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ホラーギルドへようこそ!!  作者: ルナ
新メンバー加入
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ギルドメンバーの絆

 依頼人は、倉木ルカと名乗った。

巫女の母親と、妖怪・天邪鬼あまのじゃく

の間に生まれた、半妖ハーフらしい。

ギルドのリーダー、サヤ=ライリーと同じだ。

「あんた、何の用なんだ?」

 サヤはじいっと紅い目で彼を見ながら言った。

 場所はさっきの場所ではなく、客間だ。

品のいい家具や調度が置かれている。

 今ここにいるのは、一番の年長者、エリオット=アディソンと、

サヤの親友・ルイーズ=ドラクール(愛称・ルー)だった。

 困ったような笑みを浮かべているルカに、サヤは苛立ちを感じた。

「早く言えよな。こっちだってヒマじゃないんだよ」

「今日は仕事ないだろ」

 エリオットが言い、紅くなってサヤが睨んだ。

「う、うるせえよ!!」

「はいはい、リーダー。オレは黙ってます」

「うううううっ!! その口調がムカツク!!」

「あの、えっと、その……」

 サヤに威圧され、ルカはオロオロとしていた。

「早くしろってば!!」

 サヤが牙をむいて唸る。さらにルカは怯えた。

さっきからこの繰り返しなのである。

「サヤ!! 依頼人をおどかしちゃ駄目だよ」

 たまりかねてルーが口を開いた。チッと舌打ちが響き、

エリオットがじろりとサヤを睨む。

「あの、科学者ギルドって知ってますか?」

 三人はギョッとなった。特に、サヤの反応がすごかった。

顔が蒼白になっている。体が小さく震えていた。

だらだらと脂汗らしきものの流れていた。

「あの……大丈夫ですか?」

ルカが近づき、手をさしのべようとする。

「や……やああああああっ!!

来るなッ!! 来るなああああああっ!!」

 咆哮のような悲鳴が響きわたった。

ルカはビクッ、となり、手を引っ込める。

何かに怯えた少女は、ルカの方を見てはいなかった。

紅き眼は空中をさまよっていた。

やがて、フッと支えを失った人形のように、彼女は倒れた。

ぐったりと倒れて動かない。まるで死んだように。

 ルーがサヤを抱き上げた。

「私、サヤを寝かせてくる。ゆうちゃんと、なぎちゃんに

変わってもらってもいいかな?」

「いいよ、その方がいいだろう」

 ルーはルカに頭を下げ、そのまま出て行った。




 すぐに、夕顔と、吾妻夙あずまなぎさがやってきた。

「あなたが依頼人なのね。吾妻夙です、よろしく」

「あ、はい。よろしくお願いします」

サヤが先ほど座っていたところに座るなり、夙は悲しそうな

顔でルカに語った。

「ルーに聞いたんだけど、あなた、科学者ギルドと何か

関係があるそうね」

「あいつらは、僕の妹を殺したんですッ!! 表向きは

自殺ってことになってるけど、そんな訳ないっ!!

 あの子は恋人だっていたし、幸せだったんだ!!」

 ルカはさっきまでの気弱さが嘘のように、怒りにまかせて

叫ぶように言った。ぼろぼろと涙がこぼれおちる。

痛々しい怒りの表情が、二人の同情を誘った。

「あなたも、被害者なのね」

「あなたも?」

「私たちも全員が被害者なのよ。特にひどいことを

されたのが、ルーとサヤ」

 そこまで言ったところで、夕顔がお茶菓子とお茶を

差し出した。ヨウカンと玉露だった。

場の空気が少しなごみ、夙は感謝するように彼女に

一礼した。夕顔はにこにこして出ていく。

「毎日ひどい実験を受けさせられていたの。もう少しで

殺されるところだったらしいのよ。だから、あのギルドの

話は、ここでは禁句なの」

「わ、わかりました」

 ルカは二人に、ここで働かせてくれるように頼んだ。

彼は身寄りがないそうなので、条件は満たしている。

二人は二つ返事で了承した。



 翌日のことだった。目覚めたギルドリーダー、サヤは、

勝手な判断でルカをメンバーに入れたことに激怒した。

「どういうことだよっ!! リーダーはオレだぞ!!」

「客の前で倒れたのはお前だろ、サヤ。ルカは被害者で

家族がいない。条件は満たしてるし、何の問題もない」

「そういうことじゃねえよ!!」

 サヤは白い頬を真っ赤に染めて怒っていた。

「俺に無断で入れたことを怒ってんだよ!! 一言

なにか言ってからにすべきだろ!!」

「そんなことで怒ってんのかよ、ガキだな」

「誰がガキだ、このやろおっ!!」

 サヤがこぶしを振り上げた。エリオットによけられ、

バランスを崩して倒れこむ。

と、ぐいっと彼が黒い獣の耳を引っ張った。

それはサヤの弱点だ。彼女は涙目になった。

尻尾がくるんと丸まった。

「い、痛い痛いっ!! エリオット!!」

「わがままもたいがいにしとけよ、サヤ?

