との出会いを

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