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ホラーギルドへようこそ!!  作者: ルナ
科学者ギルドを潰せ
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科学者ギルドの潜入者たち

 サヤ=ライリーは恐怖を必死でおさえながら

歩いていた。片手は倉木ルカが握ってくれているけれど、

死にたいと思うほどの実験を繰り返されたサヤに

とっては、ここはひどく苦痛な場所だった。

「サヤ。大丈夫?」

「大丈夫……」

 ルカに聞かれ、サヤはカラ元気で笑って見せた。

彼はそれ以上聞かず、黙って歩き出した。

 サヤはその動きに合わせるように彼に続く。

不安な気持ちはあとからあとから湧いてきて、

サヤは平静ではいられなかった。

 ルカは何も言わずに彼女の手を握っている。

そのことが、サヤはかなりありがたかった。

 

 一方、ルイーズ=ドラクールと、

シオン=エレットも活動を開始していた。

 手をつなぎつつあたりを見回しながら歩いている。

誰かに見つからないようにと、かなりの神経を使っていた。

 見つかったらどんな目に遭わされるか分からない。

今は夜中である。外出禁止と言う訳ではないが、

闇に乗じて指示なしに勝手に動く連中がいるというのを、

二人はサヤに聞いて知っていた。

「ルー、怖くない?」

「シオン……が、いるから、大丈夫……」

 そう言いながらも、ルーの顔はひどく真っ青だった。

必死で恐怖を抑え込んでいるのだろう。

 開いた片手できゅっと彼の服の袖を掴んでいた。

シオンもそうだが、ルーもここの被害者だ。

 怖くて当然だろう。

と、握っていたライトの明かりが、チカチカと

点滅し始めた。シオンは舌打ちし、それをその場に

放置しようとする。

 とーー。

「貴様ら、そこで何をやっている!!」

「「っ!!」」

 何者かに見つかってしまった。

眩しいライトが二人を照らし出す。

 ルーは泣きそうになったが、

シオンはなんとか冷静な顔で彼に話しかけた。

「私たち、迷ってしまったんです。

部屋が分からなくなってしまって……」

 ただいま女装中であるため、

なるべくかわいらしく見えるように

目を潤ませてみる。

 しかし、男の表情は不気味な笑みの

ままであった。簡単に色仕掛け(?)に

引っかかるような人物ではないらしい。

「本当だろうな?」

「ほ、本当、です」

 今度はルーが口を開いた。

その体が震えているのを見て、男は

口元をゆがませて持っていた鞭を振りまわす。

「じゃあ、何で震えてるんだ?

 本当ならそんな必要ないだろう?」

「この子、気が弱いんです。

いきなりあなたがやってきたから、

怯えて……ひゃっ!!」

 鞭で手を叩かれ、シオンは慌てて身を引いた。

ルーの目がさらに潤み、体の震えが激しくなる。

「な、何をするんですか!!」

「嘘ついてるんじゃねえよ。何を探っている?」

 二人の顔が青ざめた。まさか、潜入捜査がバレた!?

すわ任務失敗か、と慌てる二人に、

男はきつい口調で言い放った。

「出口を探してるんだろう? 逃げようったってそうは

いかねえぞ!!」

(よかった……バレてないみたい……)

(バレてはないけど、このままじゃやばいな)

 ルーはすっかり安堵しきっていたが、シオンは

このままでは痛い目にあわされるのではないかと

心配していた。きっと、その心配は当たっているのだろう。

 冷汗が彼の背を伝った時、助けの手は伸ばされた。

「おい、そこのお前、何をやっている!!」

 最初、二人はそれが救出の手であると分からなかった。

やってきたのは、いかにも上役といった様子の、細身の男である。

 ここにいる男よりも上の位らしく、男はびくりと身をすくませていた。

横にいる、べったりと彼によりそっている女も冷たい目で睨みつけていた。

「こ、こいつらが逃げようとしていたんで、ちょいと痛めつけて

やろうとおもっただけでさ」

「その必要はない。逃げたくても、ここからは逃げられないからな。

さっさと部屋に戻れ。さもないと、このガキどもの代わりに、

お前を痛めつけるぞ」

 男は怒りで顔を真っ赤に染めたが、やがてくるりと身をひるがえすと

その場から立ち去った。ルーたちは驚きのあまり立ち尽くすばかりだ。

「ルー、シオン、大丈夫か?」

「っ!? 何で名前を!?」

 いきなり名前を呼ばれ、シオンがぎょっとなる。

しかし、男はにやりと笑うとネタバラしした。

「俺だ、ルイア=ラクレンサ、だよ」

「ロッカ=ロッタです」

「俺たちも潜入してたんだよ。お前らばかりに

危ない橋渡らせる訳にはいかないからな」

「……いかにも重厚な造りですよね。

一度入ってしまえば、出ることさえ難しくなる」

 ロッカは唇をかみながらも、紅く腫れた

シオンの手を魔術で治療してくれた。

 シオンは痛みがひいて息をつく。

「私たちは出口を探します。

ですが、あなたたちはもう部屋に戻った方が

いいですよ。また掴まりますから」

 二人はこくりと頷くと、手をつなぎ合いながら

部屋に戻って行ったーー。


サヤたちの任務が始まります。

もうすぐ完結ですが、

まだまだ続くので

最後までお楽しみください。

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