 さもないと、おしおきだぞ」

ひっとサヤが息を飲む。本気で怒った彼に

勝てるのは、夙いがいにはいないのだった。

「わ、わかった。わかったって!! だから

それだけはーー!!」

 勢いよく耳を離された彼女は、泣きながら自室に戻った。

その後は依頼もなく、騒動が起きたのは翌日だった。



 基本、ギルドは、ギルド連合をおさめる長・ギルドマスターの

依頼で賄われている。仕事をかなり休む・もしくは失敗すると、

除名もありえるのだった。

 『ホラー・ギルド』のリーダー・サヤは、ギルドマスター

に呼び出しをくらっていた。

「何の御用でしょうか、ギルドマスター、ルウェン=サイラス

様。『ホラー・ギルド』のリーダー・サヤでございます」

 にっこりとサヤはかわいらしく笑った。ルウェンと呼ばれた、

かなり年老いた老人が赤くなる。

(けっ!! ロリコンヤロウが!!)

 さすがにギルドマスターに逆らうわけにはいかず、サヤは笑顔を

通していた。その身分じゃなかったら、確実にボッコボッコに

されていると思われた。

「サヤ殿。あなたには依頼を受けていただきたい。それと、

ギルドに対して苦情が来ていますよ」

「まあ。苦情ですって?」

(うるせえんだよ、くそじじい。死ねや、ボケエッ)

 心中と実際のセリフには、かなりの違いがあった。

 そもそも、サヤはルウェンが大嫌いである。

男と女では全然態度が違うからだ。そして、女性と

少女でも違う。サヤは何度かこいつにナンパまがいの

ことを言われてきたのだった。

「苦情の権はこちらで処理をしておきました。依頼を

受けていただけますね?」

(ああん? 受けなきゃいけないんだろうが!! 

強制ならわざわざ聞くなや!!)

「了解しましたわ、ルウェン殿。では、急ぎますので」

 サヤは依頼書をひっつかみ、すぐにきびすを返した。

ぐいっと腕を引かれる。さすがに、避難を込めて睨んだ。

どうせ、こいつはこのくらいでは怒ったりしない。

「何ですか?」

「今日、家に来ないかね」

「仕事の確認がありますので」

「少しくらいいいだろう。かたい事を言うな」

 ざらついた手がサヤの黒い耳を撫でた。

ぞくっ、とサヤの肌が粟立つ。

(おい、じじい!! 調子のんじゃねえぞ、地獄落ちるか!?)

 どんっとサヤがルウェンを突き飛ばした。

紅い目に涙がにじむ。そのまま彼女は身をひるがえした。

今度は足を掴まれ、すっ転ぶ。

「サヤ!! 私に逆らうな」

「は、離せよ、くそじじいっ!!」

「リーダー!!」

 蒼白になる彼女の前に、ルカがやってきた。

「る、ルカ!?」

「汚い手で、リーダーに触るなッ!!」

 ばきいっと鈍い音がした。ルカが殴りつけたのだ。

あまり力のない彼は、痛そうにこぶしをおさえていた。

「サヤ、大丈夫!?」

 ルーがサヤを抱きしめた。サヤは泣きながらルーに

身をゆだねる。実は彼女も被害者だった。

「下衆……」

 おなじく被害者の一人、雪ん子のゆきなが吐き捨てる。

目が怒りできらめいていた。シオン=エレットは無言で睨んでいた。

「家の子をいじめた罪、重いわよ」

 夙がにこにこしながら言う。

「覚悟してもらおうか? 俺たちの絆、なめんなよ」

「死んでも、文句は言わないでくださいね」

 エリオットと夕顔も怒っている。ルウェンの悲鳴が

高らかに響きわたった。



 これまた翌日、ギルド会報には、ルウェン=サイラス、

セクハラで解雇と書いてあった。もちろん、『ホラー・

ギルド』の名は書いていない。匿名で彼らは通報したのだ。

「あ、あの、さ。ルカ、ありがと・・・・・・」

「いいんですよ、リーダー」

「サヤでいい。敬語使うな」

 めずらしいじゃん、初対面のやつに懐くなんて。

そうエリオットにからかわれ、サヤはかっと赤くなった。

 後日、ルカは、これがすべてヤラセだったと知らされ、

打ちのめされるのだった。

この前の依頼人の子が仲間になりました。まだ依頼を一回もしてい

ないので、次回は依頼をこなす様子を書こうと思います。

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